※本ページ内の情報は2026年5月時点のものです。

ベンチャーキャピタル業務を経て、200万円の元手から起業した、株式会社できるくんの代表取締役 岩田真氏。Web制作の相談窓口「Web幹事」を立ち上げ、累計7万件以上の相談を抱える規模へと成長させた。しかし2023年末、AIの劇的な進化を目の当たりにし、事業の売却を決断する。AIによる「制作の民主化」を見据え、AI制作エージェント「できるくんAI」へ舵を切った。その背景にはどのような確信があったのだろうか。劇的な転換期で揺るがない「信用と誠実さ」の哲学に迫る。

大手町のエリートと目を輝かせる経営者たちのコントラスト

ーーまずは起業を志したきっかけから教えていただけますでしょうか。

岩田真:
2012年にベンチャーキャピタルに入社したのがキャリアのスタートです。「世の中のお金の流れを知りたい」という思いから金融業界を選びました。投資先を探すため年間何百人という経営者とお会いする中で、非常に印象的な光景を目の当たりにしたのです。それは、大手町で高年収を得るエリート層の目に光がないこととのコントラストでした。私が会う経営者たちは決算書が厳しい状態でも、みな目を輝かせて挑戦していました。この違いに衝撃を受け、「自分も経営者側に行きたい」と起業を決意しました。

「食いつなぐ」ための受託開発から「Web幹事」の成功 そして事業売却へ

ーーそこからどのように起業されたのですか。

岩田真:
ベンチャーキャピタル在籍の3年間で貯めた資金の半分を資本金として同期3人で起業しました。当初は壮大なビジョンがあったわけではなく、まずは「食いつなぐ」ことが最優先でした。そこでエンジニアのスキルを活かし、Webの受託開発から必死に事業を立ち上げました。

その後、事業を進める中で、お客様が「どこの制作会社に頼めばいいかわからない」と悩んでいる事実に気づいたのです。自社で制作を請け負うよりも、最適な制作会社をマッチングする相談窓口こそがより大きな価値を提供できると考えました。そうして立ち上げたのが「Web幹事」です。

ーー事業は順調に成長していったのでしょうか。

岩田真:
累計7万件以上のお客様にご利用いただける規模へと成長しました。しかし、2025年に売却を決意することになります。最大の理由は、AIによる「制作の民主化」と産業構造の変化を確信したためです。2023年末頃から、ChatGPTなどの生成AIの進化スピードが想定を遥かに超えている事実を目の当たりにしました。

これまで20人月かけて泥臭くつくっていたバナーやLPが、AIを活用すれば10分の1以下の工数で制作できます。この技術革新を前に、「これまでのやり方は通用しなくなる」と確信したのです。この思いから2025年に事業を売却し、社名もオフィスもミッションも一新しています。そして「AIによる制作の仕組み化」へと完全に舵を切りました。

圧倒的な「業界知見×AI」でニッチな制作市場のトップランナーへ

ーー現在注力されている事業の強みについてお聞かせください。

岩田真:
私たちの最大の強みは、「圧倒的な業界知見×AI」です。前身の「Web幹事」時代に培った全国の制作会社とのつながりや制作に関する知見があります。この一次情報をベースにしているからこそ、現場が本当に欲しがるAI制作エージェント「できるくんAI」を開発できるのです。

ーーターゲットとしている市場への展望はどのようにお考えでしょうか。

岩田真:
Web制作業界には、絶対的なマーケットリーダーが不在です。そこに「できるくんAI」を投入し、制作会社や広告代理店のインハウス部隊の業務をAIで仕組み化するのです。ニッチではありますが、確実にあるこの制作市場を攻略します。業界のトップランナーを狙えるポジションをとりにいきたいと考えています。

激動のAI時代を勝ち抜く「誠実さ」という最強のソフトパワー

ーービジネスを展開する上で最も大切にされている哲学は何でしょうか。

岩田真:
根底にあるのは「信用がすべて」という思いです。ビジネスは信用で成り立つと金融業界の経験から痛感しました。私たちはAIという先端技術を扱い、産業構造を変えようとしています。しかし組織文化として最も大切にしているのは「義理堅く誠実であること」です。

変化の激しいAI業界において、この誠実さこそが顧客から選ばれる強力なソフトパワーとなっています。自分が生み出したサービスで誰かの課題を解決し、対価をいただく。それが私の最大のモチベーションです。時代の大きな転換期を、誠実さというブレない軸を持って戦い抜いていきます。

編集後記

エリート層の働き方に疑問を抱き、200万円の元手から事業を立ち上げた岩田氏。AIの波をいち早く察知し、自ら育て上げた事業を売却して新たな市場へ飛び込む決断力には目を見張るものがある。多大な工数を要していた制作業務がAIで劇的に変わると語る視線の先には、確かな勝算が見えていた。最先端の技術を駆使する一方で、岩田氏が最も重んじるのは「誠実さ」という人間本来の価値である。テクノロジーと信用の両輪で突き進む株式会社できるくんの挑戦は、Web制作業界に変革をもたらすに違いない。

岩田真/奈良県大和郡山市出身。京都大学経済学部卒業。2012年に新卒でジャフコ グループ株式会社(JAFCO)に入社。数億円規模のベンチャー投資に3年間従事する。独立後、2015年に株式会社ユーティルを設立(現・株式会社できるくん)。「Web幹事」事業、HP制作支援をする「できるくん」事業を経て、2026年3月に「AIエージェント」事業を新たにスタートさせる。