
約2600社に導入され、解約率1%未満という低い水準を維持する「rakumo」。rakumo株式会社は2025年、外部企業で事業責任者として実績を積んだ清水孝治氏を代表取締役社長 グループCEOとして新たに迎え、「第二創業期」へと突入した。長年こだわってきた特定のプラットフォーム向けのSaaS企業からの拡張。企業買収による相乗効果の創出。そして、組織全体でのAI活用推進である。停滞気味だった組織の潜在能力をいかにして解き放ち、次なる飛躍を遂げようとしているのか。清水氏の具体的な行動と未来への展望に迫る。
「実務家」トップが注入した数字への執着と組織変革
ーーまずは、貴社の社長に就任されるまでの経緯を教えてください。
清水孝治:
将来のキャリアを考えた際、役員のままで一生を終えるより、もっと胸が高鳴る挑戦がしたいと考えたことがきっかけです。これまで様々な企業で事業責任者として経験を積んできましたが、以前一緒に仕事をしたご縁もあり、前社長から直接事業を引き継ぐ決断をしました。
お声がけいただいた際、rakumoに魅力を感じたのは製品の確かな力です。企業規模や業界を問わず基盤となるグループウェアを提供しており、解約率1%未満という素晴らしい実績がありました。ただ一方で、外から見ていると成長の勢いが少し弱いという印象も受けていました。まだまだポテンシャルを引き出せる、大きな伸びしろがある状態だと感じたことも、社長就任を決意した理由の一つです。
ーー就任後、どのような社内改革に着手されたのですか。
清水孝治:
売上高や営業利益といった「数字への執着」と「スピード感」を組織に注入しました。前社長は理念やビジョンをつくり組織を引っ張るタイプでしたが、対して私は、実務家として目標数値を突き詰めるタイプです。弊社が持つ「仕事をラクにおもしろく」という素晴らしい文化は一切変えずに、意識改革を行いました。その一環として、2026年1月から新しい人事評価制度を始めています。目標数値への貢献度などを直接評価に反映させる仕組みです。成果を重視する方針へ移行したことで、社員の意識も変わってくれることを期待しています。
「前例」を打破する新市場展開と企業買収による非連続な成長
ーー経営の舵取りにおいて、最も大きな決断は何でしたか。
清水孝治:
Microsoft 365向けの「rakumo」をリリースしたことです。創業以来、長らくGoogleやSalesforceのプラットフォーム向けのグループウェアで事業を展開してきましたが、日本市場で高いシェアを持つプラットフォームに対応しないことは、成長の大きな障害になります。
社内には「私たちはGoogle、Salesforceのプラットフォームに注力している会社だから」という前例に囚われる思考もありましたが、その足かせを打破し、新たな市場へ踏み出したことは、経営として大きな影響がありました。現在、地方自治体のデジタル化需要なども追い風となっており、大手企業市場を含め、開拓の余地は非常に大きいです。
ーー積極的に実施されている企業買収は、どのような相乗効果を生み出していますか。
清水孝治:
自社製品の成長に加えて、企業買収を不可欠な戦略として位置づけています。成長市場で求められる高い成長を実現するためです。昨年は営業力が非常に強い外部企業をグループに迎え、彼らの営業を重視する文化と私たちの技術力を掛け合わせました。その結果、商品価値や生産性が向上するという大きな相乗効果が生まれました。組織評価制度の改革や新製品のリリース、企業買収といった変化の種が着実に実を結んでいます。今期は売上高が約30%の伸長を見込むなど、確かな収穫期に入っている手応えを感じています。
低い解約率を支える「技術×芸術」のDNAと社風

ーー競合他社と比較した際の、貴社ならではの強みを教えてください。
清水孝治:
操作性やデザインへの徹底したこだわりです。弊社の旧社名「日本技芸」には、「技術と芸術を融合させたい」という思いが込められています。お客様の声を素早く技術者に届け、日本の商習慣に合わせた使いやすさを追求し続ける姿勢が、解約率の低さに表れています。導入時の支援をほとんど行わなくても、お客様が直感的に使いこなせる点が大きな強みです。
ーー組織文化や社風にはどのような特徴がありますか。
清水孝治:
心理的安全性が高く、困っている人がいれば部門を超えてすぐに助け合う文化が根付いている環境です。制度面では、自分の好きな記念日で休める「記念日休暇」を設けており、その様子をデジタル社内報で共有して盛り上がっています。
また、有志による「茶道部」が月に1回、会議室でお茶を点てて交流を図るなど、社内の風通しの良さにつながっています。現在の少数精鋭の規模感だからこそ、機動力を持って市場変化に対応し、高い収益性を維持できているのです。
AIを使いこなす組織への転換と次代を担う人物像
ーー現在、注力されている取り組みと、今後の展望をお聞かせください。
清水孝治:
既存のクラウドサービスを、利用者を先回りして支援する「AIエージェント」へと進化させることです。AIが先読みして社内の日程調整や会議室の確保を行う。あるいは見積もりが来た瞬間に経費精算の入力を自動で済ませる。そんな「より仕事をラクにおもしろく」する世界を目指しています。
その実現のため、まずは私たち自身がAIを使いこなす組織にならなければなりません。私自身が旗振り役となり、全社的に生成AIを活用する取り組みを推進しています。技術者の開発も含め、全社で生産性を2倍以上に引き上げたいと考えております。AIによって生み出された余白の時間を、人間にしかできない新しい機能のひらめきや操作性の追求に充てていきます。
ーー最後に、これからどのような人材を求めていますか。
清水孝治:
自ら課題を見つけて論理的に組み立て、主導権を持って新しい事業を推進できる方を歓迎します。常に新しいことへ挑戦し、失敗を恐れずに行動できる柔軟性をお持ちの方が理想です。生成AIの登場により、当社は今、非常に面白い第二創業期の段階を迎えました。自らの頭で考え、新しい価値をつくり出せる方と一緒に働けることを楽しみにしています。
編集後記
「仕事をラクにおもしろく」という柔らかな使命の裏には、清水氏の「数字への執着」と「変化し続ける」実行力に裏打ちされた確固たる方針があった。長年の前例を打ち破る新たな市場への参入、そして社長自らが牽引するAIを使いこなす組織への転換。新体制のもとで、同社の潜在能力は一気に開花しようとしている。盤石な製品力を武器に、AIエージェントという新たな次元へ挑む同社の成長軌道が非常に楽しみだ。

清水孝治/1977年大阪府生まれ、早稲田大学卒業。2001年ニフティ株式会社に入社し、事業開発に従事。その後AIベンチャーの取締役COOを経て、2021年にSREホールディングス株式会社に入社し常務執行役員に就任。2024年にrakumo株式会社に執行役員COOで入社し、2025年に代表取締役社長グループCEOに就任。現在に至る。