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1959年の創業以来、埼玉県を中心に家電販売店として成長を続けてきた株式会社大宮電化。バブル崩壊による経営危機を乗り越え、1999年にはリユース事業「ハードオフ」のフランチャイズへ大転換を遂げた。現在は63店舗を展開し、売上高の96%強を同事業が占めるまでに成長している。2010年、前社長である実父が倒れたことを機に、銀行員から未経験で家業へ飛び込んだ青木義宏氏。同氏が取り組んだのは、基準が曖昧だった人事評価の刷新と、時代を見据えたデジタル化だった。異業種から経営を引き継いだ青木氏に、組織改革の歩みと今後の展望を聞いた。

倒産危機からの大転換と未経験で飛び込んだ家業

ーーまずは、これまでの事業の変遷を教えてください。

青木義宏:
弊社は1959年の創業以来、長らく家電販売を営んできました。しかしバブル崩壊で売上が半減し、厳しい時代に直面します。打開策として大手家電量販店とフランチャイズ契約を結んだ時期もありましたが、大型店舗化には莫大な借り入れが必要となるため決断できないまま、利益は低迷していました。そこで、環境問題への意識が高まるこれからの時代を見据え、1999年に思い切って家電販売を全廃し、リユース事業である「ハードオフ」一本に絞る決断を下したのです。

ーー青木社長が貴社へ入社されたのはどういった経緯があったのですか。

青木義宏:
リユース事業への転換後、店舗の大型化で順調に成長を続けていた2008年頃、社長だった父が倒れてしまいました。当時、私は銀行の投資銀行部門に勤めており当社の経営には関わっていなかったものの、30店舗近いお店と約300人の従業員がどうなってしまうのかと考えたのです。これまで父を支えてくれた社員やグループ会社の皆様への感謝と敬意、そしてリユースを必要とする社会の役に立ちたいと強く思い、未経験ながら新しい世界へ飛び込む決意をしました。

ーー未経験での経営参画において、当初はどのような課題に直面されたのでしょうか。

青木義宏:
人事や労務管理の抜本的な改革です。入社直後、過去の労働時間管理の不備が発覚しました。経営陣に法的な知識が不足していたことが原因です。しかし私は銀行員時代の経験からコンプライアンスの重要性を痛感していました。そこで、管理不備の是正と社内規定の整備を行ったのです。

一方において、会社の成長には透明性のある評価制度が不可欠だと確信し、評価基準が不明確だった従来の制度を改め、客観的な数字の裏付けに基づく評価制度へと刷新しました。同時に、直近5年間は最低賃金の上昇を上回るベースアップを毎年実施し、業績に応じた賞与の還元や休日の増加など、従業員満足度の向上に努めています。

若手の抜擢と健康経営 変化を楽しむ組織力

ーー従業員満足度の向上において、注力している取り組みはありますか。

青木義宏:
社員の「健康経営」と「若手が活躍できる土壌づくり」です。社員の高齢化やメンタルケアを見据え、5年前から健康経営を推進してきました。その結果、今年は健康経営優良法人の上位6.5%程度にあたる「ネクストブライト1000」に認定されています。また社会の健康志向に貢献するため、新たにフィットネスジム「ポケットフィットネス」へ加盟し、収益化を見極めながら新規事業の育成も進めています。

また、離職率が5%を切ったことを機に現在は組織の若返りを図るべく、中途採用と並行して新卒採用を強化しています。さらに、今秋には90〜100名規模の研修ルームも社内に新設予定です。加えて、弊社には年齢や社歴にかかわらず実力を評価する風土もあり、実際に高卒で入社した22歳の若手を店長に抜擢したところ、社内トップクラスの売上高を牽引するまでに成長しました。

ーー事業を推進される中で感じる、貴社ならではの独自の強みについて教えてください。

青木義宏:
最大の強みは、一度決めた方針に向かって全員で突き進む社員の「適応力の高さ」と「推進力」です。大前提として、ハードオフグループの経営理念やシステムといった共通の基盤がありますが、それを最大限に生かせる前向きな社員に恵まれていると実感しています。

その強みが顕著に表れたのが、営業管理用のレジシステムの移行での出来事です。以前、社内の優秀な人材が開発した独自システムがあり、現場はそれに慣れ親しんでいました。そのため、グループ全体で導入された新システムへの切り替えには、初めは強い抵抗があったのです。しかし、フランチャイズとして足並みをそろえるために「新システムでいこう」と決断した後の、社員の適応力は目覚ましいものでした。

全員が新しいシステムを使いこなし、運用を徹底した結果、現在では直営店を上回り大手加盟法人の中でもトップクラスのEC販売比率を誇っています。この高い適応力と推進力こそが、事業を牽引する原動力だと確信しています。

埼玉から首都圏へ「ハードオフ」「ホビーオフ」を軸とした新たな挑戦

ーー新卒採用を強化していく中で、今後どのような人材を求めていますか。

青木義宏:
まずは、リユース事業に対して強い興味を持っていただきたいですね。その上で、スマートフォンやゲーム、キャラクターグッズ、楽器、洋服など、自分の好きな商品に対して強い好奇心を持ち、精通できる方を歓迎しています。ただ、趣味に深く集中できるだけでなく、周囲の方としっかりとコミュニケーションがとれることも大切です。過去には対人関係が苦手でつまずいてしまった方もいらっしゃいましたので、周囲との関係性を築けるかどうかは重要視しています。会社の仕事を素直に受け入れつつ、自分の好きなことや趣味を入口として、徐々に仕事の幅を広げていける方にぜひ来ていただきたいですね。

ーー最後に、今後のビジョンをお聞かせいただけますか。

青木義宏:
首都圏エリアへの進出と、「ハードオフ」「ホビーオフ」業態の強化です。これまでは埼玉県内での高密度な出店戦略をとってきました。今後はその基盤を活かし、未開拓である東京・千葉・神奈川などの首都圏エリアへの進出にチャレンジします。

出店方針の核として注力するのが「ハードオフ」と「ホビーオフ」です。現在、若年層を中心に市場のニーズが集中しており、前年比成長率が非常に高い業態となっています。特に「ホビーオフ」は、弊社のリユース店全63店舗のうち、まだ2店舗と出遅れています。しかし、社内には特定の得意分野のプロになれる熱量の高い人材がたくさんいます。彼らの情熱を最大限に活かし、今後の成長の柱として「ハードオフ」「ホビーオフ」を積極的に展開していく決意です。

編集後記

銀行員からリユース業界へという異業種からの転身を遂げた青木社長。その歩みは、コンプライアンスの徹底や透明性の高い評価制度の構築など、組織の土台を誠実に整えることから始まった。過去の慣習に囚われず、時代の変化を捉えて組織改革を断行してきた決断力には感服するばかりだ。新卒採用の強化や健康経営の推進によって若手が躍動する強固な組織基盤が整った同社が、今後「ハードオフ」「ホビーオフ」を主軸として首都圏へいかに進出していくのか、その飛躍が楽しみだ。

青木義宏/1962年、埼玉県生まれ。早稲田大学商学部卒業。1987年、住友銀行(現三井住友銀行)入行。支店にて融資業務を担うほか、格付機関ではアナリスト業務、銀行本部では起債推進業務や政策投資審査業務、ベンチャーキャピタルでは未上場株式投資業務、不動産アセットマネジメント会社では不動産ファンド組成業務、不動産投資信託資産運用会社では取締役財務部長などを経験。2010年に株式会社大宮電化常務取締役、15年に同社代表取締役社長に就任。