※本ページ内の情報は2026年5月時点のものです。

アジアクエスト株式会社は、最新のデジタル技術を活用し、企業のDXを支援するIT企業だ。日本のIT業界が抱える生産性の低さという課題に対し、独自の「伴走型DX」で顧客のビジネスを成功へと導いている。代表取締役会長CEOの桃井純氏は、どんなトラブルがあっても常に現状をスタート地点と捉える「漸進主義」を掲げ、社員が輝く組織づくりに注力してきた。AIシフトという大きな時代の転換期を前に、同社が目指す未来と経営信念について詳しく話をうかがった。

日本のITの遅れを取り戻す 3つの思いから生まれた変革の志

ーーまずは、起業のきっかけについてお聞かせいただけますか。

桃井純:
理由は大きく3つあります。1つ目は、日本のIT業界の生産性を高め、世界基準からの遅れを取り戻すことです。日本のIT業界はSIerへの委託割合が高く、その構造が生産性の低さや日本の遅れの一因になっていると感じていました。だからこそ、新しいテクノロジーを活かして業界全体を引き上げたいと考えたのです。2つ目は、社名にも込めた通り、日本だけでなく海外にも目を向け、日本と世界をつなぐ架け橋になること。そして3つ目は、「人間」への興味です。人生において仕事はかなりの割合を占めます。世の中には辛そうに仕事をしている人も少なくありませんが、どうすれば人が輝いて働けるのかを探求し、社員がいきいきと活躍できる組織をつくりたかったのです。

ーー貴社の事業の強みはどこにあるとお考えですか。

桃井純:
顧客の成長や勝利にとことん寄り添う「伴走型DX」です。従来のSI業界では、お客様に言われた通りにシステムをつくるだけの技術提供に留まりがちでした。しかし、お客様が本当に求めているのはシステムそのものではなく「事業の成功」です。私たちは、お客様と同じ目線でビジネスの課題を捉え、それを技術で解決する提案を行っています。社内ではこうした人材を「ビジネスエンジニア」と呼び、ビジネスとエンジニアリングの双方を深く理解できるプロフェッショナルを育成しています。この徹底的に寄り添う姿勢が高く評価され、現在では80%を超える高いリピート率につながっているのです。

今を常にスタート地点と捉える「漸進主義」と人をポジティブに見る評価制度

ーー創業から順調に成長されていますが、苦しかった時期はあるのでしょうか。

桃井純:
「苦しかった」と感じた時期は、実はないんです。私は自身の考え方を「漸進主義」と呼んでいますが、常に今いる地点を新たなスタートだと捉えています。たとえトラブルが起きようと、現状から「何ができるのか、どうやって前に進むのか」だけを考えるため、辛いと立ち止まっている時間がないのです。目指すべき明確な未来のビジョンがあるからこそ、今の状況がどうであれ気になりません。

ーーそのポジティブな姿勢は、社内の評価制度や文化にも反映されているのですか。

桃井純:
弊社の評価会議では「人をポジティブに見る」という文化を非常に大切にしています。約500人いる社員全員の評価に私も目を通しますが、できていない部分を減点方式で探すのではなく、「この期間でこんな頑張りがあった」「こういう可能性が見えた」というプラスの側面を中心に報告を上げる仕組みにしています。人には、期待されることで能力が開花しやすくなる「ピグマリオン効果」があります。たとえすぐに結果が出なくても、挑戦した過程そのものを評価することで、社員は自らのポテンシャルを存分に発揮していくと考えています。

ーー社内の雰囲気について教えてください。

桃井純:
お互いへのリスペクトが非常に高く、寄り添う人がすごく多い組織です。中途で入った人が「こんないい人ばっかりなのはなぜですか?」とみんなびっくりするほどです。象徴的なのが、半期に一度の表彰式で、候補者を推薦する上司がプレゼン動画を作成するのですが、これが半端なく「熱い」んですよ。「絶対にうちのチームのこの人しかありえない」と熱く語る動画が、ときには1時間を超えることもあるほどです。そうして誰かが表彰されれば、部署の仲間が我が事のように一番喜んで大盛り上がりするなど、相手を心から称賛する素晴らしい雰囲気が根付いています。

「AIシフト」の荒波を越え人が輝き続ける組織へ

ーー今後のビジョンと、これから求める人物像について教えていただけますか。

桃井純:
AIの進化により業界の前提が全く変わる「AIシフト」がこれから起きて、早ければ3年で状況が変わることが予想されます。まずはそのゲームチェンジを勝ち切ることが直近の目標です。ルールが変わる今は、新しいプレイヤーが勝つための大きなチャンスでもあります。ただ、時代や技術がどう変化しようとも、「関わっている仲間がいかに幸せな人生を送るか」という究極の目標は決して変わりません。

ーーどのような方と一緒に働きたいとお考えですか。

桃井純:
「好奇心の強さ」と「相手を大事にする価値観」を持っている方です。最新技術のキャッチアップはもちろんですが、お客様のビジネスに深い興味を持ち、真摯に寄り添うためには知的好奇心が不可欠です。また、これからの時代はAIエージェントと共に仕事をすることが当たり前になるため、自分のやりたいことを分解・構築する「構造化能力」や、的確なプロンプトや指示を出すための「言語化力」も強く求められます。誰かのために働き、自ら変化を楽しめる方と一緒に、新しい挑戦を続けていきたいですね。

編集後記

常に今をスタート地点と捉える。桃井氏のブレない「漸進主義」が、アジアクエストの躍進を支える最大の原動力だと感じた。効率や技術だけが先行しがちなIT業界において、人をポジティブに見る評価制度や熱量あふれる表彰式など、体温の通った組織文化を築き上げている点が非常に印象深い。未曾有のAIシフトすらもチャンスと捉え、技術とビジネスの両輪で顧客を勝たせる同社が、日本のIT業界にどのような変革をもたらすのか。その未来から目が離せない。

桃井純/IT業界にてシステム開発や新規事業に従事した後、2012年にアジアクエスト株式会社を創業。AI・IoT・クラウドを活用したDX支援を軸に事業を拡大し、戦略立案から実装、現場定着までを一貫して担う「伴走型DX」を確立。建設・インフラ・製造など幅広い業界のデジタル化を推進し、2021年に東証マザーズ市場(現東証グロース市場)へ上場。2026年3月付けで代表取締役会長CEOに就任。