※本ページ内の情報は2026年7月時点のものです。

「持続可能な社会」という言葉が定着する遥か前から、独自の視点で環境・社会課題と向き合ってきたアミタ株式会社。アミタグループとして1979年に廃棄物の100%再資源化事業開始以来、一貫して「発展すればするほど自然資本と人間関係資本が増加する持続可能社会の実現」をミッションに掲げてきた。現在は企業のサステナビリティ経営への移行戦略支援や、地域における互助共助コミュニティの創出などを通じ、循環を基軸とした社会デザイン事業を手掛ける。同社を牽引する代表取締役社長の宮原伸朗氏は、新卒合流(※)以来、一貫して現場で汗をかく「Doタンカー」としての姿勢を貫いてきた。また、今年は企業の経営幹部向けに、サステナビリティ経営を支援する新サービス「SEA(Sustainable Executive Alliance)」を新たに立ち上げた。その背景や、企業と地域社会が統合する2030年の未来図について紐解く。

(※)アミタでは「ミッションに共感し、同じ一点を目指して進んでいく」という意味を込めて、入社を「合流」と呼んでいる。

現場で汗をかく「Doタンカー」への共鳴

ーーまずは貴社に合流されたきっかけを教えていただけますでしょうか。

宮原伸朗:
大学時代から環境問題に関心があり、世の中の役に立つ仕事がしたいと考えていました。理学部の分析化学専攻で環境に関する学びを深める中、就職活動では一般的なメーカーの環境部門も検討しました。しかし多くの企業では、配属までに営業や開発の経験が必須。すぐに環境の仕事を通じて社会貢献したい私にとって、歯痒さを感じる状況でした。

そのような葛藤の中で出会ったのがアミタです。当時は環境問題が現在ほど社会の関心を集めていなかった時代でした。そんな中で、同社は廃棄物の100%再資源化や地域の自然を活用する事業に取り組んでいました。そして「我々は環境業をやります」と明確に宣言していたのです。

ーーどのような言葉や企業姿勢に心を動かされましたか。

宮原伸朗:
弊グループ創業者で現会長である熊野が発した「我々はシンクタンクではなく Doタンクだ」という言葉です。机上でレポートをまとめるだけの支援ではなく、顧客や地域の方々と現場で汗を流し、共に歩みながら社会を変革していくというものです。その実践的な姿勢に深く共鳴し、合流を決意しました。現在もその思いは自身の根底にあります。何よりも現場での対話と行動を大切にしています。

学びを実践に変える経営層向けの新サービス「SEA」の挑戦

ーー新サービス「SEA」の概要と立ち上げの背景を教えてください。

宮原伸朗:
「SEA」は持続可能な経営を目指す企業のためのOS、いわば「企業の脳」を未来視点で構築・実装するサービスです。

私たちは日頃から企業向けのサステナビリティ経営支援を提供しており、その中で、経営者の間でも企業は今後どうあるべきか、どのように経営判断すべきか等への関心や課題意識が高まっていることを感じていました。

そうした背景から昨年、有識者を招いた経営者向けセミナーを開催しました。内容はこれからの新たな経営の秩序や社会構造の変化を議論するもので、参加された経営者の方々からも多くの示唆があったという声をいただきました。一方で、「得られた知見を自社の事業にどう反映させるかが難しい」という声も寄せられました。単なるインプットで終わらせず、自社の事業計画に落とし込み、実践へつなげる仕組みが必要だと感じ、「SEA」の立ち上げに至りました。

ーー具体的にはどのようなプログラムを用意しているのでしょうか。

宮原伸朗:
大きく3つの軸で構成しています。

1つ目は「羅針盤フォーラム」の定期開催です。時代を牽引する有識者を招き、経営の羅針盤となる時代認識や経営哲学を獲得するとともに、同じ志をもつ経営者同士で議論を深めます。

2つ目は経営幹部専用の対話型AIの提供です。アミタのサステナビリティ専門知識や国内外の最新公的情報を事前にインストールした上で、30項目以上のヒアリング内容に基づく各社の固有の情報も読み込ませることで、サステナビリティ経営に資する回答を引き出します。経営者の思いや価値観、原則等を構造化し、経営戦略を練る際のぶれない意志決定を支援します。

そして3つ目は、弊社が独自開発した未来価値創造フレームワーク「MEGURU Capital Model」の初期診断レポートの提供です。企業活動による社会へのインパクトが自社の資本にどう還流するかを可視化し、持続可能な事業の設計図を共につくり上げます。

これらを通じて、経営の意志を構造化し、未来起点で変革に挑む経営者の皆様と共に、事業構想の実現に向けて伴走します。

企業と地域が循環する 2030年に向けた「社会デザイン事業」の展望

ーー貴社が目指す中長期的な展望について教えてください。

宮原伸朗:
現在、自治体や地域住民と共につくる持続可能な地域運営モデルの開発を進めています。企業向けの経営支援と並行して、地域内の資源循環と互助・共助のコミュニティ創出を促す「MEGURU STATION®」の実証実験を全国各地で重ねています。私たちは、2030年までに両者の取り組みを統合し、企業と地域が相互に価値を循環させる仕組みの実装を「社会デザイン事業」として進めています。

ーー両者が統合されることで社会にどのような変化が生まれるとお考えですか。

宮原伸朗:
地域の拠点において、「顔の見える関係性」の中で資源を回収することにより、高い精度で分別された良質な再生資源が企業へ供給されます。同時に、各拠点で集まる資源を分析すると、「地域内でどのようなものがどれくらい利用されているか」という生活に密着した消費データが蓄積されます。この情報を企業や行政に提供することで、地域社会から真に求められる高付加価値な商品やサービスを展開できるようになり、過剰な生産や広告費が削減されます。これが大量生産・廃棄からの脱却を可能にするのです。

企業と地域社会が相互に資源や情報を提供し合い、豊かに循環していく。これは現場の課題を一つひとつ『希望』へと変換してきた、半世紀にわたるアミタグループの歩みの先に描く景色です。これを2030年に向けて確実に形にしていきます。

編集後記

「シンクタンク」ではなく「Doタンク」。宮原氏が語った言葉には、アミタという企業のDNAが凝縮されている。単なる理念の提唱にとどまらず、自ら現場に入り込み、泥臭く仕組みをつくり上げる。その試行錯誤の経験があるからこそ、新サービス「SEA」は机上の空論に陥らない。経営者が真に求める実践的な内容に仕上がっている。企業と地域社会が統合されるという2030年のビジョンは壮大だ。しかし同社の「Doタンカー」としての確かな歩みを見れば、実現可能な未来であると確信させられる。

宮原伸朗/2007年にアミタ株式会社に合流し、企業向けコンサルティング、経営企画、新規事業開発を経て、サーキュラーエコノミー推進コンソーシアム(J-CEP)事務局を担当。2023年、内閣府SIP第3期にて自治体回収プラスチック分別・供給の研究開発責任者を務める。2026年1月より代表取締役社長に就任し、同年3月からはアミタホールディングス株式会社の取締役兼CBO(最高事業責任者)を務める。