※本ページ内の情報は2026年7月時点のものです。

環境に優しい抽出・洗浄技術として近年注目を集める「超臨界技術」。水や炭酸ガスを用い、工業材料の製造や食品加工など多様な分野で活用される。この特殊技術を軸に、試験から装置販売、受託製造までを一貫して手がけるのが株式会社アイテックだ。2013年、飲食業界という異業種から「家業」へと飛び込んだ代表取締役社長の飯田大介氏。未知の技術に直面しながらも、前職で培った「チームで動く」力を武器に、同社を率いてきた。独自のビジネスモデルと未来へ向けた事業展望、そして変化を恐れない組織のあり方に迫る。

飲食業界での店舗運営経験が未踏の技術分野で生きる

ーーまずは、貴社に入社した経緯についてお聞かせいただけますか。

飯田大介:
父であり当時の社長からの誘いを受け、当社でのキャリアをスタートしました。私は新卒で大手飲食チェーンに入社し、新規店舗の運営メンバーとしてキャリアをスタートさせています。そこで人の配置や仕入れ、店舗運営の全般を経験しました。当時は家業である弊社を継ぐ明確な意思を持っていたわけではなく、まずは外の世界を見てみようという考えだったのです。しかし、会長からの誘いを受け、新たな道へと進む決意を固めました。

ーー入社後は、どのような業務からスタートされたのでしょうか。

飯田大介:
入社後は、超臨界技術を用いた受託試験業務からスタートしました。お客様の要望に応じて試験条件を検討し、装置運転やデータ取得、結果の整理など、現場での実務経験を重ねながら技術理解を深めていきました。

弊社が扱う「超臨界技術」は極めて特殊で、専門的な知識が求められます。大手の研究部門や大学からの依頼に対し、試験を提案して進めていくのですが、最初は技術の価値も分からない状態でした。その難しさと面白さを現場で学んでいきました。社内には優秀な技術者がそろっており、彼らの力を借りながら好奇心を持って乗り越えてきました。前職の飲食業で学んだ「チームで動く」経験は、個々の技術者が連携する現在の組織運営にも大いに生きています。

試験の成功が信頼を生む お客様の「つくりたい」を叶える技術

ーー貴社の技術についてくわしく教えてください。

飯田大介:
一言で言うと、水や炭酸ガスを特定の温度・圧力に保つことで「特殊な状態」をつくり出す技術です。この状態になると、液体のように物質を溶かす力と、気体のように隅々まで拡散する性質を併せ持つようになります。

この技術の最大の特徴は、極めて環境に優しい点ですね。これまで抽出や洗浄、乾燥などの工程で不可欠だった有機溶媒を、この技術でそっくり代替できるんです。身近な例でいうと、コーヒー豆の旨味を一切損なうことなく、カフェインだけを狙って抽出することができます。

また、最先端の分野では、半導体材料に残る微細な不純物を洗い落とす工程でも活躍しています。とくに炭酸ガスを用いたドライ手法なら、洗浄後の乾燥工程すら不要になります。工程が減ることで大幅なエネルギー削減にもつながるため、脱炭素やサステナビリティといった今の時代のニーズに直結する先進技術として、各方面から熱い視線を集めることができているのです。

ーーその技術を用いて、どのようにお客様の課題を解決しているのですか。

飯田大介:
まず受託試験で最適な条件を見つけ出し、装置の提供へとつなげています。お客様が持つ「新しい素材をつくりたい」「解決したい課題がある」というニーズに対し、温度や圧力を調整して対応します。その試験が成功し、お客様が望む結果を出せたとき、初めて装置の販売へと結びつくのです。単に装置を売るだけではありません。試験の成功を通じてお客様の「つくりたい」を叶え、設計から製造、アフターフォローまで一貫して行うことが強みであり、大きなやりがいです。

事業継続を第一に 客観的視点を取り入れながら「変化」を楽しむ

ーー組織づくりや経営において、大切にされていることは何ですか。

飯田大介:
事業の継続を第一に考えたうえで、変化を前向きに捉える姿勢です。弊社のような中小企業では、一人ひとりの工夫やチャレンジが会社の大きな価値になるのです。そのため、社員には受け身ではなく、当事者意識を持って能動的に動くことを求めており、私自身もそうありたいと考えています。こうした小さな改善をチームで共有し積み重ねることで、組織は強くなっていくと信じているのです。

ーー変化を促すための具体的な取り組みを教えてください。

飯田大介:
毎年、外部の中小企業診断士に会社の診断を依頼しています。自社だけで完結させず、客観的な視点で分析してもらうことで、自分たちでは気づかない課題が見えてくるものです。過去に築き上げてきたノウハウの中で、残すべきものはしっかりと残し、時代に合わせて新たに付け加えるべき部分は恐れずに変化させていきます。そうしたバランスを大切にしながら、組織のアップデートを図っていく方針です。

協力会社との共創と受託製造の拡大で描く次なる成長フェーズ

ーー事業開発についてはどのようにお考えですか。

飯田大介:
大手企業からの「受託製造」の割合を、今後さらに増やしていきたいと考えています。もちろん、これまで通り弊社の装置を導入していただくことも非常に重要です。ただ、大規模な装置となると法規制のハードルもあり、お客様が「今すぐ導入したい」と思っても時間がかかってしまうケースが少なくありません。

そこで活きてくるのが、弊社工場にある大型装置です。お客様の原料をお預かりし、私たちが代わって処理や製造を行う。今、こうした受託製造のニーズが非常に高まっていますので、これを新たな事業の「第二の柱」として力強く育てていくつもりです。

ーー採用や組織の構想はどのようなものでしょうか。

飯田大介:
超臨界技術の専門家や、独自の強みを持つ協力会社と柔軟に連携し、プロジェクトを進める体制を強化していきます。事業拡大に伴って採用に注力していくのは当然ですが、特殊な技術を持つ設計者やエンジニアを、自社だけで多数抱え込むのは現実的ではありません。これからの時代、「すべてを自前で完結させる」という発想は手放すべきでしょう。外部のスペシャリストやパートナー企業と垣根を越えてコラボレーションしていく。そうしたオープンな働き方こそが、今後の成長の鍵になると考えています。

ーー最後に、今後の展望をお話しいただけますか。

飯田大介:
超臨界技術を軸に、循環型社会の実現やCO2活用といったテーマに引き続き貢献していきます。今の技術や現状に留まることなく変化を続け、その変化をお客様への新たな価値へとつなげていく考えです。そして、社員一人ひとりが当事者意識を持ち、チームとして共に成長していける組織をつくり上げていきたいと願っています。

編集後記

異業種から未知の技術分野へ飛び込み、現場での経験を積み重ねてきた飯田氏。技術の奥深さに真摯に向き合う姿勢と、環境配慮型ビジネスとしての超臨界技術のポテンシャルの高さが印象的だった。同社の技術力に慢心せず、第三者の客観的な視点を取り入れ、外部のスペシャリストとも柔軟に協働する。伝統的なノウハウを守りながらも前向きな変化を歓迎する同社は、持続可能な社会の実現に不可欠な存在として、さらなる飛躍を遂げるだろう。

飯田大介/1985年生まれ。2013年に株式会社アイテックへ入社。試験・営業対応を通じて顧客課題に向き合い、事業推進に従事。創業の歩みを再認識し、その理念と技術を継承。2025年に代表取締役社長に就任し、次代に向けた事業成長を推進している。