※本ページ内の情報は2026年7月時点のものです。

義父の借金を返済するため、20代前半で起業の道を選んだ藤勝行氏。その後、法人化して事業を拡大するも、震災などの影響を受け29歳で倒産と自己破産を経験する。後に株式会社エックスラボを創業し、初年度から数億円規模の売上高を達成するが、今度は大病を患う。度重なる試練は、藤氏の事業に対する姿勢をいかに変化させたのか。現在はデジタルマーケティングと、セミナー運営や個別商談獲得を担う独自の自動化ツール「ウェビナーベース」を展開し、緻密なルールに基づく組織づくりを進める同氏に、これまでの軌跡とAI時代を見据えた展望を聞く。

「どんな商品でも買ったる」倒産時の涙と経営の原点

ーーまずは、起業の経緯からお聞かせいただけますか。

藤勝行:
養父が背負った約1500万円の借金を、私が全額返済すると決意したことが起業の背景です。実は、初めから経営者になりたくて起業したわけではありません。当時、養父が交通事故を起こし、多額の借金を抱えてしまったのです。当時、養父には借金を全て返済できるだけの余裕はありませんでした。そこで、それまで育ててもらった恩を返すためにも、私自身が返済することを決め、22歳で独立を決意したのです。初めは大手通信会社の代理店としてスタートし、その後はウェブ制作やシステム開発にも事業を広げ、24歳で法人化しました。

ーーその後、会社は順調に成長していったのですか。

藤勝行:
事業を拡大したものの29歳のときに大きな壁にぶつかり、結果的に倒産と自己破産を余儀なくされました。当時は若さと勢いに任せた経営をしていましたが、東日本大震災の影響なども重なり、事業の継続が困難になってしまったのです。倒産処理の過程では、周囲から厳しい言葉をかけられたり、過去の失敗を追及されたりする日々が続き、精神的にもかなり追い詰められていました。

ーーその厳しい状態から、どのようにして立ち直ったのでしょうか。

藤勝行:
かつてのお客様からの、温かい応援の言葉が立ち直るきっかけでした。あるとき、以前のお客様から電話がかかってきて、「倒産したと聞いて驚いた。君には世話になったし、また必ず商売を立ち上げるだろう。どんな商品を扱うかわからないけれど、また始めたら何でも買ったるから」と言ってくださったのです。誰からもそんな言葉をかけられなかった状況だったので、嗚咽するほど号泣しました。

一方で、納品手前で倒産してしまい、一部のお客様にはサービスを提供できず、大変なご迷惑をおかけしてしまった事実もあります。だからこそ、助けてくださった方々への「義理、人情、恩」は絶対に忘れてはいけないと考えています。この経験が、現在の会社の「Be Integrity.(真摯さ、誠実さ。) 」というバリューの根本です。

個人の力に頼る経営から「組織化」へ

ーーその後、貴社を創業されてからの歩みを教えていただけますか。

藤勝行:
創業当初は個人の力で売上高をつくっていましたが、組織化へと舵を切りました。創業1年目で2.5億円、2年目で5億円を私一人で売り上げました。誰よりも働き、個人の力で強引に事業を推し進めていたのです。しかし、創業から3、4年経った頃、死を意識するほどの大病を患いました。幸いにも治療を経て現在は完治していますが、当時は「このまま自分一人に依存する体制ではいけない」「やり残したことはないか」と真剣に自問自答しました。それを機に、会社を持続成長すべく本格的に「組織化」していく方向へと変化したのです。

ーー組織づくりにおいて、具体的にどのようなことに取り組まれたのですか。

藤勝行:
数千ページに及ぶ研修資料をつくり、毎週評価制度を改定するなど、極めて緻密なルールを設計しました。ルールを細かく決めるのは、社員を縛るためではありません。明確な基準がないと、問題が起きたときに「誰が悪いのか」という対人攻撃になりがちです。ルールがあれば、「このルールがおかしいのではないか」と全員で客観的に議論ができます。私にとって社内のルールは、社員を安全に導くための「ガードレール」なのです。

24時間自動稼働の「ウェビナーベース」とAI時代の生存戦略

ーー改めて、現在の事業内容とその強みについて教えてください。

藤勝行:
デジタルマーケティング事業と、セミナー集客から商談獲得までのフローを自動化する独自のツール「ウェビナーベース」の2つが事業の柱です。1つは祖業であるデジタルマーケティング事業です。私たちは企業のマーケティング部門として、ホームページ制作から広告運用、コンサルティングまで一気通貫で支援できる強みを持っています。

もう1つが、現在注力している「ウェビナーベース」を用いた事業です。「ウェビナーベース」とは録画したセミナーの自動再生から、アンケートの回収、個別商談の獲得までをすべて自動で行うシステムで、集客代行とあわせてセミナーやウェビナーにまつわる一連の流れを一気通貫で支援できる、他社にはない仕組みです。最初の設定さえ行えば、あとは自動でシステムが顧客を追いかけ、商談を設定してくれます。人手をかけずに質の高い見込み客を獲得できるため、人材不足に悩む多くの企業にとって有効な解決策になると確信しています。

ーーAIやDXの活用についてはどのようにお考えですか。

藤勝行:
これからの知的労働の分野は、「人手不足」ではなく「人余り」の時代が来ると予測し、AIを積極的に活用しています。AIの進化によって、従来の代行業務などの価値は下がっていくと考えているのです。だからこそ、機械やAIができることは徹底的に任せて無駄を省きます。そして生まれた時間を、人間が介在すべきより創造的な仕事や、お客様の感情に寄り添う業務に集中させる。それが、クライアントに価値を提供し続けるための方針です。

単なる集客支援にとどまらない「行動変容のプラットフォーマー」へ

ーー今後の展望を教えてください。

藤勝行:
単なる集客支援にとどまらず、社会が進化するための「行動変容のプラットフォーマー」としての立場を確立することです。広告にしてもセミナーにしても、本質は「人の行動変容のきっかけづくり」だと捉えています。何かを学びたい、課題を解決したいという意欲に対して最適な情報を提供し、次の行動へと促す。私たちは、そのような行動変容の機会を提供するプラットフォーマーを目指しています。

ーー具体的な目標数値は掲げられていますか。

藤勝行:
将来的に株式公開(IPO)を目指し、長期的には売上高100億円規模の企業へと成長させる目標を持っています。そのためには、私たちの文化を理解しつつ、共に事業を進化させてくれる優秀な幹部候補の力が必要です。常に現状に満足せず、より強い組織づくりを目指して挑戦を続けていきます。

編集後記

壮絶な過去を乗り越えてきた藤氏の言葉には、確かな重みがあった。過酷な経験から導き出された「義理人情」の精神と、属人性を排除した「緻密なルール化」は、一見相反するように思えて見事に社内で共存している。知的労働者の「人余り」時代を予見し、AI技術をいち早く取り入れる先見性も、幾多の危機を生き抜いてきた証だろう。同社が今後どのような新しい景色を見せてくれるのか、さらなる飛躍に期待が高まる。

藤勝行/1982年大阪市出身、関西外国語大学短期大学部卒。22歳で独立、24歳で法人化するも29歳で倒産。窮地に立つが、前職からの義理を通すために再起業を決意。2012年、30歳で株式会社エックスラボを設立。「私たちの商品は『結果』」を掲げ事業拡大、年商20億円規模へと成長。グループ再編を行い、現在はデジタルマーケティング支援を主軸に、自社SaaS「WebinarBase」によるセミナーDX®を推進中。