※本ページ内の情報は2026年8月時点のものです。

飲食・アパレル物販店などの商業施設や一般住宅の施工を手がける株式会社成美。同社は、一人の担当者が発注から積算、引き渡しまでを単独で完遂する独自の体制を強みとしており、その安心感と高品質な施工によって大手企業から継続的な依頼を受けている。同社の代表取締役である青山太郎氏は、自らも現場の最前線で経験を積んだ後、2014年に社長へ就任した。デジタル化が進む現代においても、人の手が介在する仕事の価値を重んじ、社員の資格取得を支援するなど働きやすい環境整備に注力している。創業時から続く透明性の高い社風を守りつつ、同業他社の一歩先を行く組織づくりに挑む青山氏に、これまでの歩みと未来への展望を聞いた。

現場から経営へ 透明性の高い評価制度で組織をアップデート

ーーまずは、貴社に入社された経緯を教えてください。

青山太郎:
大学の理工学部を卒業後、グラウンド施工の会社に3ヶ月ほど勤めた後、弊社へ入社しました。当時は売上が10億円未満、かつ従業員数も20数名ほどの規模でした。「大学を出て、このような小さな会社に入ってよいものか」と葛藤もありましたが、実際に働き始めてみると、非常にアットホームで風通しの良い環境だと感じましたね。入社後、まずは現場の施工担当としてキャリアをスタートしました。

弊社には創業者から続く「みんなで稼いだ利益は、自分だけが取るのではなくみんなで分け合おう」という精神が根付いています。中小企業でありながら、歴代の社長はお金に関して非常にきれいで、財務の透明性を大切にしてきました。このような「みんなの会社」という意識は、現在の私にもしっかりと受け継がれています。先代たちが築き上げた思いを胸に、「社員がいてくれるからこそ、自分が社長でいられる」と日々感謝しながら経営に取り組んでいるところです。

ーー入社後はどのようにキャリアを積まれたのですか。

青山太郎:
入社当初は役職などもなく、先輩と一緒に現場で仕事を覚えていくような環境でした。その後、会社が積極的に採用を行って組織が拡大していく中で、私自身も現場で経験を積み重ね、2004年頃に役員として経営陣に加わったのです。

経営に携わるようになって数年後に着手したのが、給与体系や評価制度の見直しでした。以前は、気に入られた社員が評価されやすいという属人的な側面が少なからず存在していました。しかし、現場でお客様のために真面目に努力している社員が、正当に報われなければなりません。そのため、目に見えないがんばりもしっかりと評価できる、誰もが納得できるシステマチックな制度へと改革を進めました。浸透するまでには時間を要しましたが、15年ほど継続して取り組み、現在では社員が納得して働ける環境が整っています。

「一貫体制」と「自社での現場コントロール」が大手から選ばれる理由

ーー改めて、現在の事業内容と貴社ならではの強みを教えてください。

青山太郎:
弊社は飲食・アパレル物販店などの商業施設や一般住宅の施工を主軸としています。最大の強みは、一人の担当者が業務を一貫して完遂できる体制です。分業制をとる企業が多い中で、弊社は発注から積算、引き渡しまでを単独で担当しており、入社後5年から10年をかけて、すべての工程を一人で管理できるよう育成しています。

ーーその体制はお客様にとってどのような利点がありますか。

青山太郎:
「この担当者に任せればすべて完結する」という安心感を提供できることです。複数担当者間の連絡で生じるストレスがありません。また、自社で直接大工や長年付き合いのある協力業者を管理しているため、適正なコストを保ちながら、工期と品質を厳格に守ることができます。この実績が、企業様からの継続的なご依頼につながっています。

現場の誇りと次世代を見据えた環境整備

ーー今後、会社を牽引していく人材としてどのような方を求めますか。

青山太郎:
「周囲を見渡し、他者の痛みを想像できる人。物事を俯瞰的に捉える事ができる人。」を求めています。突出した能力よりも、真面目に取り組み、周囲の状況に応じて自己の軌道修正ができることが重要です。新卒や中途を問わずこうした素養を持つ人材を採用し、次世代のリーダーへ育成したいと考えています。

ーー社員の育成や環境整備に関して新たに取り組んでいることはありますか。

青山太郎:
昨今AIなどが注目される時代ですが、社員のコンピュータ環境などを他社と遜色なく使えるように整備を進めています。弊社が担う建築関係の仕事は、どれだけ技術が進歩しDXが進んでも、最終的には人が介在する必要があり、リモートワークでは完結しない「エッセンシャルワーク」だと捉えています。だからこそ、専門的な知識を身につけ、さらに業務の質を高めていく必要があります。

そのため、弊社では社員全員に対して資格取得を積極的に推奨しています。現在の業務に直結する1級施工管理技士や建築士はもちろん、今後を見据えたDX関連の資格など、さまざまな資格取得にかかる費用を全額または一部補助する形でサポートし、リスキリングを応援しています。

ーー資格取得の支援を通じて、社員にどのような期待を寄せていますか。

青山太郎:
さまざまな資格を取得して知識を身につけることが、これまでとは違う新しい仕事のやり方を見つけ出す一助になればと思います。弊社は小さな会社ではありますが、将来へ向けて社内環境や待遇面を含め、同業他社の一歩も二歩も先を歩みたいと考えているのです。人間が手掛けるべき大切な部分をしっかりと押さえつつ、新しい技術をどう取り入れるかを見極め、会社全体で社員の成長をサポートできる環境をさらに整えていく方針です。

ーー最後に、今後の会社の展望をお聞かせください。

青山太郎:
先輩方が築いてきたこの会社を、さらにバージョンアップさせ次の世代へ確実に引き継ぐことが私の最大の使命です。これからの時代に業界の構造がどう変わるかは見えません。外部企業との資本提携という選択肢もあるかもしれません。しかし私たちはあくまで「自分たちの足で立っていける会社」でありたいと考えています。ニッチな領域であっても、お客様と真っ直ぐに向き合って仕事をしていきたいのです。これからは会社全体で社員を支えながら、最高の顧客満足度を追求できる組織にしていきます。

編集後記

創業期から受け継がれる利益還元の精神と、社員への深い感謝の念が言葉の端々から感じられた。デジタル化が進む現代においても「人の手が介在する仕事の価値」を信じ、他者の痛みがわかる人材を育てようとする温かな視点も非常に印象深い。独自の「一貫体制」を武器に、顧客と真っ直ぐに向き合いながら着実な歩みを進める同社の未来に、今後も期待したい。

青山太郎/1965年、大阪府生まれ、近畿大学理工学部卒業。1987年4月、グラウンドなどを施工する会社に就職するも3ヶ月で退社。同年7月、株式会社成美の前身、成美工芸株式会社に入社。2014年6月、同社代表取締役社長に就任。