
公認会計士として監査法人でキャリアをスタートさせた後、プロのキックボクサーへと転身。そんな異色の経歴を持つ那須剛氏が率いるのが、インターグ株式会社だ。金融や美容などの比較サイトを運営する同社は、社員約30名という少人数でありながら直近の売上高は87億円に達し、上場企業として高い生産性を実現している。また、国際的な「働きがいのある会社」調査において高く評価されるなど、独自の組織づくりでも注目を集める。なぜこれほどの成果を出し続けられるのか。そこには、徹底した「誠実さ」と、個人の幸せを社会への還元につなげる明確なビジョンがあった。
公認会計士からプロ格闘家へ 異色の経歴から学んだ「幸せの連鎖」
ーーまずはこれまでのご経歴について聞かせていただけますか。
那須剛:
大学卒業後、監査法人に入所して公認会計士として働いていました。その後、在籍中に始めたキックボクシングに夢中になり、退所してキックボクサーに転身し、プロとして活動していました。そもそも会計士を目指したのは、就職活動の時期に、特定の企業に勤めるイメージがあまり湧かず、就職活動をするより、何か目標を決めて取り組む方が自分には合っているのではないかと思ったからです。そこで大学卒業の年に公認会計士試験を受け、監査法人に入所しました。約4年半にわたり上場企業や外資系企業の会計監査を担当しましたが、様々な会社と一緒に仕事をさせていただくことができ、とても勉強になりました。当時の経験は、今の事業経営にも生きていると感じています。
キックボクシングは、監査法人時代の同期から話を聞き、最初は趣味として始めたものです。しかし、現役選手の方とも練習を重ねてレベルを肌で感じるうちに、プロにチャレンジしたい思いが強くなっていきました。
ーーそこから、起業へと至ったのはなぜでしょうか。
那須剛:
プロとして活動していましたが、試合での怪我を機に引退を決意しました。その後、現役時代から並行して手掛けていたウェブマーケティング事業を本格化させ、インターグを創業しました。起業の道を選んだのは、行動の結果がダイレクトに自分に返ってくることに強いやりがいを感じたからです。試験勉強も格闘技も、合否や勝敗が明確に出ます。自分には、経営者としてビジネスの結果を直接引き受ける環境が向いていると考えました。
徹底した「誠実さ」で三方よしを実現 少数精鋭で結果を出し上場を果たす

ーー現在の事業概要と、貴社の強みは何でしょうか。
那須剛:
現在はメディア事業を主軸に、金融や美容などのジャンルで10以上の比較サイトを運営しています。コンセプトは、ユーザーの購買意思決定をサポートすることです。サイトの運営にあたっては、「誠実」でいることを常に心がけています。短期的にユーザーを煽って誘導するような手法はとりません。長期的に高い価値を提供できるコンテンツを、コツコツと積み重ねて提供しています。
ーーその誠実な姿勢は、どのようにビジネスの結果へと結びついているのでしょうか。
那須剛:
エンドユーザーにとって信頼できる質の高いメディアであることで、広告主様への安定した送客を実現しています。特別な飛び道具はありません。ユーザー、広告主、そして私たちの「三方よし」の循環を誠実に生み出すこと。その積み重ねが結果に繋がっていると考えています。一昨年にはTOKYO PRO Marketへ上場し、直近の売上高は87億円となりました。現在の社員数は約30名ですが、一人ひとりに大きな裁量を与え、主体的に動けるよう環境を整えています。
「働きやすさ」と「やりがい」の両輪で「GPTWランキング」40位に
ーー少人数で成果を出せる要因はどこにあるとお考えですか。
那須剛:
「働きがい」を「働きやすさ」と「やりがい」の2つに分けて定義し、環境を整えています。働きやすさとは、フルフレックス制や出社の自由、充実した福利厚生など、マイナスをゼロにする「衛生要因」です。一方のやりがいは、改善するほどプラスになる「動機付け要因」を指します。弊社では、社員一人ひとりの根本的な関心を重んじています。それぞれの社員が人生を通して本当にやりたいことを見極め、それに合致するような業務をつくり出すことを大切にしているのです。
ーーそうした取り組みは、客観的にどのような評価を受けているのでしょうか。
那須剛:
Great Place To Work® Institute Japan(GPTW Japan)による2025年版「働きがいのある会社」ランキングにおいて、合計700社が参加する中、小規模企業部門で40位に選出されました。特に「尊重」と「公正」という項目で評価をいただきました。弊社では社員を信頼して業務を任せており、細かく行動を管理することはしません。自分の頭で考えて自律的に動ける人が、存分に能力を発揮できる環境を整えています。
地方創生への挑戦 社員の働きがいが新たな事業をつくり出す
ーー今後の事業展開や展望についてお聞かせいただけますか。
那須剛:
弊社では、ミッションに「一人の幸せから、世界を変える。」と掲げているのですが、このミッションのもと、社会に良いインパクトを出していくことです。特定の事業にこだわらずに、培ってきたウェブマーケティングのノウハウを活かし、社員の強みを活かせる多様なビジネスを展開していければと考えています。
直近では、私の出身地である秋田県でバス事業を開始しました。市街地への交通の便に課題を抱える国際教養大学の学生向けに、大学のキャンパスと秋田駅を結ぶシャトルバスを運営しています。
秋田県は少子高齢化による人口減少率が全国で最も高いという課題に直面しています。こうした地域課題に対して、私たちが事業を通じて何らかの貢献ができないかと考えています。まだ何も決まっていませんが、例えば、現地に拠点を設置し、ウェブ領域での仕事を求めて県外へ流出する若者に向け雇用を創出できないかなど、様々な可能性を探り検討していきたいと考えています。やりがいを持って働く人を増やし、地域の活力につながるような取り組みを通じ、地域社会へ恩返しができればと思います。
編集後記
公認会計士、プロキックボクサーという異色の経歴を持つ那須剛氏。一見すると対極にある経験だが、「頑張りがダイレクトに返ってくる」という本質的な共通点を見出している点が興味深い。少数精鋭で上場を果たし、高い売上高を誇る同社。その根底にあるのは「誠実さ」と社員の「根本関心」に向き合う実直な姿勢だ。働きがいを追求し、地方創生という新たなステージへと歩みを進めるインターグの未来が楽しみだ。

那須剛/1985年、秋田市生まれ。慶應義塾大学卒業後、大手監査法人に入所し、公認会計士として上場企業や外資系企業の監査業務に従事。在籍中に始めたキックボクシングに魅了され、監査法人を退所しプロとしてデビュー。引退後の2017年6月、インターグ株式会社を創業し、代表取締役社長に就任。趣味はトライアスロン、読書など。