
将来の独立を見据えて職人から営業職へと飛び込んだ谷口伸一氏。現在は株式会社スカイズを率い、法人向け通信事業とペットサロン事業を展開している。創業期の厳しい時期から、通信業界の波に乗って事業を急拡大。商材の転換期に直面した組織の危機を、強固な分業制と価値観の統一で乗り越えてきた。営業は、根性論ではなく「顧客心理を読むものである」と分析し、「仕事とは課題解決である」と語る同氏に、事業への向き合い方と今後の展望に迫った。
職人から営業へ 独立を見据えた20代の決断
ーーまずは、これまでのご経歴を教えていただけますか。
谷口伸一:
私は、父親が商売をしていた影響もあり、「32歳までに独立する」と心に決めていました。学生時代はハンドボールで全国ベスト8になるなど、体力には自信がありました。そのため、卒業後は施工店の職人になって床暖房や給湯器の設置で朝から晩まで働いていました。しかし、独立して自分で事業をするには、営業力が必要だと感じ、投資系企業の営業職へと飛び込んだのです。
ーー職人から営業に転身された際には、どのような苦労がありましたか。
谷口伸一:
根性論から脱却することに苦労しました。転職当初は職人時代の名残もあり、誰よりも遅くまで残り、ひたすら電話をかけるという「量」に頼る毎日でした。しかし、当時の上司から「営業は頭を使い、短時間で結果を出すのが良い仕事だ」と教わったのです。それ以降、お客様の心理や受け答えを論理的に考え、意図を持った営業を行うようになりました。お客様が納得して契約できる手法を身につけた結果、2年ほどで支店長を任されるまでになりました。
通信業界の波と仲間と乗り越えた創業期

ーーその後、どのような経緯で独立に至ったのですか。
谷口伸一:
通信業界の成長性に勝機を見出し、31歳で独立しました。ちょうど光ファイバーが全国に普及し始めた時代の通信事業です。そこで当時の仲間4人とともに、現在のスカイズの前身となる事業をスタートさせました。
ーー創業当初から事業は順調に進んでいたのでしょうか。
谷口伸一:
半年ほどで資金が尽きかけるなど、非常に厳しい時期がありました。通信事業は契約から入金までに数ヶ月の期間を要するためです。当時は小さなビルの一室を事務所とし、生活費を極限まで切り詰めていました。少しでも成績が上がれば、スーパーの特売品を仲間と囲んで喜んでいましたね。朝から晩まで必死に働き、その後インターネット回線切り替えの波に乗ることで、一気に事業を拡大させることができました。
組織の危機を救った「共通の価値観」と「分業制」
ーー順調に事業を拡大する一方で、新たな壁はありましたか。
谷口伸一:
法人向け商材への転換期に、人材の離脱と業績低迷という組織の危機に直面しました。創業から数年後、個人向けの回線切り替えから法人向けへシフトする必要が生じました。しかし、個人と法人では営業のアプローチや稼働時間が全く異なります。この移行期間に対応できず業績が落ち込み、会社を離れるメンバーが出てしまったのです。
ーーその危機を、どのように乗り越えたのですか。
谷口伸一:
「共通の認識」「共通の価値観」「共通の言語」の3つを、全社で徹底的にすり合わせることにしました。社員の方向性が異なると組織は脆くなります。これらをずらさないように話し合った結果、社内の問題が減少していったのです。また、私自身も「仕事とは問題解決である」と定義づけたことで意識が変わりました。「給与を上げたい」「意思疎通を円滑にしたい」といった課題に対し、どう解決策を導くか。その回数と質を高めることこそが私の役割だと腹落ちしたのです。
ーー貴社の営業組織としての最大の強みは何でしょうか。
谷口伸一:
「完全分業制」を敷いている点です。1件の契約に対し、アポインター、スーパーバイザー(SV)、クローザー、営業事務の4名体制で対応します。各工程で目標数値が細かく設定されており、稼働時間に対する獲得件数や、次工程への通過率などを徹底して管理しています。一人の営業担当者がアポイントからクロージングまで全ての工程を担うと、どうしても得意・不得意により成果にムラが生じてしまいます。しかし、各セクションに特化したプロフェッショナルとして役割を分担することで、一人の属人的な能力に依存することなく、組織全体で高い生産性を維持できるのです。互いの専門性をリスペクトし合うこの仕組みと文化こそが、成果を生み出し続ける理由です。
次世代リーダーの育成と「年商10億円」への挑戦
ーー現在、特に注力している取り組みについて教えていただけますか。
谷口伸一:
実績を出したアルバイトのメンバーを社員に登用し、早期に戦力化する仕組みづくりを進めています。また、次世代の経営幹部を育成するため「商材担当制」を導入しました。各メンバーに特定の商材を任せ、売上高拡大の方法や課題を中長期的な視点で分析してもらいます。現場の意見を積極的に取り入れ、自ら思考し行動できる人材を育てることが狙いです。
ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。
谷口伸一:
「組織100名、年商10億円」の達成を目指しています。通信事業では、年内に自社の光回線サービスを立ち上げる予定です。同時に、Web会議ツールなどを活用して商談を効率化し、全国のお客様へアプローチを広げていきます。また、連日満員となっているペットサロン事業も、現在の2店舗から計5店舗へと拡大させる計画です。新規サービスの開発と人材育成を両輪で進め、目標達成に向けて邁進します。
編集後記
職人からスタートし、独自の営業手法を確立してきた谷口氏。「仕事とは問題解決である」という本質的な言葉には、幾多の困難を乗り越えてきた経験の重みが宿る。属人性を排除した完全分業制や、次世代リーダーの育成に注力する姿勢からは、永続的に成長する組織をつくろうとする覚悟がうかがえた。通信事業とペットサロンという多角的な事業展開を進める同社が、今後どのような飛躍を遂げるのか、引き続き注目したい。

谷口伸一/1976年大阪府生まれ、京都産業大学卒。7年間の営業経験を経て2009年に株式会社スカイズを設立し代表取締役社長に就任。