※本ページ内の情報は2026年5月時点のものです。

創業以来、モバイルデバイスの中古という概念が一般的でなかった時代から、業界のパイオニアとして市場を切り拓き、循環型社会の実現に尽力する株式会社ニューズドテック。昨今、スマートフォン(以下、スマホ)価格の高騰やSDGsへの意識の高まりによりリユースデバイス市場がかつてない注目を集める中、同社は単に中古端末を売買するだけにとどまらない。スマホの健康診断アプリの自社開発やAIを活用した品質管理など、テクノロジーで中古スマホの信頼性を変える革新的な取り組みを行っている。2025年12月22日にはTOKYO PRO Marketへ上場を果たし、社会的信頼をさらに強固なものとした。

スマホの「長寿命化」という新たな価値を社会に提示し、中古電気製品小売業の枠を超えたテックカンパニーとして進化を続ける同社の代表取締役社長、粟津浜一氏に、アイデアの源泉や組織論、未来へのビジョンについてうかがった。

宇宙開発の夢と挫折「敗者の視点」がもたらした強さ

ーーまずは、起業前のエピソードをお聞かせいただけますか。

粟津浜一:
私は小さい頃から宇宙に興味があり、20歳の時にはNASAに入りたくてヒューストンへ留学したこともあります。しかし現地で「日本人は永住権がないと働けない」「超優秀で引き抜かれるか、アメリカ人と結婚するかだ」と言われ、夢を諦めざるを得ませんでした。

その後、将来はJAXAで仕事がしたいと考え筑波大学の大学院に進学しましたが、そこではNASAのジェット推進研究所出身の先生や、非常に優秀な先輩たちと関わることになりました。彼らは頭の回転が凄まじく、私が「0.5」を言っただけで「10」まで理解してしまうほどでした。いまだかつて見たことがないほどの天才たちを目の当たりにして、真っ向勝負ではとても勝てないと悟ったのです。

ーーそこでの挫折が、現在のご自身にどのような形で生かされているのですか。

粟津浜一:
周りの天才たちと比べたとき、自分には敵わない部分があるのだと素直に認めることができました。負けを認めるからこそ、変なプライドを持たず、自分より優れている人から素直に学ぶことができるのです。昔、尊敬していた弁理士の先生から「人生は敗者復活戦だ」という言葉をいただき、負けても次に勝てるところを見つければいいという考え方が、経営をする上でも大きく影響しています。

既存の掛け合わせでイノベーションを生む 個人の「一番」を磨く組織論

ーー全く新しい市場を切り拓いてこられた、アイデアの源泉についてお聞かせください。

粟津浜一:
イノベーションというと全く新しいものを生み出すイメージを持たれがちですが、経済学者のシュンペーターが言うように、実は「既存のもの」と「既存のもの」の掛け合わせ、いわば神経衰弱のようなものです。たとえば、「段ボール×食品パッケージ」のように、誰もが知っているもの同士を組み合わせることで、そのまま捨てられるエコな容器など、新商品や新事業は瞬間的に生み出せます。

ーーそのような発想は、組織運営にも生かされているのでしょうか。

粟津浜一:
共通しています。例えば、文章力が圧倒的な人、説明が得意な人など、社員は一人ひとり異なる能力を持っています。苦手なことを無理に克服させるのではなく、その人が社内で「一番得意なこと」に集中して徹底的に磨きをかけてもらえば、会社の生産性は劇的に上がります。一人ひとりが自信を持ち、自分の人生の目標と会社の使命が合致した瞬間、能力は飛躍的に伸びるのです。

テクノロジーで実現する「長寿命化」新たな産業の創出へ

ーー改めて、貴社の事業内容と独自の強みについてお聞かせください。

粟津浜一:
私たちは現在、中古スマホ・タブレットに対して新品のバッテリーを交換したり、傷を消したりして、テクノロジーを使って新しい価値を持たせる「再生スマホ」の事業を行っています。スマホの故障原因の9割は落下によるものですが、私たちの技術や開発中のモニタリングアプリを使えば、落下の衝撃度合いやバッテリー劣化につながる温度変化を測ることができるのです。データに基づいて故障予測につなげ、完全に壊れる前の「初期症状」の段階で回収・メンテナンスすることで、スマホの「長寿命化」を実現しています。今後はデバイスも使った分だけ課金されるような、定額制のメータープライスの仕組みも広げていきたいと考えています。

ーー今後の展開として、どのような未来を描いていますか。

粟津浜一:
私が目指しているのは、新たな産業をつくることです。新品でも中古でもない、ものの寿命を長期化するために活用する「ニューズド(Newsed)」という産業です。これはスマホやタブレットに限らず、机や冷蔵庫など、すべての業界に応用できると考えています。中古電気製品小売業という枠を超え、ダメージを可視化しデジタル化することで、新たな価値を社会に提示し続けていきます。

編集後記

インタビューを通じて最も印象的だったのは、粟津氏の「敗北を受け入れる強さ」と「物事の本質を見抜く観察眼」だ。自身を「敗者」と定義することで他者へのリスペクトを生み、社員一人ひとりの「一番」を見出し開花させる組織論には、リーダーシップの真髄を見た気がする。また、既存の要素を掛け合わせ、「Newsed(ニューズド)」という新たな産業を創出しようとする壮大なビジョンは、大量消費社会に一石を投じるものだ。テクノロジーの力でモノの命を長らえさせ、次世代へ繋ぐ同社の挑戦は、日本のビジネスシーンに確かな熱と希望をもたらしてくれるに違いない。

粟津浜一/1979年岐阜県生まれ、筑波大学大学院理工学研究科卒。ブラザー工業株式会社に入社、研究開発に従事。2009年に株式会社アワーズ(現:株式会社ニューズドテック)を設立、代表取締役社長に就任。2017年には業界団体を設立、初代理事長に就任。総務省・デジタル庁主催の各種検討会に構成員で参加。専門家として100以上のメディア出演実績を有し、テクノロジーを基軸とした産業創出と健全な市場形成に取り組んでいる。