※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

創業以来、鉱山業をルーツに現在ではシールド工法を一貫して支援する株式会社タック。同社を率いる代表取締役社長の瀧川信二氏は、ゼネコンでの経験を経て家業である同社に入り、独自の技術を武器に会社を牽引してきた。しかし、その道のりは決して平坦なものではなかったという。「会社は社員を幸せにするためにある」という確固たる信念に至るまでの葛藤と、5年後に売上高50億円、10年後に売上高100億円という壮大な目標を懸けた組織変革の裏側に迫る。

現場で培った「シールド工事」への思いと家業継承

ーーまずは、これまでのご経歴についてお聞かせいただけますか。

瀧川信二:
大学で土木工学を学んだ後、ゼネコンの西松建設株式会社で12年間ほど現場経験を積み、2000年に家業であるタックに入社しました。私は子どもの頃から、父と一緒に新しい事業の開発を手伝っていて、試験のために現場に同行するなど、工事現場の空気に触れながら育ったのです。当時はまだ珍しかったシールド工事の技術も、その頃から知っていましたし、いつかは帰ってくるかもしれないと考えていました。

西松建設では、入社後の最初の1年はダムの現場、その後4年間は本社で構造や山岳トンネルなどさまざまな設計に携わりました。6年目からは、大阪や京都で大型シールド工事を経験しています。そして、現場での経験を一通り積み、「これならいける」という自信がついたタイミングで家業であるタックへ入社したのです。

「社員に幸せを」 経営塾での気づきと主体性を育む組織づくり

ーー社長就任後、どのようにして現在の経営にたどり着いたのでしょうか。

瀧川信二:
稲盛和夫氏が主宰する「盛和塾」で、経営者としての心のあり方を学んだことが大きな転機となりました。社長に就任した当初は社員との間にうまく信頼関係を築けず、経営を軌道に乗せようと空回りばかりしていました。どうすればうまくいくのかと思い悩み、具体的なノウハウを求めて盛和塾の門を叩いたのです。

しかし、そこで教えられたのは手法ではなく、全く別のことでした。「親孝行できない人間に経営者は務まらない」「社員の主体性を育まないと会社は潰れる」などの厳しい意見をいただき、当初はその真意が理解できず苦悩する日々が続きました。それでも学びを深めていく中で、「会社は何のためにあるのか」という根本的な問いに行き着きました。そして、「会社は社員を幸せにするためにある」という本質に腹落ちするまで、実に4年もの歳月がかかりましたね。

ーーその後、会社はどのように変わりましたか。

瀧川信二:
それまで「顧客に満足を」を掲げていた経営理念の筆頭を「社員に幸せを!」に変えました。以前は自分が主役だという意識がありましたが、お客様から社員が褒められたときに心からうれしく感じ、主役は社員なのだと気づいたからです。そうした私の意識の変化とともに、会社の空気も少しずつ変わっていきました。

また、社員の主体性を育むために、会社を良くする「クレド活動」や、一人当たりの付加価値を意識する「部門別生産性」の取り組みも始めました。クレド活動では社員自身が企画や運営を担い、社内合宿などの行事も社員主導で行っています。これらの活動を10年以上続けた結果、強固なチームワークと主体性が育まれてきたのです。

技術者から指導者へ 売上高100億円企業を見据えた未来への挑戦

ーー貴社の事業の強みを教えていただけますか。

瀧川信二:
弊社最大の強みは、インフラ工事における「地盤沈下ゼロ」を追求し続ける独自の技術力です。シールド工事の安全や安定施工に必要な設備、材料の提供から施工支援までを一貫して担っており、このような体制を整えている企業は世界を見渡しても非常に珍しく、確固たる強みだと自負しています。

また、今後はこの技術力をさらに高めるために、「シールド学校」という社内教育プロジェクトを進めていく予定です。社員には単なる作業員ではなく、専門性を持つ技術者へと成長してほしいと考えています。将来的には、現場で的確な助言ができる「シールドコンサルタント(指導者)」として活躍してほしいという強い思いを持っています。

ーー事業目標の達成に向けた道筋はいかがでしょうか。

瀧川信二:
5年後に売上高50億円、10年後に売上高100億円という明確な目標を掲げています。そのためにも、まずは海外展開を加速させる予定です。台湾やインドなどへの進出を本格化させるとともに、協力会社という名の「仲間」を増やす計画を進めています。ただし、規模の拡大はあくまで手段に過ぎません。私の根底にあるのは、社員が成長し、自己実現できる環境を提供したいという思いです。いろいろな現場を経験し、挑戦する場を増やすことが社員の成長につながると考えています。

ーー最後に、経営者としての願いをお聞かせいただけますか。

瀧川信二:
私の一番の夢であり願いは、社員が定年を迎えたときや会社を去るときに思うこと。それは「この会社で働いてよかった」と心から思ってもらうことです。仕事を通じて心を高め、自分の言動で相手が元気になる。そんな働きがいのある環境をつくり続けたいと考えています。そのために、これからも社員とともに挑戦を続け、全員が幸せになれる会社を目指していきます。

編集後記

「会社は社員を幸せにするためにある」。そう語る瀧川社長の言葉には、数々の失敗と葛藤を乗り越えてきた経営者としての確かな重みがあった。トップダウンで売上高を追うのではなく、社員一人ひとりの主体性を信じ、ともに成長する道を選んだ株式会社タック。シールド工法という専門性の高い分野でワンストップのサービスを提供する同社が、指導者の育成や海外展開を通じて、売上高100億円企業へとどのように飛躍していくのか。社員の幸せを原動力に進み続ける同社の未来が非常に楽しみだ。

瀧川信二/1965年、岡山県出身。1988年、京都大学工学部土木工学科卒業後、西松建設株式会社に入社。土木技術者として大型建設プロジェクトに従事。2000年、株式会社タックに入社し、2006年より代表取締役社長に就任。経営においては稲盛哲学と出会い、「全社員の物心両面の幸せを追求する」ことを経営の根幹に据えた実践を続けている。現在は、中国古典の学びを継続し、経営と人間としての在り方の深化に取り組んでいる。