
全国に100以上の拠点を構え、損害保険を主軸とする広域型代理店として成長を続ける株式会社ウインライフ。取締役社長兼COOの若林章弘氏は、保険会社時代からトップの営業成績を残し、担当していた同社の前身企業に自ら参画した経歴を持つ。独自の営業手法はいかにして生まれ、組織へ浸透したのか。一人の力に頼る経営から「合議制」への転換と、同社が目指す“人を中心とした組織づくり”について迫る。
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ーー保険業界に入られたきっかけは何でしたか。
若林章弘:
身近に金融業があったことと、公共性が高いこと、そして父親が証券会社に勤めていたことがきっかけでした。父からは証券会社を勧められなかったため、「銀行」か「保険」かで悩み、最終的には、人の役に立てる仕事だと感じて保険会社へ入社しました。しかし、数字が強く求められる厳しい環境で、思い描いていたイメージとの間に葛藤がありました。より直接的にお客様と関わり、効果的な提案をするには販売代理店の方が良いと考え始めたのです。
ーーその後、貴社へ入社された経緯をお聞かせください。
若林章弘:
前職で担当していた弊社の前身企業に惹かれ、自ら志願して入社しました。保険会社時代、私は自動車ディーラーを担当する部署に所属しており、そこで入社8年目から10年目まで前身の株式会社ウインを担当していました。やり取りを重ねる中で「この会社で一緒に働きたい」と強く思い、私からお願いをして入社させてもらいました。
入社後は直接お客様を担当させていただくようになり、社内ではトップの成績を継続することができました。その理由としては「保険以外の相談をどれだけいただけるか」を最優先に行動してきたことが大きかったと思います。
実のところ、お客様が1年間のうちに保険を考える時間は10分もあれば十分です。したがって、保険の話ばかりしても決して信頼関係を築くことはできません。「社員が事故に遭って相手が払ってくれない」「売りに出ている不動産についてどう思うか」など、さまざまな困りごとに対して、自らのネットワークを使って解決策を提示していく。そうやって日頃から信頼を重ねることで、いざ保険が必要になったときに、私へ声をかけていただけるのです。これは、個人でも法人のお客様でも変わりません。
一人の力に頼る経営からの脱却と「合議制」による強い組織づくり

ーーご自身の社長就任時には、どのような経営スタイルを打ち立てたのですか。
若林章弘:
廣井会長の強烈な指導力による経営から脱却し、「合議制」への転換を図りました。廣井会長は、周囲の10人中9人が「こうだ」と言っても独自の視点で意見を述べ、3年後にはそれが正解だったと証明されるような、強い統率力を持つ経営者でした。自身の考えを貫き通す「常識にとらわれない」姿勢は、組織を率いる上で非常に勉強になりましたね。
しかし私は社長就任時に、独断での経営は行わず、合議制で進めると宣言しました。弊社には優秀な役員が多数います。廣井会長のように一人で引っ張るのではなく、それぞれの意見をきちんと聞いた上で方向性を決める。誰がトップになっても会社が回る、より強固な組織体制を築くべきだと考えたからです。
また、規模の拡大に伴い、経営企画室や営業推進部などの専門部署を次々と立ち上げました。個人の力に依存せず、必要な部署を立てて専門的な実務は社員に任せていく。砂場で高い山をつくる際、全体を固めながら裾野を広げていくように、組織全体の底上げを図っています。
全国連携の「組織力」と徹底した対面研修
ーー貴社ならではの強みはどこにあるとお考えですか。
若林章弘:
最大の強みは、全国に拠点を持つ「組織力」と連携体制です。たとえば、大阪から東京へ移住されたお客様がいた場合、東京の担当者がしっかりと引き継いで対応します。弊社では、事故が起きた際の初期対応や査定も、社内のつながりを活かして全国どこでも質の高い支援が可能です。この安心感こそが、お客様に選ばれ続ける理由だといえるでしょう。
ーー人材育成や社内交流への取り組みにはどのようなものがありますか。
若林章弘:
人材育成ではお客様への礼儀を身につけるため、入社後半年間の徹底した対面基礎研修を実施しています。新卒採用において、特別な技能は一切問いません。何よりも「チャレンジ精神があり、素直に自分を変えられる人」を求めています。まずは正しい知識を身につけ、先輩に同行して現場を学んでから独り立ちさせます。
また、全国規模の会社でありながら社内の交流も盛んです。サークル活動や社員旅行などの催しを通じて、役職や拠点の垣根を越えた風通しの良い対話が生まれています。
ーー最後に、今後の展望についてお話しいただけますか。
若林章弘:
取扱保険料で500億円を目指し、保険代理店のリーディングカンパニーになりたいと考えています。そのためにIT化やシステム投資も積極的に行っていますが、それらはあくまで顧客管理や内部統制のための道具に過ぎません。最終的に価値を生み出し、古びないのは「人」です。技術が進む時代だからこそ、人と人との直接的なつながりや温かみは欠かせないと考えています。人の力を信じ、人を大切にする組織づくりを、これからも追求し続けていきます。
編集後記
保険代理店として確かな実績を重ねながら「保険の話は10分でいい」と言い切る若林社長。その言葉の裏には、顧客の人生や事業の悩みに寄り添い続ける深い覚悟があった。指導力に頼る経営から合議制への転換、そして全国規模のつながりを活かした組織力。時代の変化に柔軟に対応しながらも、「最後は人」というぶれない軸を持つ同社が、業界のリーディングカンパニーへと駆け上がる日が、すぐそこまできているように思われた。

若林章弘/2004年4月、株式会社ウインに入社。2007年8月、株式会社ウインの取締役営業部長に就任。2012年6月、株式会社ウインライフ(旧株式会社ウイン)の専務取締役に就任。2024年10月、株式会社ウインライフの取締役社長兼COOに就任。