※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

大学時代にプロサッカー選手への道を断たれ、偶然飛び込んだ貿易業界。そこで目の当たりにしたのは、電話やアナログな書類が飛び交う極めて非効率な現場だった。「この仕組みを自分で変えたい」。そう決意し、株式会社Portrichを創業したのが代表取締役の権藤勇樹氏だ。同社は現在、デジタル技術を駆使したフォワーディングサービスを展開し、ベトナム市場に特化することで急成長を遂げている。泥臭い営業から始まり、今や海外展開を加速させて、売上高1000億円規模を見据える権藤氏に、起業の経緯から今後のビジョンまでをうかがった。

アナログな業界への課題感と「自分でやる」信念

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

権藤勇樹:
大学時代はサッカーに打ち込みプロを目指していましたが、病気でその道を断念せざるを得なくなりました。卒業後は海外と関わる仕事がしたいと考え、たまたま縁があった国際物流会社に入社。入社後はフォワーディング(※)業務に携わり、営業からオペレーションまで一貫して担当していました。その他、飛び込み営業なども経験しましたが、スポーツで培った「まずはやってみる」という精神を生かして日々励んでいました。

(※)フォワーディング:荷主から貨物を預かり、輸出入の輸送に関わる船舶や航空機、鉄道、トラックの手配から荷受人への納品までの業務全体

ーーそこからどのような経緯で起業に至ったのでしょうか。

権藤勇樹:
私の親族には起業家が多かったのですが、病気で挫折した際に祖父から起業を勧められたことが原点です。また、当時はプロになった友人に対する悔しさもあって、自らの力で何か事業を成功させたいという思いがありました。親族の会社を継ぐ選択肢もありましたが、自らの手でゼロから新たなビジネスに挑戦したかったのです。

さらに、前職で直面した業界のアナログな環境も決め手の一つでした。お客様から船の現在地や到着日の問い合わせが非常に多く、その都度調べて回答する状況に非効率さを感じていました。そんな折、海外ではデジタル化が進み始めていることを知ったのです。そこで、日本においてもこの分野で挑戦できるのではないかと考えました。そうして、日本の潜在的な課題を自らの手で解決しようと決意し、知人と共に起業しました。

一貫したデジタルフォワーディングと独自の営業スタイル

ーー事業内容と強みについて教えてください。

権藤勇樹:
フォワーディングとテクノロジーを掛け合わせた事業を展開しています。複雑だった書類管理や船のトラッキングを一元管理し、シームレスにお客様へ情報を提供するシステムを構築しました。最大の強みは、ベトナム市場に特化して現地法人を置いている点です。ベトナムは過去10年で対日本の物量が最も伸びており、そこに特化することで、他社に負けない料金競争力とデジタル化による効率性を両立させています。

ーーサービスの普及に向けて、どのような営業活動をされてきましたか。

権藤勇樹:
創業から昨年までは、私自身がほぼ一人で営業を行っていました。スマートな手法よりも、泥臭い営業活動を徹底してきました。いくらデジタル化を推進していても、最終的には「人」が営業し、お客様に寄り添うことが不可欠です。現在では営業メンバーも増えましたが、「お客様ファースト」の精神と「すぐに見積もりを出す」といったスピード感は、今でも社内で徹底して共有しています。

海外展開の加速と中途採用の強化

ーー今後、どのような事業展開をしていこうとお考えですか。

権藤勇樹:
ベトナムでの成功を足がかりに、今年3月よりアメリカへの展開を開始しています。住友商事株式会社の関連会社とも業務提携し、サポート体制を強化しています。アメリカは世界一の貿易大国であり、ベトナムからの輸入も増えているため、弊社の強みとの親和性が非常に高いのです。将来的には東南アジア全域、そしてヨーロッパへの展開も視野に入れています。

ーー事業拡大に向けて、どのような人材を求めていますか。

権藤勇樹:
全社的に中途採用を強化しています。ベースとなる業務スキルはもちろん大切ですが、それ以上に重視しているのは「チャレンジ精神」と「オーナーシップ」です。私たちがやっていることは業界内でも革新的な挑戦ですので、新しい価値を提供したいと前向きに行動できる方に来ていただきたいです。若くても自ら手を挙げれば挑戦できる環境は整っています。

グローバルのスタンダードへ日本人の存在感を再び

ーー10年後、20年後の目標をおうかがいできますか。

権藤勇樹:
私たちのやっている仕組みが、業界のグローバルスタンダードになることを目指しています。物流の端から端までをシームレスにつなぎ、透明性の高いタイムリーな取引ができる世界を実現したいです。売上規模としても、将来的には1000億円を目指せるような組織に成長させていきたいと考えています。

ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。

権藤勇樹:
海外、特にベトナムなどでビジネスをしていると、現地の人々の圧倒的なエネルギーを感じます。それに比べると、今の日本人は少し元気がないように見受けられることもあります。私はこの会社を通じて変革を起こし、日本人がもう一度グローバルな舞台で存在感を発揮できるような社会をつくっていきたいです。私たちのビジョンに共感し、共に大きなチャレンジをしてくれる熱意ある方をお待ちしています。

編集後記

プロサッカー選手という夢が絶たれた後、偶然出会った貿易業界の「負」を見過ごさず、自らの手で変革を起こす道を選んだ権藤氏。デジタル技術を駆使しながらも、営業における「泥臭さ」を、あえてデジタルでは代替できない最短の「手段」として重視している点が印象的だった。ベトナムからアメリカ、そして世界へと広がる同社の挑戦は、縮小していく日本市場に活を入れるような力強さに満ちている。アナログな業界が、同氏の手によってどのようにグローバルスタンダードへと進化していくのか、その行方から目が離せない。

権藤勇樹/1994年兵庫県生まれ。大学卒業後、国際物流会社に入社し、フォワーディング業務に従事。2020年に株式会社Portrichを創業し、代表取締役に就任。デジタル物流の構築とグローバル展開に注力している。