※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

「大切な人に誇れる会社をつくると決めて、20歳で起業しました」。そう語る玉谷風輝氏は現在、株式会社ユアルートを率いている。同社はラストワンマイル配送に特化した運送会社のM&Aを連続して実行するなど、独自の戦略で注目を集めている。創業時、最初の顧客であった物流会社の課題に直面して以来、需要過多でありながら働き手が誇りを持てない構造を変革すべく、業界再編に挑んでいる。なぜ若き起業家は、異色の「物流×M&A」というアプローチで業界トップを目指すのか。その裏側にある泥臭い原体験と、壮大なビジョンに迫った。

激務の配車業務で知った「これが社会か」 物流への一本化

ーーまずは、起業された経緯と創業期のことについて教えていただけますか。

玉谷風輝:
大学では体育会硬式野球部に所属していましたが、そのまま野球の延長線上で大学生活を過ごすのではなく、思い切って起業しようと決意したのが20歳のときでした。最初から特定の事業を考えていたわけではなく、「大切な人に誇れる仕事をする、会社をつくる」ということだけを決めており、自分に何ができるのかを探りながらのスタートでした。

ーー最初は、どのような仕事から始めていったのでしょうか。

玉谷風輝:
初めは物流会社からお仕事をいただき、採用やIT周りの支援から始まり、最終的にはドライバーの採用や配車業務まで任せていただくようになりました。この配車業務は案件とドライバーをマッチングさせる仕事なのですが、これが本当に激務でした。ドライバーやお客様、協力会社から常に電話が鳴り止まず、トラブル対応も含めてすべて僕に電話がかかってくるのです。電話が鳴っていないのに、鳴っている気がして電話機を見に行くほどでした。

ただ、僕の社会人生活のスタートがそこだったので、「これが社会か」と腹をくくり、つらいというよりは、前を向いて突破していくような感覚で取り組んでいましたね。また、その時期に並行して、学生時代にインタビューメディアをつくっていた経験を活かし、メディアプラットフォーム事業も立ち上げました。

ーーそこから、なぜ物流事業に絞る決断をされたのですか。

玉谷風輝:
メディアプラットフォーム事業も順調に立ち上がっていましたが、物流の仕事に深く関わるうちに、この業界が間違いなく社会のインフラであり、サプライチェーンのど真ん中にあると気づきました。ビジネス的にも需要過多なマーケットで、環境が良いことにも気づいたのです。それにもかかわらず、働いている方がなかなか自分の仕事に誇りを持てない構造がありました。これを自らの手で変えていきたいと強く思い、立ち上げていた別のメディア事業を売却、ラストワンマイル配送に特化した運送会社をM&Aでグループ化していく、現在のロールアップ事業へと舵を切りました。

会計士などの「プロ人材×自社IT」で運送会社をバリューアップ

ーー改めて、現在の主力事業について教えてください。

玉谷風輝:
ラストワンマイルの配送領域に特化した運送会社に対して連続的にM&Aを実行しています。そして我々のグループ内で、恒久的にバリューアップさせながら成長していくモデルを展開しています。小規模なプレーヤーが乱立している業界なので、集約していくことで荷主への交渉力や採用力も上がっていくのです。ファンドのように売却するのではなく、基本的には永遠にグループで保有していく形です。

ーー買収した企業を、どのように成長させていくのでしょうか。

玉谷風輝:
大きく二つの軸があります。

一つは「ユアルートクラウド」という自社の基幹システムを導入し、経営状態を可視化することです。そもそも管理が十分にできていない会社も多いため、我々の仕組みを入れるだけで、どこに注力すれば売上が伸びるかが明確になります。

もう一つは、プロフェッショナル人材が経営チームとして参画することです。ファンドでのPMI経験者やコンサルタント、公認会計士といったプロフェッショナル人材が社内におり、彼らのノウハウを活かして徹底した経営改善を行っています。

ーーM&Aの案件はどのように開拓されているのですか。

玉谷風輝:
私たちは「物流チャンネル」というニッチなYouTubeチャンネルの運営をしています。また、物流会社の経営者が集まる会員制のプレミアムコミュニティも主宰しており、そこを起点とした横のつながりやご紹介から、自然とM&Aの案件や新規のお取引が集まる構造ができているのです。この業界におけるストロングバイヤーとしてのポジションを確立できていると思います。

「経営のすべて」を経験できる環境で自らの手で業界を変える

ーー今後、どのような方と共に働きたいとお考えですか。

玉谷風輝:
「自らの手で業界を変えていきたい」という強い意志を持った方ですね。特にCXO(経営幹部)候補やPMI人材、公認会計士の資格取得に向けて勉強しているような方とは非常に相性が良いです。現在、M&Aによってグループ会社がどんどん増えているため、経営を担うポジションが常に空いている状態です。M&Aのすべてのプロセスから、買収後の会社をグロースさせていくところまで経験できます。「経営のすべて」を実践し経験できる、非常に稀有でユニークな環境だと思います。

ーー最後に、今後の会社の目標やビジョンを教えていただけますか。

玉谷風輝:
一番は、働き手であるドライバーの経済条件を向上させ、生活を豊かにしていくことです。そして、ドライバーの社会的地位を向上させるための手段として、将来的には、自社のシステムで蓄積したドライバーの評価データを「独自の与信データ」として活用し、金融的なご支援ができる世界観をつくりたいと考えています。今まで住宅ローンが組めなかったドライバーが、我々のデータによって金融機関の審査が通りやすくなるかもしれません。我々が直接融資を行うといった構想もあります。まずはラストワンマイル領域において、確固たる「No.1プレイヤー」になるべく挑戦を続けていきます。

編集後記

「電話が鳴り止まない激務も『これが社会か』と前向きに捉えていた」。玉谷氏の言葉からは、底知れぬタフさと現状を打開する強い意志が感じられた。旧態依然とした物流業界の課題に対し、彼らはプロフェッショナル人材の知見と最新のITシステムという、業界では異質な武器を持ち込み、着実に変革を巻き起こしている。特筆すべきは、同社が単なる運送会社の集合体を目指しているわけではない点だ。独自のデータを用いたドライバーへの金融支援にまで視野を広げるその壮大なビジョンは、物流業界の未来を明るく照らすに違いない。若き起業家が率いる株式会社ユアルートが、どこまで巨大なインフラへと成長していくのか、今後の飛躍から目が離せない。

玉谷風輝/1998年生まれ。明治学院大学在学中に起業。運送企業向けの採用支援を行う傍ら、配車業務にも従事し、物流現場の実務を経験。2020年、株式会社ユアルートを創業。メディアプラットフォーム事業を売却後は、2年で5件のM&Aを実行するなど、物流業界に特化したロールアップ事業を展開している。また、YouTubeにて「物流チャンネル」を運営し、現場視点のリアルな情報発信を通じて、業界全体の変革を目指す。