※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

自動車部品や機械工具の卸売業として、全国の自動車整備を陰ながら支えるヤマト自動車株式会社。代表取締役社長の堀江聡氏は、学生時代に2級自動車整備士資格を取得し、卒業後は同社一筋で歩んできた。当初は営業職を敬遠していたが、その営業現場での経験から卸売業の本質を学び、企画部の立ち上げや全社的な業務改善を牽引してきた。現在も「着実に、堅実に」を信条とし、自社で編集したオリジナルのカタログや業販システムを展開し業界に貢献する堀江氏に、これまでの歩みと組織の未来像をうかがった。

営業嫌いの青年が現場で学んだ「間に立つ者」の価値

ーー貴社に入社された経緯を教えてください。

堀江聡:
私はもともと整備士志望で、学生の間に整備工場でのアルバイトを経験し、2級自動車整備士の資格を取得しました。人見知りな性格もあって就職活動において整備士以外の職種では営業職は避けたいと考えていたところ、企画職としての活躍を期待され入社しました。しかし実際には企画部門は存在しておらず、配属先の大阪東営業所では2年目からお客様を担当することになり、結果として営業として現場を回ることになりました。

ーー営業時代の経験で今に生きている出来事はありますか。

堀江聡:
非常に良い経験となったのが、ベアリングのクレーム対応です。商品の検査を依頼したメーカー側は「検査依頼品が現状良品である」という判定しか出せない状態で、お客様である整備工場は「なぜトラブルが起こったのか?」という根本的な理由を欲していらっしゃいました。このように平行線をたどり、解決が難しい案件となり、間に挟まれた販売店の社長も困惑し、「何とかしてくれ」という状況になってしまったのです。そこで私は、考えられる要因を想定してレポートを作成し、販売店の社長にご理解いただけるように説明した結果、最終的には整備工場様にご納得いただけました。我々卸売業として整備工場様の要望を理解し、整備現場の情報を入手してご提案すること、そして間に立って対応し溝を埋めることこそが、私たちの介在価値なのだと深く学びました。

現場視点の「改善」が組織を変え独自の強みを生む

ーーその後、本社で企画部を立ち上げられた経緯を教えてください。

堀江聡:
大阪東営業所の後は本社営業部に異動して営業を経て統括する立場となり、その後、大阪営業所での所長勤務を経て、営業部長として本社に異動しました。そのタイミングで企画の部署を立ち上げることとなったのです。

営業と兼務で企画業務に携わることになったのですが、入社時に志望していた企画の職に就くまで、実に24年の歳月(四半世紀)が掛かりました(笑)。当時は各事業所が独立的な動きで営業を行っていましたが、会社として本社一括管理の体制へと移行に向けて動いている時期でもありました。私は現場の情報の効率化と最適化を図るため、社内の情報整備を進めました。「会社にとってより良い方法があれば、それを形にしたい」という思いで取り組んできた結果、今の組織体制へとつながっています。これらは標準化を進めることにもつながるのですが、個人の強みが発揮されにくくなることへの懸念も感じていたため、標準化すべき領域を見定めながら進めてまいりました。

ーー貴社ならではの強みはどのような点にあるとお考えですか。

堀江聡:
まず、「人」です。探求心をもって業務を推進してくれる社員と一緒になって取り組める環境があります。

次にツール面では、弊社オリジナルの「ヤマトのカタログ」が大きな強みです。さまざまなメーカーの商品から自動車整備に関係するものを厳選し、作業カテゴリー毎に1つのカタログとして提示する仕組みは、業界でも珍しいと思います。また、BtoB向けの「ヤマトのウェブ」という受注および商品検索システムも構築しており、こうしたツールが営業に代わってお客様にアプローチしてくれる機会となるため、人手不足が進む中においても効率的に価値提供できる点は当社の大きな強みです。

「誰かがいないと回らない会社」からの脱却と未来

ーー採用面ではどのような人材を求めていますか。

堀江聡:
「誰かがいないと回らない会社にはしたくない」一部の人材に依存するのではなく、それぞれの個性を集結させ組織全体の力を高めていける会社が理想です。自分の軸をしっかり持ち、興味関心をもって仕事を楽しめる方を求めています。

ーー組織づくりにおいて、教育やフォロー体制についてはどのようにお考えですか。

堀江聡:
自律した組織を支えるため、人材教育の仕組みづくりを進めています。具体的には新入社員研修、2年目にフォローアップ研修を行っています。1年目においてはOJT制度を導入し、定期的な振り返りを通じて成長をサポートする体制を整えています。また、各部署が主催する「30分程度のウェブ勉強会や説明会」をはじめ、外部研修やメーカー様への訪問、展示会への参加等を通じて社員の知識とスキルの向上を図っています。全社会議では新商品の知識や各拠点の改善事例や成功事例をスピーディーに共有し、部署内への浸透を図り、拠点間の垣根を越えた情報交換を活発化させています。

こうした場を設けることで社員の成長を促し、実際に社員全員が協力し合い主体的に行動できる組織へ変革を続けています。さらに、知識やスキルの習得にとどまらず、人として・社員として・社会人としての人格の向上を期待する想いのもと、人材育成に取り組んでいます。

ーー最後に今後の展望をお話いただけますか。

堀江聡:
代表に就任してからも変わらず、「着実に、堅実に」進めていくことを基本とし、企業として、そして人としてさらに成長できる会社にしていきたいと考えています。奇をてらったことをいきなり始めるのではなく、当たり前のことがしっかりできる会社でありたいですね。これからも究極の卸売業を追求し、お客様のご要望にお応えできる仕組みを磨き続けていきます。

編集後記

「着実に、堅実に」。堀江氏の言葉からは、現場を這いつくばって得た圧倒的な当事者意識と、実務に根ざした説得力が感じられた。営業嫌いだった青年が、顧客の課題解決のために奔走し、やがて全社の仕組みを根本からつくるリーダーへと成長した軌跡は、非常に興味深い。「誰かがいないと回らない会社にしたくない」と語る同社の、究極の卸売業への挑戦はこれからも力強く続いていくのだろう。

堀江聡/1962年、大阪府出身。1984年、大阪産業大学工学部交通機械工学科を卒業後、ヤマト自動車に入社。営業所所長、営業部長(企画課兼任)、取締役専務を経て2024年11月、同社代表取締役社長に就任。