※本ページ内の情報は2026年7月時点のものです。

株式会社ダスキンで店舗運営や商品開発責任者を務め、主力商品の開発やブランドの業績回復に携わった加藤道信氏。40歳で自らの会社を立ち上げ、現在は株式会社プライムウィル代表取締役社長として複数のフランチャイズ事業を展開する。そして今、同社は第二フェーズへと移行し、食体験にとどまらない新たな事業領域の開拓を見据えている。次世代の経営者を輩出する持株会社化も視野に入れ、事業戦略と人材育成にかける情熱の源泉に迫った。

店舗経営の奥深さに魅了され商品開発の第一線へ

ーーまずは、これまでのご経歴についてお聞かせいただけますか。

加藤道信:
1986年に新卒で株式会社ダスキンに入社し、ミスタードーナツ事業に配属されたことがキャリアの始まりです。そこで1年ほど働く中で、店舗経営にやりがいを見出しました。ミスタードーナツでは、注文を受けてからつくるのではなく、天候や近隣の行事を考慮して事前の品揃えを行います。また、商品の見せ方を工夫したり、従業員の意欲を高めることで、売上高は大きく変化します。自らの決断で結果が左右され、狙い通りにいったときの喜びは格別でしたね。

ーーその後はどのような業務を担いましたか。

加藤道信:
3年ほど店舗運営に携わった後、商品開発部門へ異動し、2002年には同部門の責任者となりました。そこではポン・デ・リングや飲茶商品などの開発を手がけ、その後、一時的に営業部門へ移りましたが、ブランドの売上高が低迷した時期に「V21プロジェクト」が発足し、再び商品開発の責任者として参画することになります。そこでは思い切った店舗デザインの変更やメニューカテゴリーの見直しを断行しました。また、「misdo meets(ミスドミーツ)」(※)や「ミスドごはん」(※)を通した新規のお客様の発掘にも成功し、ブランドのV字回復へとつなげました。

(※)misdo meets(ミスドミーツ):ミスタードーナツが有名ブランドや人気専門店と共同開発を行い、期間限定で販売する大人気シリーズ。これまでに、GODIVAや京都・祇園辻利などとコラボを実施。

(※)ミスドごはん:ミスタードーナツが提供する軽食向けメニュー。パイ、ピザ、ホットドッグ、汁そば、飲茶(ヤムチャ)といった本格的な食事メニューが豊富に揃っており、朝食やランチとして人気を集めている。

40歳で起業 多角化戦略で事業基盤を構築

ーー起業への思いはいつ頃からお持ちになっていたのですか。

加藤道信:
30代前半から経営者への志を抱いており、その後40歳を機に具体的な準備を始めていました。当初は勤めていたミスタードーナツでの独立を考えていましたが、その頃は新規加盟が停止していました。そのため、縁のあった飲食チェーンに加盟し、最初の店舗を開業したのです。当時は私が会社員として多忙だったため、妻を社長として会社を始動させていました。

ーー実際に経営者になられたときのことをお聞かせください。

加藤道信:
2018年に、かねてより望んでいたミスタードーナツの新規加盟が再開されました。加盟の機会を得たことを機に、代表取締役社長に専従することになります。当時の全経営店舗数は10店舗前後で、まずは会社の基盤を固めるべく、事業領域の拡大に注力しました。単一の事業だけでなく、多様な形態のフランチャイズに参入して多角化を進め、その結果、8年間で20店舗以上の拡大につなげました。ここまでが、弊社の第一フェーズだったと捉えています。

新たな理念と「社長塾」 自律的に動ける人材を育成

ーー第二フェーズへ移行したことで、どのような変化がありましたか。

加藤道信:
経営理念を刷新しました。今は「私たちは、感動を与える文化体験や食体験を提供する事で、社会に貢献するベンチャー企業です」と掲げています。あえてベンチャー企業と明記したのは、社員に安定志向に陥ってほしくないからです。常に新たな取り組みに挑戦する会社であるという共通認識を持たせるため、この言葉を選びました。これまでの事業を通じて、組織力と人材を集める基盤を培ってきました。この基盤を活用し、今後は新しい体験価値を提供する独自の事業にも取り組んでいきたいと思います。

ーー今後の展望についてお聞かせいただけますか。

加藤道信:
2030年までに売上高60億円を達成する目標を策定しました。そのうち10億円は独自事業で創出します。さらに、組織を持株会社体制へと移行させます。グループ会社を設立し、そこで数々の社長を誕生させ、育成していく組織にしたいのです。そこには、私自身が経験してきた経営の面白さを、社員にも経験してほしいという強い思いがあります。

ーー目標達成のために社内ではどのような取り組みをしていますか。

加藤道信:
独自事業の開発と新規FC事業の参入を加速させています。現在は事業責任者を社員からの挙手制で募ったり、幹部候補に向けては「社長塾」を展開しています。個人の目標を明確にし、良き習慣を身につけるための学びの場です。すでに独自事業として、訪日外国人向けの日本文化体験事業を開始しており、これまでの事業経営で培った人材や資金を活用した新たな展開が形になりつつあります。

ーー最後に、これから貴社へ入社される方に向けたメッセージをお願いします。

加藤道信:
弊社は、社員一人ひとりが自己実現を果たせる会社として成長し続けます。子会社の社長を目指す人もいれば、専門的な技能を極めたい人、ワークライフバランスの充実を求める人もいます。そうした多様な自己実現を、会社として全力で応援します。しかし、漠然と「独立の勉強をしたい」と入社する方は長続きしない傾向にあります。まずは店舗に入り、店長や管理職を目指して目の前の仕事に真剣に取り組んでみてください。その過程で、必ず自分が本当にやりたいことが見えてくるはずです。その先に明確な目標が見つかったのなら、私たちは全力でその挑戦を支援します。

編集後記

加藤道信氏へのインタビューを通じて、食体験にとどまらず文化体験を提供するという新たな理念への強い思いを感じた。持株会社化を見据え「社長塾」で次世代の経営者を育成する同社の飽くなき挑戦はこれからも続くことだろう。自律的に動ける人材を育て、一人ひとりの自己実現を全力で支援する株式会社プライムウィルの未来が広がっていると感じた。同社の今後の飛躍が楽しみだ。

加藤道信/1962年、大阪府茨木市生まれ。摂南大学卒業後、1986年、株式会社ダスキンに入社。同年、ミスタードーナツ事業本部配属。現場勤務を経て、主に商品開発部門で勤務し、商品開発部責任者に就任。その後、ポン・デ・リングや飲茶商品の開発を担当する。2003年に株式会社プライムウィル創業。2018年、代表取締役社長に就任。