
創業100年を迎えるシャディ株式会社はいま、大きな転換点に立っている。ギフト業界を代表する企業として全国に販売ネットワークを展開する一方、市場環境は大きく変化している。少子高齢化、ライフスタイルの多様化、EC市場の拡大。従来の延長線上では成長が難しい時代を迎えている。
2026年1月、その変革の舵取りを託されたのが代表取締役社長の浜野幸也氏だ。銀行、新銀行東京、事業再生、物流改革、M&A――。数々の変革の現場を経験してきた同氏が一貫して追求してきたのは、「本当に価値のあるものを、必要とする人へ、必要とする社会へ届ける仕組みをつくること」だった。その経験をもとに、シャディの次の100年に向けた挑戦について話を聞いた。
事実から目をそらさない経営
ーーまずはご経歴についてお聞かせください。
浜野幸也:
新卒で三和銀行(現・三菱UFJ銀行)へ入行したことがキャリアのスタートです。その後、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)へ出向し、多くの研究機関や企業と接する機会を得ました。そこで感じたのは、日本には優れた技術やサービスが数多く存在する一方、それらが十分に社会へ届いていないということでした。その経験から、「価値を生み出すこと」と同じくらい、「価値を正しく届けること」が重要だと考えるようになりました。
その後、新銀行東京の立ち上げに参画し、以降は事業会社の経営や事業再生の現場に携わってきました。
振り返れば、多くの成功も失敗も経験しています。しかし、その中で学んだことがあります。事業の問題は、表面に現れている現象だけを見ても解決できないということです。売上高の低下や利益の悪化は結果であり、その背景には必ず原因があります。私は経営判断をするとき、まず現場で何が起きているのかを確認し、自社の比較優位は何か、そして成長を阻害しているボトルネックは何かを考えます。事実から目をそらさず、本質的な課題を見極めること。それが私の経営の基本です。
「物流のための物流」ではなく、「売上高を伸ばす物流」へ
ーーこれまでのキャリアの中で印象に残っている取り組みはありますか。
浜野幸也:
ラオックス・ロジスティクスでの経験は、現在の経営にも大きな影響を与えています。物流業界では、物流の仕組みに荷主が合わせることが当たり前になっているケースが少なくありません。しかし私は、その発想だけでは十分ではないと考えていました。
物流会社はモノを運ぶことが仕事だと思われがちですが、私は違うと考えていました。荷主企業の商品がもっと売れる仕組みをつくることこそが物流の役割です。物流を改善することが目的ではなく、お客様の売上を伸ばすことを目的に物流を設計してきました。この考え方は、現在シャディで取り組んでいる変革にもつながっています。
価格競争から価値競争へ
ーー現在のギフト業界をどのように見ていますか。
浜野幸也:
最大の課題は、価格競争に陥っていることだと思います。掛け率や値引きを競い続ける構造では、業界全体が疲弊してしまいます。私はラオックスグループの経営に携わる中で、大きな学びを得ました。
インバウンド需要によって成長したラオックスは、「爆買い」のイメージで語られることが多い企業です。しかし、経営の観点から振り返ると、本質はそこではありません。当時、多くの企業が海外生産へシフトする中、ラオックスはあえて国内メーカーと連携し、高価であってもメイド・イン・ジャパンの商品にこだわりました。その結果、お客様は価格ではなく価値で商品を選ぶようになり、定価でも支持される市場が形成されました。
重要だったのは、一時的な需要を取り込むことではありません。売り方そのものを変えたことです。価格で勝負するのではなく、価値で選ばれる市場をつくる。私はこの考え方に大きな示唆があると考えています。ギフト業界もまた、価格競争から価値競争へ転換する時期に来ているのではないでしょうか。
シャディを「ギフト会社」で終わらせない

ーーシャディではどのような未来を描いていますか。
浜野幸也:
私はシャディを単なるギフト販売会社だとは考えていません。私たちの最大の強みは、全国の販売店ネットワークと、地域のお客様との長年にわたる信頼関係です。これは簡単に真似できるものではありません。
人生には結婚、出産、入学、法要、相続など、多くの節目があります。ギフトはその一場面に関わるものですが、お客様が本当に求めているのは商品そのものではなく、その先にある安心や支援だと思っています。たとえば法要のお返しをきっかけに、その後の供養や各種手続きについて相談を受けることもあります。
私たちはそうした人生の節目に寄り添い続ける存在になりたい。ギフトを届ける会社から、人生の節目を支える会社へ。それがシャディの目指す姿です。
リアルとデジタルを融合し、顧客との関係を深める
ーー今後のDX戦略について教えてください。
浜野幸也:
デジタルは目的ではなく手段です。シャディには販売店の皆さんが地域のお客様と長年築いてきた信頼関係があります。これは私たちの最大の資産です。だからこそ、その強みをデジタルによってさらに進化させたいと考えています。購買履歴や接客情報を活用することで、お客様一人ひとりのライフイベントに合わせた提案ができるようになります。
私たちが目指しているのは単なるEC化ではありません。リアルの強みとデジタルの利便性を融合し、お客様との関係をより深めていくことです。価値ある体験を提供する力をさらに高めるためのDXに取り組んでいきます。
次の100年を創るのは新しい世代
ーー最後に読者へのメッセージをお願いします。
浜野幸也:
創業100年を迎える企業というと、歴史ある老舗企業という印象を持たれるかもしれません。しかし私たちが見ているのは過去ではなく未来です。長年培ってきた信頼やネットワークという資産を活かしながら、新しい価値を創り続ける。その中心になるのは、新しい発想を持つ人材です。意欲のある人には大きな裁量と挑戦の機会があります。変化を楽しみ、自ら価値を創り出したい人にとって、今のシャディは非常に面白いステージになると思います。次の100年を一緒に創っていける仲間との出会いを楽しみにしています。
編集後記
異色のキャリアを歩み、幾多の事業課題に向き合ってきた浜野社長の言葉には、きれいごとではない確かな説得力があった。掛け率や値引きといった価格競争から脱却し、全国の販売店ネットワークと密接な人間関係という唯一無二のインフラを武器に、新たな価値創造へと挑む。その指針は、ギフト業界の常識を覆す可能性を秘めている。「働き方はなんでもありだ」と語る圧倒的な裁量を有するトップのもと、100年企業を舞台に次世代の人材がどのような変革を起こすのか。自らの手で歴史を塗り替える挑戦のフィールドが、ここには広がっている。

浜野幸也/株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に勤務後、独立や事業会社での代表や営業等を経て2019年にラオックス・ロジスティクス株式会社の代表取締役に就任し、物流改革・M&Aを推進。2026年1月にシャディ株式会社 代表取締役社長に就任。座右の銘は、「現場主義」と「本質追求と価値創造」。趣味は、仕事、お酒、おしゃれ。