
公式アプリ開発基盤「ModuleApps2.0」、最先端ツールを扱う「グロースマーケティング」。そして第3の柱である「リテールメディアプラットフォーム」。これら3本の柱で企業のDX支援を推進するのが株式会社DearOneだ。代表取締役社長の河野恭久氏は20代でスタートアップの最前線に立ち、東証一部(当時)への上場を経験した。「WOW(驚き)を創る」という理念の裏には、「すべての物事の前に人間対人間がある」という哲学があった。市場変革に挑む同社の強みと、“社会の黒子”として浸透していく未来へのビジョンに迫る。
26歳での支店長抜擢と「人が会社を爆発的に成長させる」という原体験
ーー若手時代はどのようなキャリアを歩まれたのですか。
河野恭久:
新卒で人材ビジネスのスタートアップに入社しました。当時はまだ数支店しかない創業期でしたが、そこから東証一部へ上場するまでの過程を経験しています。猛烈に働く日々の中で、自分が動くことで事業が拡大していく面白さにのめり込んでいきました。
その後、26歳で支店長に抜擢され、支店の責任者としてPL(損益計算書)を管理していました。若いうちから売上だけでなく、利益や販管費のバランスなど財務指標の全体構成を学ぶことができたのです。経営者として必要な感覚は、この過程で培われたと考えています。
ーー組織を牽引される中で、ご自身のターニングポイントとなった出来事はありましたか。
河野恭久:
前職での経験を経た後、現在の会社(DearOne)で親会社から出向で来てくれた方の提案を受け、「人事部」を新設したことです。以前の私はとにかく売上を上げることに必死で、営業組織こそが最重要だと考えていました。自分の頭の中には人事部という発想すらなく、間接部門はむしろコストだと思い込んでいたのです。
しかし、「会社をより伸ばすためには、人を採用する時間が必要だ」という提案を受け入れ、プロの人事マネージャーを採用して人事部を立ち上げました。採用活動を専門部署に任せて本格化させたことで、候補者の母数も増え、そこから会社が劇的に成長したのです。
私はかつて、創業社長から「人間を大事にする」「人心掌握」の精神を教わっていましたが、この経験を通じてその言葉の真意を痛感しました。間接部門が会社成長のドライバーになることを身をもって知ったのです。サービスをつくるのも伸ばすのも、結局は人間です。すべての物事の前に「人間対人間」があり、会社を成長させる真のドライバーは「人」なのだと確信した、まさに私にとって大きなターニングポイントでした。
誠実さとチーム力で期待を超える「WOW」を生み出す

ーー経営理念の「WOWを創る」には、どのような思いが込められていますか。
河野恭久:
相手の期待を超える成果を、愚直に追い求めようという思いです。私は昔から、相手の期待を超えて「驚かせたい」「感動させたい」という気持ちの強い人間でした。仕事の世界で人を驚かせるには、確かな成果を出すしかありません。この「WOWを創る」という精神は、今では弊社の組織文化として定着しています。
ーー他社との違いや、組織としての強みは何ですか。
河野恭久:
私たちの強みは、会社に深く根付いている2つの「独自のDNA」にあると考えています。一つは「チーム力と巻き込み力」です。どんなに優秀な人材であっても一人で出せるパフォーマンスには限りがあるため、「一人では限界がある」という前提に立ってチームプレイを徹底してきました。周囲を巻き込み仲間を集めることで、何倍もの力を発揮できるというわけです。
もう一つは「利他精神と誠実さ」です。「他人に迷惑をかけない」「人を騙すような悪意のある嘘は絶対につかない」といった価値観を、私は何よりも大切にしてきました。これが会社のDNAとして定着し、顧客に対しても利己的な考えを持たず、相手の役に立つことを第一に行動しています。だからこそ「この会社と付き合って損はない」と評価していただけるのでしょう。凝り固まったルールを持たず、人間が抱える「負」の要素からビジネスチャンスを見出していく柔軟な思考も、こうした誠実な基盤の上に成り立っているのです。
「ARUTANA」が日本の小売全体をつなぐ 新たなリテールメディアの幕開け
ーー現在、新たに注力されている事業について教えてください。
河野恭久:
新規事業として展開している、リテールメディアプラットフォーム「ARUTANA」です。日本の小売企業全体が「横断的にタッグを組む」広告プラットフォームを構築するために立ち上げました。アメリカではリテールメディアが巨大市場として成功していますが、それは大規模な小売企業が存在するからです。
一方、日本の小売市場は分散しています。単なる販促費ではなく、メーカーが持つ莫大な「広告宣伝費」を獲得していくには、一つの小売店では規模が足りません。そこで小売全体をつなぎ、メーカーと小売の双方へアプローチする両面営業を展開しようと考えたのが、この「ARUTANA」なのです。
ーー実際の反響や手応えをどのように感じていらっしゃいますか。
河野恭久:
明確に成果が出ている実感があります。通常、広告の初年度のリピート率は10%以下といわれますが、「ARUTANA」は具体の数字は言えませんが平均の数倍以上であり、出稿金額も加速度的に伸びています。これは「ARUTANAで広告を出すと実際にモノが売れる」という高い購買効果の証明です。ユーザーがお店のアプリを開いた瞬間に、目の前の棚にある商品の広告を提示できます。この環境と直結した仕組みが、弊社の大きな強みです。
「他責にしない」マインドで社会に溶け込む黒子を目指す
ーー今後の会社のビジョンや、社会においてどのような存在でありたいとお考えですか。
河野恭久:
事業としては、直近の3年から5年で引き続き連続して増収を目指し、利益もしっかりと確保しながら会社を現在の3倍程度の規模へとスケールさせていく目標を掲げています。そして10年後も、社会に対して「AIを活用した弊社らしい驚き(WOW)」を提供し続けたいという思いは変わりません。ただ、私たちが前面に出るのではなく、あくまで社会を支える「黒子」として浸透している姿が理想です。
たとえば、弊社が開発を支援した大手小売企業様のアプリには「在庫連動機能」が搭載されており、多くのユーザーの日常にすっかり溶け込んでいます。このように、自分たちの生み出した仕組みが社会の裏側で役立つ状態を、これからも絶えず創出していくつもりです。
ーー最後に、求める人物像とこれから貴社に入社される方へメッセージをお願いします。
河野恭久:
一番求めているのは、「他責にしない(自分事化できる)」マインドを持った方です。課題が生じたとき、他人のせいにするのではなく、「自分がどう関与できたか」を真っ先に考えられる人は大きく成長していくでしょう。「自分の部署でどう解決すべきか」と考えられる姿勢は、周囲からの厚い信頼にもつながるはずです。
弊社には、自ら手を挙げれば挑戦できる圧倒的なチャンス、つまり「打席」が常に用意されています。当事者意識を持ち、私たちと一緒に世の中を驚かせる「WOW」をつくり出したいという方の挑戦を、心からお待ちしています。
編集後記
「すべての物事の前に、人間対人間がある」。この河野氏の言葉には、デジタル化が進む現代でも変わることのない、ビジネスの真髄が込められている。自らの足で稼いだ知見と、徹底した誠実さ。そして、常識を疑い、柔軟な発想で市場の「負」から好機を見出す姿勢だ。日本企業のDXを裏側から支え、リテールメディアという新市場を切り拓く株式会社DearOne。彼らが次にどのような「WOW」で私たちを驚かせてくれるのか。その飛躍に期待が膨らむ。

河野恭久/人材ビジネススタートアップで営業や経営企画に携わり東証への上場を果たす。2011年に株式会社DearOneを共同創業し、スマホアプリ開発サービス「ModuleApps」を立ち上げ、2015年1月より現職。アプリ事業を軌道に乗せ、第2の柱としてグロースマーケティング事業を展開。最先端の海外MarTechツールを啓蒙し、現在は日本国内のリテールメディア変革に向け新規事業に邁進中。モットーは「WOWを創る」。