※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

青汁をはじめとした健康食品や化粧品などで知られ、昨年10月に創業60周年を迎えたキューサイ株式会社。長きにわたり「安全・安心」な商品を顧客に届けてきた同社は今、「ウェルエイジング」という新たな使命を掲げている。現在、代表取締役社長を務める石川順朗氏は、ソニー、アマゾンジャパンなどを経て2022年に同社へ入社し、製品供給網の大幅な改善実績を残した。その後2025年に社長へ就任。同氏が描く「ウェルエイジングを支える新たな基盤」への進化と、人生100年時代における真の豊かさについて話を聞いた。

グローバル企業で培った知見を注ぎ込み圧倒的な製品供給網の改革を実現

ーーまずは、貴社へ入社するまでのご経歴についてお聞かせいただけますか。

石川順朗:
キャリアのスタートは、新卒で入社したソニーでした。そこで約20年間、製造や購買などを幅広く担当。そこから、48歳のときにアマゾンへ転職しました。当時はまさに会社が急成長していく段階で、顧客対応の統括から始まり、注文から1時間で商品を届ける「Amazon Prime Now」の立ち上げなど、さまざまな事業の最前線を経験しました。

その後、コロナ禍で在宅需要が急増する中、大手テレビショッピング企業に移っています。社内では、供給網の管理責任者として膨大な物量をさばくための仕組みづくりに従事していました。そんな中、2022年10月にキューサイから声がかかり、担当役員として入社したという流れです。

ーー当初、貴社に対してどのような印象を持ちましたか。

石川順朗:
第一に、お客様に対する真摯な姿勢と、安心・安全なものづくりをしている会社だという良い印象を受けました。また、お声がけいただいてから改めて会社について調べましたが、自社工場や農場を持ち、非常に実直に事業を展開しているとも思いましたね。

その一方で、私がこれまで培ってきた供給網の最適化という強みを生かせるとも思いました。さらに経営の役に立てる部分が多くあるのではないかと感じ、入社を決意した次第です。

ーー実際に入社してから、どのような改革に取り組んだのですか。

石川順朗:
発注から納品までの所要日数を約3分の1に短縮し、在庫量も半減させる改革を行いました。事業構造自体はしっかりとしていたものの、供給網においては無駄が多くありました。コスト構造に大きな課題があったからです。

そこでまずは、倉庫の拠点の見直しや在庫圧縮を進めました。さらに外部企業に委託していた製造工程を自社で内製化しました。業務の多能工化を進めることで、一人当たりの生産性を大きく向上させたのです。また、容器や化粧箱などの仕入れ品についても、調達部門と開発部門の連携を図り、原価構造から見直して交渉を一元化することでコストを抑えました。これらの取り組みを通じて、コスト低減と資金繰りの大幅な改善を実現しました。

ーー社長就任時にはどのような思いを抱きましたか。

石川順朗:
会社をどう成長の軌道に乗せ、お客様にどう向き合っていくべきか考え、与えられた責務の重さを痛感しました。もともと供給網の担当役員として現場で実務を推し進めるつもりで入社したため、社長就任の打診は私にとっても意外なものでした。しかし、ちょうど創業60周年という大きな節目を迎える時期でもあります。売上高を伸ばすだけでなく、お客様の人生に寄り添う会社づくりをしていかなければならないと、決意を新たにしています。

「もう年だから」をなくしたい 未来の自分と対話する『myme(マイミー)』

ーー貴社の独自性についてお聞かせください。

石川順朗:
私たちの最大の特徴は、企業ミッションに掲げる「ウェルエイジング」です。つまり、年齢を重ねることをポジティブに捉え、お客様の心と体の健康、そしてライフスタイルまでを包括的にサポートしています。人生100年時代と言われますが、年齢を重ねるにつれて新しいことへの挑戦を諦める方がいます。「もう年だから」とお化粧や外出をやめたりしてしまう方が非常に多いのです。私たちはこれを、加齢をネガティブに捉える「セルフエイジズム」と定義しました。

このネガティブな意識による経済損失は年間数兆円に上るともいわれています。私たちが目指すウェルエイジングとは、加齢を前向きに捉えることで、新しいことに踏み出せるような支援をしていくことです。

ーーその理念を具体的にどのような形で事業に落とし込んでいるのでしょうか。

石川順朗:
昨年10月に、ウェルエイジングを支える新たな基盤として『myme(マイミー)』というサービスをリリースしました。生活習慣を変えるというのは、他人に指摘されてもなかなか素直に受け入れられないものです。そこで『myme』では「20年後の自分(※)」をAIで生成し、未来の自分と対話する形を提供しています。

現在の体の状態を入力することで、未来の自分から具体的な助言や商品の提案が送られてくるのです。AIとの対話というハードルの低いところから気づきを得て、少しずつ生活習慣を変えていく。そんな寄り添い型の支援ツールです。

(※)または、60歳になった自分

ーー同サービスの強みはどのようなところにありますか。

石川順朗:
私たち単独の製品群だけでお客様のあらゆる生活様式を網羅することはできません。そこで新興企業を含むさまざまなパートナー企業とタッグを組み、各社の商品やサービスをこの基盤上で提案できるようにしています。企業側にとっては私たちが持つテスト環境や顧客データを活用できる利点があります。効果的な市場調査や商品開発を行うことができるという利点です。また弊社としても商品提案の幅が広がり、お客様の利便性や満足度を最大化させられると考えています。今後も複数の製品や複数の販売経路での事業展開を推進する考えです。

痛くなる前に気づきを与える 先を見据えた提案でNo.1企業へ

ーー今後の商品開発や販売戦略についてお聞かせください。

石川順朗:
問題が起きる前や症状が出る前に、先を見据えた商品提案ができる会社になっていくことを目指しています。これまでは「膝が痛い」という顕在化した悩みに対処するアプローチが主流でした。それを和らげる商品を提供する対症療法的なアプローチです。しかし、本来は膝が痛くなるずっと前から体の不調のサインは出ているはずです。

たとえば猫背が始まると足のバランスが崩れ、それが腰や膝の痛みに繋がっていきます。であれば膝が痛くなってからではなく、その手前の段階で姿勢を正す肌着などを提案すればいいのです。生活習慣を整える支援ができればもっと長く健康で前向きな生活が送れるようになります。このように常に先を見据えた提案でお客様の健康な生活を支えたいと考えています。

ーー最後に、中長期的な目標と読者へのメッセージをお願いいたします。

石川順朗:
私たちの真の目標は、単に「No.1」という称号を得ることではなく、誰もが年齢を前向きに捉えられる「ウェルエイジングな世界」をつくることです。そして、その実現のために、ウェルエイジング文化の社会への浸透をけん引する「ウェルエイジングNo.1企業」を目指しています。そのためにはお客様のデータを統合・分析する仕組みをより強固にし、一人ひとりに合った適切な情報と商品をお届けしなければなりません。そしてパートナー企業と協力しながら、お客様の人生を包括的に支援する環境を整えていきます。

年齢を重ねることは決してマイナスなことではありません。その変化をポジティブに捉え、新しいことにチャレンジできる文化を社会全体に根付かせます。それが創業60周年を迎えた私たちの大きな目標です。これからも進化を続けるキューサイにぜひご期待ください。

編集後記

他社で培った高度な供給網管理の知見を武器に、組織基盤を生まれ変わらせた石川社長。「ウェルエイジング」という理念は単なる標語ではない。AIを用いたサービスや協業を通じて確かな仕組みとして実装されようとしている。商品という「モノ」を売るだけでなく生活習慣の改善という「未来の価値」を提供するのだ。人生100年時代において同社が社会にどのような好循環を生み出していくのか。その飽くなき挑戦はこれからも続く。

石川順朗/1965年生まれ。島根県出身。1989年に大学を卒業後、ソニー株式会社に入社。ソニー時代は、製造・調達・物流・SCM・マーケティング・管理部門等、オペレーション全般(国内・海外)を網羅的に担当。その後、アマゾンジャパン合同会社、株式会社オークローンマーケティング(ショップジャパン)を経て、2022年11月よりキューサイ株式会社にSCM担当執行役員として入社。2025年2月、代表取締役社長に就任。