※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

株式会社オンクルは、後継者不足に悩む地域企業の“承継”を通じて、次世代の経営者を育成・輩出する独自の事業モデルを展開している。代表取締役の安生智基氏は、地方銀行で事業承継支援に携わった経験から、「企業を残すには、経営者そのものを増やさなければならない」という課題意識を抱いた。

現在は、物流・製造・サービスなど複数の地域企業をグループ化しながら、「雇われ社長」から「オーナー社長」へと成長できる仕組みを構築。単なるM&Aではなく、“地域に経営者を増やすインフラ”としての新しい地方創生モデルを目指している。「10社・売上高100億円」は、その構想を実現するための通過点にすぎない。オンクルが描く、“強靭な中小企業エコシステム”とは何か。その思想と未来像に迫った。

銀行員時代の葛藤から生まれた「社長製造業」という答え

ーー現在の事業形態に行き着いた経緯を教えていただけますでしょうか。

安生智基:
企業の受け皿となり、経営者を育てる仕組みを作ろうと考えたのが出発点です。私は地方銀行に約16年勤め、事業承継や企業買収の支援をしていました。その中で、地域の小規模企業にとって、一般的なM&Aの仕組みだけでは承継が難しいという課題に直面しました。さらに、会社を引き継ぐ「担い手」が社内にいないという問題も痛感したのです。優秀な人材が都市部へ流出する中、彼らを地方に呼び戻し、自ら育成しなければ地域の企業は守れません。この危機感が、現在の事業を生み出す原動力となりました。

ーー具体的には、どのように経営者を育成されていますか。

安生智基:
弊社では、「地域で経営を担う人材」を育成することを重視しています。

都市部で経験を積んだ人材の中には、「いつかは経営に挑戦したい」「地元に戻って地域に貢献したい」と考える方も少なくありません。しかし、地方でいきなり起業することや、承継直後の企業経営を一人で担うことには、非常に高いハードルがあります。そこでオンクルでは、まずグループ企業の経営を担う“経営人材”として現場経験を積み、実際の経営に携わりながら、組織運営や財務、営業、人材マネジメントなどを実践的に学べる環境を整えています。

また、将来的にはMBO(経営陣による買収)などを通じて、自ら株式を保有する「オーナー社長」として独立していく道も用意しています。単に会社を承継するのではなく、「経営者そのものを地域に増やしていく」。

私たちは、この一連の仕組みを「社長製造業」と呼んでいます。地方には、優れた技術や歴史を持ちながらも、後継者不足によって存続が難しくなっている企業が数多くあります。私たちは、その企業を残すだけではなく、「次の経営者」を地域の中で育てていくことに価値があると考えています。

栃木の地の利を活かしたグループ連携と相乗効果

ーー現在はどのような事業を中心に展開されていますか。

安生智基:
物流や梱包、倉庫などの周辺事業に注力しています。業種を厳密に絞っているわけではありません。しかし、栃木県は首都圏へのアクセスが良く、大手企業の工場も集中しています。そのため、物流を軸に事業を展開することは、地の利を活かす上で非常に理にかなっているのです。

ーー社外のステークホルダーとどのように連携して事業を進めているのですか。

安生智基:
採用した社長候補の営業力を活かし、企業間で取引先を相互に紹介し合うことで相乗効果を生み出しています。地方の製造業は長年の実績があっても、営業活動を課題としている傾向があります。一方で、私たちが採用する人材には、金融機関などで高い営業力を培ってきた人が多くいます。彼らが自社の枠を超えてグループ全体の営業連携を担うことで、各社の成長を後押ししています。今後は、自社以外のグループ企業の業績向上に貢献した実績を評価する制度を整える方針です。この企業間連携をさらに強固にしていく考えです。

アメーバのように柔軟で強靭な「中小企業エコシステム」へ

ーー会社としては近い未来、どのような目標を掲げていますか。

安生智基:
私たちが目指しているのは、各企業が独立性を持ちながらも、採用・営業・物流・財務などを相互に補完し合える“分散型の中小企業ネットワーク”です。大企業のような中央集権型ではなく、必要に応じて柔軟に連携しながら、環境変化にも耐えられる強靭な地域経済圏をつくっていきたいと考えています。

ーー最後に、今後の展望と、求める人物像についてお聞かせいただけますでしょうか。

安生智基:
ビジネスを通じて栃木県の魅力を全国へ発信し、この事業モデルを全国へ展開していく未来を描いています。また、私は「地域に輝いている価値を見つけ出す」という言葉を大切にしています。弊社が構築している「地方発の経営者育成・事業承継モデル」は、栃木県にとどまりません。志を持つ人材がいれば、全国のどの地域でも展開できる可能性を秘めているのです。

そして、このビジョンを共に実現していく仲間を私たちは求めています。大企業での出世は、ある種攻略本があるゲームのように道筋が見えやすい側面がありますが、中小企業の経営は全くの別物です。理屈や設計だけではなく、パッションで人の心を動かす力が求められます。これは、一般的な大企業では決して得られない、オンクルならではの「経営者になれる経験」であり、圧倒的な「成長機会」だと確信しています。

地方でいきなり起業するというのは、前例も少なくハードルが高いかもしれません。しかし、オンクルは、“いきなり起業する”のではなく、“経営者になるまでの助走期間”を提供する会社でもあります。「いつかは独立したい、会社を経営したい」という熱意を持った方、「地域から世の中を変えていきたい」というビジョンに共感してくれる方、そして何より人が好きな方に、ぜひ来ていただきたいですね。このユニークな環境で共に経験を積み、次世代のリーダーとして地域を盛り上げていきましょう。

編集後記

後継者不足に悩む地域企業と、経営に挑戦したい人材。その両者をつなぐオンクルの仕組みは、単なるM&A支援会社とも、人材会社とも異なる独自性を持っていた。印象的だったのは、「企業を増やす」のではなく、「経営者を増やす」という発想だ。地方に必要なのは資本だけではなく、意思決定を担う人材そのもの――。そうした思想が、オンクルの事業全体に一貫して流れているように感じられた。地域企業の承継が全国的な課題となる中、オンクルの挑戦は、これからの地方経済の新たなモデルケースの一つになるかもしれない。

安生智基/1982年、栃木県生まれ。東洋大学卒業後、2005年4月に株式会社足利銀行へ入行し、ビジネスソリューション営業課長などを歴任。2020年7月に株式会社オンクルの代表取締役社長に就任。その後、2021年4月に株式会社ミライエ代表取締役社長、2022年3月に株式会社ユニテコ代表取締役、2023年12月に有限会社アネスト代表取締役社長、2024年2月に株式会社メディカルネットワークサービス代表取締役社長、2025年6月にエヌエス金属工業株式会社代表取締役社長に就任し、現在に至る。