
数々のヒット商品を生み出してきた株式会社ほんやら堂。同社が長年大切にしてきたのは、「生活に必要ではないけど、大切なこと」を提供し、人々に癒やしを届けるという理念だ。長らくギフト雑貨市場を牽引してきた同社だが、為替やコストの変化、市場の飽和を見据え、現在は新たな変革の時を迎えている。外資系企業やアスクル株式会社での豊富な新規事業立ち上げ経験を持ち、第二創業期を率いる代表取締役社長の玉崎史之氏に、これまでの歩みと今後の組織展望をうかがった。
外資系企業のグローバルCEOへの直言から始まったマーケターとしての道
ーーまずは、玉崎社長のキャリアの原点について教えてください。
玉崎史之:
大学卒業後に新卒入社した食品メーカーを早期退職し、カナダへ渡ったことが最初の転機です。カナディアンロッキーの観光地・バンフで、50枚の英語の履歴書を片手にホテルへ飛び込み営業をして採用していただきました。現地では「自分の仕事は自分だけ」という合理的な考え方が強く、日本的なホスピタリティがあまりありませんでした。そこで「こうすれば次の人が楽になる」と気づいた改善点を自ら提案し、環境を変えていったのです。この「気づいたなら、自ら行動して変えていく」という姿勢が私の原点です。
帰国後は、外資系企業の日本法人立ち上げに営業職として参画しました。設立1ヶ月ほどで全世界を統括するCEOが視察に訪れた際、私は「商品カタログの表現方法が日本市場にマッチしていない」という現場の課題を解決したい一心で、グローバルトップへ直接改善を訴えました。
ーーその行動の根底には、どのようなお考えがあったのでしょうか。
玉崎史之:
改善すべき点に気づいたなら、言葉にするだけでなく、自ら行動して変えていく。それが私の信条です。結果としてこの発言をきっかけにCEOに目をかけていただき、営業からマーケティング部へ異動する好機を得ました。カナダで英語を学べたことが活かせましたね。さらに2か月間のイギリス研修にも参加し、グローバルな視点でマーケティングを学ぶ大きな一歩となりました。
ーーそこから現在に至るまで、どのようなキャリアを歩んでこられましたか。
玉崎史之:
その後、アスクル株式会社に16年間在籍し、数々の新規事業を主導しました。文房具主体の事業展開のなかで、ギフトや冷凍食品、酒類、ペット用品、工場向け間接財など、現在では定着している新カテゴリーの立ち上げを推進しました。また、大規模なシステム開発に参加したり、産学共同プロジェクトの事務局長に任命されたり、さらには中国向け越境ECサイトの立ち上げなど主導的立場での経験に多く恵まれました。その後、株式会社NTTドコモ系事業会社を経て、2024年に株式会社ほんやら堂へ入社しました。これまでの業務を通じて培ったシステムへの理解や事業全体を俯瞰する視座は、現在の経営判断の土台となっています。
「生活に必要ではないけど、大切なこと」を時代に合わせて形にする

ーーこれまでのご経験を踏まえ、貴社の今後の事業展開についてどのようにお考えでしょうか。
玉崎史之:
根本にあるのは、「生活に必要ではないけど、大切なこと」を提供し続けるという創業者の精神です。お土産グッズから始まり、竹炭製品、プチギフトと、時代が求める「癒やし」を形にしてきました。現在は「お客様の心に、安らぎ・癒やし・豊かさ・笑顔・喜びを」という新たな理念を掲げています。一方で、これまでの主力だった低価格帯のプチギフト市場は競合が多く、外部環境の変化による影響を受けやすい課題があります。過去の成功体験に固執せず、時代に合わせて柔軟に変化しなければならない潮目に来たと思っております。
ーー具体的にはどのような変化を起こしていくのでしょうか。
玉崎史之:
まず第一に、弊社の企業価値とプレゼンスを高めるため、季節限定のプチギフトを前提とした商品戦略を転換しました。既存事業は堅持しつつ、そのアセットを生かした新たな企画商品を、新ブランドのもとで順次リリースしていきます。年間を通じて販売する定番商品、かつ自家需要も見据えた「癒やしの商品」を軸に据えることで、ホームセンターやドラッグストアなど量販店への販売チャネル拡大を加速させていきます。
さらに、長年愛されてきたオリジナルキャラクターのIP(※1)展開についても、SNSなどを活用しながら再構築を進めています。新たなキャラクターも登場させ、現代にマッチした形で価値を最大化させていく方針です。また社内においても、属人的で曖昧な業務設計から脱却し、IT化やDX化を大幅に進めました。人員も拡充し、OEM(※2)やノベルティなどの役割を明確化することで、さらなる業務の平準化と組織力の強化を図っているところです。
(※1)IP:Intellectual Propertyの略。知的財産のこと。
(※2)OEM:Original Equipment Manufacturingの略。他社ブランドの製品を製造すること。
第二創業期を共に楽しむ新たな人材への期待
ーー組織全体が大きく変わる変革期において、どのような人物像を求めていますか。
玉崎史之:
現在、弊社は「第二創業期」とも呼べる非常に大きな変革期を迎えています。かつて50代半ばだった社員の平均年齢も、若手の採用を進めた結果、40代半ばまで若返りました。私の役割は、次の50年、100年と株式会社ほんやら堂が続いていくよう、次世代へ強固なバトンを渡すことです。だからこそ、この第二創業期という変革の波を、一緒に楽しめる人材に出会いたいと考えています。自ら課題を見つけ、会社の成長を共に面白がれる方をお待ちしています。
編集後記
外資系トップへの直言や大規模な新規事業立ち上げなど、玉崎氏の歩みは「自ら課題を見つけ、行動する」という信念に貫かれている。その鋭いビジネス視点が、同社が長年培ってきた「癒やし」のコンテンツと融合し、ファブレスメーカーをどう進化させていくのか。第二創業期の熱量と未来への確かな布石を感じる取材だった。

玉崎史之/法政大学経営学部卒業。国内食品メーカーを経て約2年間カナダの企業に就労。帰国後は外資系企業でマーケティングとグローバルな視座を培う。2006年アスクル株式会社入社。伊勢丹ギフトサイト構築、中国越境EC、Yahoo!ショッピング出店など複数の新規事業立ち上げをプロジェクトマネージャーとして主導。LOHACOでは事業企画を担当。2024年株式会社ほんやら堂に取締役として入社。2025年1月より代表取締役社長。