※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

趣味のアクアリウムから着想を得て、水槽のレンタルやメンテナンスといったサブスクリプション型サービスの先駆けとなった株式会社東京アクアガーデン。同社はニッチな業界の課題を打破するため、月間最大350万PVを誇る自社メディアを運営する。培ってきたノウハウを全て公開することで、一切の営業活動を行わずに顧客を惹きつける独自の仕組みを構築しており、創業以来約20年で5000台以上の水槽を設置してきた確かな実績を持つ。水槽という「モノ」ではなく「癒しの空間とサービス」を提供する経営信念のもと、最新テクノロジーを活用して業界の課題打破に挑む代表取締役の戸次元樹氏に、アクアリウムの未来をうかがった。

趣味から始まった「サブスク」型サービスの先駆け

ーーまずは、創業の経緯を教えていただけますか。

戸次元樹:
大学卒業後、岩谷産業株式会社に入社し、6年ほど勤めていました。会社員時代に趣味でアクアリウムをやっていたのですが、ある日立ち寄ったショップのチラシで、水槽のレンタルやメンテナンスをするサービスがあることを知ったのです。それを専門で行うビジネスは面白いのではないかと考え、副業として始めました。

当時、プログラミングやWeb制作の知識があったため、自分でホームページを作ってPRしたところ、どんどん問い合わせが来るようになりました。対応しきれないほどの件数になったため、独立して一本でやっていくことを決意し、2006年7月に会社を設立しました。

ーー当時からレンタルやメンテナンスのニーズは高かったのですか。

戸次元樹:
当時はショップのスタッフが片手間でメンテナンスを行っている程度で、専門で行うサービスは非常に珍しいものでした。そこで私たちは店舗での商品の小売り業からは離れ、レンタルとメンテナンスに特化したのです。今でこそ「サブスクリプション」という言葉が定着していますが、私たちは20年前から現在の「サブスク」に通じるビジネスモデルを構築していたと言えます。

ノウハウの全公開から生まれる「選ばれる仕組み」と圧倒的信頼

ーー自社メディアの独自戦略について教えていただけますか。

戸次元樹:
アクアリウムのレンタルというニッチな業界の課題は、そもそも「サービス自体が知られていない」ことでした。そのため、先駆的なSEO対策を行い、自社メディアを立ち上げて情報発信に注力しました。私たちの強みは、培ってきた圧倒的な技術力やノウハウを独占するのではなく、Webメディアで全て公開している点です。レイアウトの比率から機材の選び方まで、すべてをオープンにしています。これにより、情報に共感していただいたお客様からの問い合わせが自然と増える仕組みを構築できており、こちらから営業の電話をかけるようなことは一切していません。

ーーその透明性がお客様からの大きな信頼につながっているのでしょうか。

戸次元樹:
情報を公開することで裾野が広がり、結果として私たちの技術力の証明にもなっていると思います。専門的なノウハウを開示しているからこそ、「ここまで熟知している会社なら任せられる」という安心感を持っていただけるのです。また、弊社は「アクアリウムをもっと身近に」という考えのもと、小型から大型、特注レイアウトまで幅広く手がけ、創業以来約20年で大小合わせて5000台以上の水槽を設置してまいりました。長年の実績に裏打ちされた安心感と信頼感があり、多様なニーズに応えられることも大きな強みです。

こうした信頼関係と実績の蓄積により、オフィスや病院といった法人のお客様だけでなく、大阪・関西万博の「モーリシャスパビリオン」での常設水槽の管理や、近畿大学の「近大マグロ」に関連するイベントなど、高い専門性と信用が求められる場での実績にも結びついています。私たちは水槽という「モノ」を売っているのではなく、「癒しの空間とサービス」を提供している。その姿勢を情報の透明性を通じてご理解いただけていることが、何よりの強みですね。

さらに、法人のお客様に対するレンタル・リース事業だけでなく、ネット経由で個人のお客様向けにオーダーメイド水槽の販売も行っています。個人のお客様はご自身でアクアリウムを深く楽しまれている方が多く、「規格の水槽では物足りない」「半円形や円柱形の水槽が欲しい」といった高度なニーズをお持ちです。長年培ってきた水槽設備の設計や技術力を存分に活かし、そうした特殊なご要望にもお応えしています。

テクノロジーと人間らしさの共存でアクアリウム業界の頂点へ

ーー今後はどのような事業展開を描いていますか。

戸次元樹:
私たちは、「アクアリウム業界でNo.1になりたい」という目標があります。そのためには、AIなどの最新テクノロジーと、私たちが大切にしてきた「生き物を扱う人間らしさ」をどう共存させていくかが鍵だと考えています。具体的には、生き物を扱うというアナログで人間らしい部分は大切にしつつ、それ以外の業務にはAIやDXを積極的に導入しています。たとえば、自社メディアの膨大なデータを学習させたAIチャットボットの実装など、私自身が先頭に立って推進するテクノロジー活用は、業界の常識を大きく覆す可能性を秘めています。

ーーさらにその先に見据えている展開はありますか。

戸次元樹:
現在、私たちはアプリ開発を進めています。意外に思われるかもしれませんが、アクアリウムの本格的なファンコミュニティーアプリがまだ存在しません。一方で、アクアリウムの世界は専門的な知識が必要で、愛好家からの質問が非常に多いという現状があります。日々の疑問を解決し、愛好家同士が交流できる場を創出することで、ハードルが高いと思われがちな海水魚などの美しい世界観をより身近なものへと変えていきたいと考えています。

ーー最後に、業界の未来に向けたメッセージをお願いします。

戸次元樹:
コロナショックでの巣ごもり需要を経て、現在のアクアリウム業界は縮小傾向にあるという課題があります。この現状を真正面から受け止め、テクノロジーと熱い思いを武器にアクアリウムの裾野を大きく広げていくことが私たちの使命です。フランチャイズ展開も含め、弊社の技術力と「サービスを売る」という企業理念に共感してくれる仲間を増やし、業界全体を明るい未来へと力強く牽引していきたいです。熱帯魚や生き物が好きで、お客様に癒しを提供する喜びに共感できる方々と一緒に、新しい世界観をつくっていけたら嬉しいですね。

編集後記

趣味を戦略的なビジネスへと昇華させた先駆者としての慧眼、そして今なお社長自らがAI活用を楽しみ、旗を振るその熱量に圧倒された。培ったノウハウを独占せず、メディアを通じて惜しみなく公開する利他の精神こそが、現在の強固な経営基盤を支えていることは間違いない。独自のAIチャットボットの導入や、愛好家向けコミュニティアプリといった新たな武器を携え、アナログな癒しを追求し続ける同社が、今後どのような空間プロデュースを見せてくれるのか非常に楽しみだ。

戸次元樹/1975年大阪府生まれ。明治大学卒業後、岩谷産業に入社。商社での経験を経て独立し、2005年、個人事業として「東京アクアガーデン」を創業。2006年7月、株式会社化し、現在は株式会社東京アクアガーデン代表取締役として、水槽レンタル・メンテナンス事業のほか、アクアリウムの魅力を伝える情報発信やメディア事業も手がけている。