
約半世紀にわたり、埼玉県狭山・入間エリアを中心に住まいづくりを支え続けてきた狭山不動産株式会社。創業期から同社に携わり、グループを牽引してきたのが代表取締役の伊藤宣明氏だ。証券会社の営業マンから不動産業界へと転身し、地道な信頼構築によって事業領域を拡大。現在では住宅の設計・施工からリフォーム、さらには介護施設の運営まで、顧客の一生涯に寄り添うワンストップ体制を築き上げている。地元で圧倒的な支持を集める同社の歩みと、非住宅領域まで見据えた今後の展望についてうかがった。
証券マンからの転身 地主の厚意が切り開いた成長への道
ーー不動産業界に関わるようになった経緯を教えてください。
伊藤宣明:
大学卒業後は野村證券株式会社に入社し、営業として働いていました。しかし、折しもオイルショックの時期と重なり、懸命に営業活動を行ってもお客様に損をさせてしまうことが増え、「このままで良いのか」と悩むようになったのです。ちょうど関西へ異動になるタイミングだったこともあり、退職を決意しました。退職後は、実家のある栃木県で会計事務所を開くために公認会計士の勉強を始め、その傍らで勤めていたアルバイト先の先生から紹介を受け、狭山不動産の前身となる会社を手伝い始めたのが最初のきっかけです。
ーーそこからどのように事業を拡大していったのでしょうか。
伊藤宣明:
業務を手伝う中で不動産の仕事に面白みを感じ、結果として本格的に専念するようになりました。当初は当時の社長と私の2人だけで、お金のかからない仲介業務からスタートし、地道に事業を展開していきました。大きな転機となったのは、銀行からの資金借り入れができるようになったことです。当時はまだ小さな不動産会社が融資を受けるのは難しい時代でしたが、日頃からお付き合いのあった地主のお客様が「うちのアパートを担保として提供してもいいよ」とご厚意でおっしゃってくださったのです。それまでの私たちの誠実な仕事を評価していただいた結果であり、その資金を得たことで、自分たちで不動産を取得して販売する分譲住宅事業への足がかりをつかむことができました。
「お客様のために」が導いた完全自社施工とワンストップ体制

ーー事業規模を拡大していく過程で、家づくりに対するお考えに変化はあったのでしょうか。
伊藤宣明:
事業の規模を拡大していく中で、品質や性能をさらに良くし、もっとお客様の要望に応える「良い家」をつくりたいという思いが強くなりました。しかし、設計や施工を外注していると、どうしてもコストがかさみ、アフターフォローの面でもスピード感や許容範囲のすり合わせに限界を感じたのです。それならば、自社で設計から現場監督までを一貫して行える体制をつくろうと考え、1989年に株式会社アップルホームを設立しました。自分たちですべてを管理することで、より細部にまでこだわった家づくりが可能になったのです。
ーー改めて、貴社の強みをお聞かせいただけますか。
伊藤宣明:
私たちが強みとしているのは、住まいや暮らしに関わるあらゆるサービスを、グループ内でワンストップ提供できる点です。狭山地区における圧倒的な知名度と信頼をベースに、家を建てて終わりではなく、10年、20年経った時のリフォーム、さらにはご高齢になった時の住まいまでサポートしたいと考えています。そのような生涯にわたるサポートを実現したいという強い思いから、自社で約50名規模の介護施設を2棟建設し、運営まで行っています。
賃貸アパートにお住まいの高齢の方から今後の生活への不安についてご相談をいただくこともあり、住む人の一生を支え、地域の皆様と最後までお付き合いできる体制を整えることは、地元に愛される企業としての使命だと感じています。
建物のブランディングと非住宅領域への新たな挑戦
ーー今後のビジョンについてお話いただけますか。
伊藤宣明:
まず、本業の住宅部門では、建物のブランディングをさらに推し進めていく方針です。住宅の性能や内部のデザイン、外観、そして植栽などの外構に至るまで、他社にはない付加価値を追求し、お客様に一目で魅力を感じていただける家づくりを目指します。また、賃貸管理の分野でも、自社で建てたアパートなどの管理物件数をさらに増やし、グループ内の相乗効果を高めていきたいと考えています。
ーー住宅以外の領域でも、新たな展開を予定されているのでしょうか。
伊藤宣明:
実は医療施設やオフィス、介護施設などの「非住宅分野」の建築事業にも注力し始めているんです。一昨年からそれぞれの専門チームを立ち上げ、すでに介護施設なども自社で手がけました。また、グループでは日本語学校の運営や協同組合での人材派遣なども行っており不動産や建築を通じて地域と深く繋がりながら、社会貢献を果たしていくつもりです。これからも、地元でさらに必要とされる企業へと成長していきたいですね。
編集後記
証券会社の営業マンから不動産業界へ飛び込み、誠実な仕事ぶりで地主からの信頼を勝ち取り、事業の礎を築いた伊藤氏。「お客様のための家づくり」を追求して自社施工を担うグループ会社・株式会社アップルホームを立ち上げ、さらには介護事業へ参入するなど、その決断の根底には常に顧客第一の哲学がある。性能からデザインまで妥協しない住宅のブランディング、そして自社のノウハウを活かした非住宅領域への挑戦。地域社会と人々の生涯を支え続ける同グループが、今後どのような街づくりを見せてくれるのか、さらなる飛躍に期待が高まる。

伊藤宣明/1972年慶応大学商学部卒業、1972年野村證券株式会社入社、1980年狭山不動産株式会社入社、1994年狭山不動産株式会社代表取締役就任。