
中国・上海で生まれ育ち、名だたる外資系企業や国内大手IT企業でマーケティングの最前線を駆け抜けてきた原田静織氏。原田氏が率いるTOUCH GROUP株式会社は、最先端のAI動画技術とインフルエンサーマーケティングを駆使し、日本企業の海外進出を強力に後押ししている。エリートコースとも言える銀行への内定を辞退してまで日本へ渡り、起業の夢を追い求めた理由とは一体何なのだろうか。そして、AI時代に同氏が描く「ロジカルなチームづくり」の全貌に迫る。
中国での学生時代 日本のITベンチャーの熱狂へ
ーー日本へ来られた経緯を教えていただけますか。
原田静織:
母が少し日本語を話せたこともあり、大学では日本語を専攻していました。当時の学生寮の環境が少し過酷だったため、姉とお金を出し合ってアパートを借りたのですが、ちょうど日本企業が中国へ大量に進出していた時期で、周りは日本人留学生ばかりだったのです。彼らと交流する中で、生きた日本語や日本の文化に触れ、非常に刺激的な日々を送りました。
実は卒業時、大手銀行の中国支店長秘書という非常によいポジションで最終選考まで進んでいました。しかし、親がビジネスをやっていた影響もあり、私の中には「いつか必ず起業する」という強い思いがあったのです。堅い銀行員になるイメージが湧かず、内定を辞退して日本へ渡る決心をしました。
ーーではその後すぐに貴社を起業されたということでしょうか。
原田静織:
すぐには起業しませんでした。インターネットの黎明期を牽引した伊藤穰一氏のベンチャー企業でアシスタントをした際、経営陣の凄さを目の当たりにし、「今の自分ではベンチャーを起業するのは無理だ」と痛感したのです。そこで、まずは自分のスキルを磨くためにサラリーマンとして働く道を選びました。
その後は、実力を蓄えるべく、急成長期だったソフトバンクや、ダイレクトマーケティングのトップランナーであったデル、そしてトレンドマイクロなどのIT業界の最前線でキャリアを積みました。どこも会社が激動の時期で非常に濃密な経験ができましたが、特にデルで経験した「数値を可視化し、トラッキングしてパフォーマンスを上げる」というオンラインマーケティングの根本は、大きな学びです。
また、トレンドマイクロではシェア奪還に向けた大規模のテレビCM制作を主導したほか、グローバルマーケティングチームの立ち上げを経験しました。その後、トリップアドバイザーの社長に就任し、最先端のプラットフォームや共創マーケティングについて学び、これからのUGCの重要性について改めて認識しました。第一線で培ってきたこれらの実務経験が、現在の事業を支える強固な礎となっています。
最先端「AI動画」とインフルエンサー事業で日本企業の海外進出の架け橋に

ーー現在、貴社で注力されている事業について教えてください。
原田静織:
日本の企業や自治体が海外へ情報を発信する際の架け橋として、インフルエンサーマーケティングやSNS運用を支援しています。私たちが間に入ることで、海外企業との取引に関する文化的なギャップやリスクを軽減し、スムーズな進出をサポートしています。特に今、力を入れているのが独自の「AI動画」の技術です。
ーーAI動画とは、具体的にどのようなものですか。
原田静織:
1枚の写真から、非常にリアルな動画を生成する技術です。たとえば、桜がない風景写真にCGで自然な桜を咲かせたり、写真の中の人物や動物を違和感なく動かしたりすることができます。現在SNSなどで流れるAI動画はまだ不自然さが残るものも多いですが、私たちが提供するものは本物と見分けがつかないほどリアルです。この技術を使えば、カメラマンやモデルを手配するコストを大幅に抑えつつ、クオリティの高いプロモーションが可能になります。これほど高度なAIツールと動画編集力をかけ合わせたサービスを提供できるのは、今の日本では弊社くらいだと自負しています。
求めるのは「SNS愛」と「ロジカル思考」
ーー今後の展望についてお話いただけますか。
原田静織:
今後は、自社開発のインフルエンサー・プラットフォームと、弊社の強みであるAI技術をかけ合わせ、SNSやライブコマースの分野でリーダー的なポジションを確立したいと考えています。そのために、今後はチームをより大きく、強くしていくことが目標です。
ーー貴社ではどのような方が活躍できるとお考えですか。
原田静織:
採用においてまず第一に求めているのは、「SNSを心から楽しめる人」です。弊社では、業務時間中にSNSやインフルエンサーの動画に触れることを推奨しています。四六時中SNSに触れることが苦にならず、むしろ「なぜこの動画は伸びているのか」とワクワクしながら探究できる方にとって、これほど力が発揮できる環境はないはずです。
そしてもう一つ重要なのが、「ロジカルシンキングができる方」ですね。最新のトレンドを肌で感じ、コンテンツの裏側にあるロジックを分析すること自体が、弊社における重要な「スキル」そのものだからです。マーケティングは、ただ思いつきでやるのではなく、数ある情報から引き算をし、問題の核を見極める論理的な思考が必要です。仕事には煩雑なことも多いですが、根性論はあまり必要ありません。ロジカルに物事を考え、分析と実行を繰り返すことができる方と一緒に、新しい挑戦を続けていきたいです。
編集後記
「根性論はいらない」と言い切る原田社長だが、異国の地でテレアポに奔走し、激動の外資系企業で結果を出し続けてきたその道のりには、確かな熱量と行動力がある。圧倒的な実務経験に裏打ちされたロジカルな思考と、他社には真似できない最新のAI動画技術。この掛け合わせが、日本企業の海外進出における強力な武器になることは間違いない。先を見据え、軽やかに国境や技術の壁を越えていく同社の今後の飛躍から目が離せない。

原田静織/中国・上海生まれ。上海外国語大学で日本語を専攻後、1996年来日。青山学院大学卒業後、IT企業で事業開発・マーケティングに従事し、ソフトウェア分野で国内シェア首位を実現。2013年トリップアドバイザー株式会社の代表取締役に就任。2015年株式会社ランドリーム、2020年TOUCH GROUP株式会社を設立。