
大阪を拠点に、分譲住宅から注文住宅まで幅広く展開する株式会社吉村一建設。同社の代表取締役である友藤忠昭氏は、20歳のときに先代である父親との対話を機に、それまで志していた語学の道から一転して建築業界へと飛び込んだ。現場での下積みや営業など全社的な経験を経て、現在はグループ全体の指揮を執っている。自律的な組織づくりと「性能×コストパフォーマンス」を極めた家づくりの裏側にある、友藤氏の歩みと未来へのビジョンを聞いた。
「好きになる努力」から始まった10年間の下積みと現場のリアル
ーー建設業界に入ることを決めた背景を聞かせてください。
友藤忠昭:
20歳のときに先代である父親と会話し、「親孝行をしたい」という思いが芽生えたことがきっかけです。それまでは家業を継ぐ考えも建設業界への関心も全くなく、中高大と一貫して語学を学んでいました。全く違う路線でしたが、未経験からこの業界に入ることを決意し、大学を中退して吉村一建設に入社しました。
ーー未経験の世界に飛び込むことに不安はありませんでしたか。
友藤忠昭:
社長の息子という立場で入る以上、周囲から厳しい目で見られることは覚悟していました。ただ、もともと負けず嫌いな性格もあり、「人が思っている以上に結果を出そう」という気持ちの方が強かったですね。入社時には10年間で一通り会社のすべてがわかる状態にするという目標を立て、最初の1年近くは物流事業部で現場の廃材回収などに従事し、その後は工務部で現場監督を4年ほど務めました。さらに購買部で協力業者の管理や原価について学び、その後は最も長く経験することになる営業職に就き、計画通りに各部署を経験していきました。
ーー現場を経験する中で特に苦労したことは何ですか。
友藤忠昭:
一番難しかったのは「人間関係」ですね。業務自体は教えられれば覚えられますが、従業員や職人の方々、お客様など、立場が違えば考え方も異なるものです。相手の立場に合わせてどのようにコミュニケーションをとり、関係性を築いていくかが最大の課題でした。また、もともと好きで建設の仕事に就いたわけではなかったので、当時は好きになる努力を懸命にしていました。辞めるという選択肢がない以上、楽しまなければ損ですし、やるからにはポジティブに自分の糧にしようと考えていたんです。
37歳で子会社の社長に就任 時代に合わせたルールづくりと環境整備

ーー現場での経験は、その後の経営や組織づくりにどう活かされたのでしょうか。
友藤忠昭:
37歳で子会社である「ゆめすみか」の社長に就任した際、現場での経験が大きく活きました。就任当初は社内の離職率が高い状態だったため、まずは「人がどう感じるか」を念頭に置き、働きやすい環境を整えることに注力しました。具体的には、業務内容や責任の所在など、それまで曖昧だった基本的な社内ルールを整備したのです。
また、給与体系の改善やモチベーション向上に繋がる社員旅行などの福利厚生を充実させ、組織風土の醸成にも取り組みました。結果として離職率が大幅に減って人員が増え、就任前は年間10数棟だった売上高も、現在は200棟規模にまで成長しています。失敗が起きないようにどう改善するかは、今も常に考え続けています。
ーー現在の家づくりにおいて最も重視しているこだわりを教えてください。
友藤忠昭:
最もこだわっているのは住宅の「性能」です。弊社は分譲住宅や建築請負といったBtoB事業の吉村一建設と、BtoCの注文住宅事業である「ゆめすみか」を展開しています。家づくりにおいて、デザインにはこだわりのない人もいますが、「寒い家でいい」「地震で崩れてもいい」という人はいません。生活に不可欠な要素だからこそ、断熱等級は最高クラスの等級6以上を推奨しています。耐震等級3や制震ダンパーも標準基準として備えています。
デザインは人それぞれだが性能は必須 圧倒的コスパを生む「購買力」
ーー優れた性能を持つ貴社の住宅が多くのお客様に選ばれる理由は何ですか。
友藤忠昭:
圧倒的な「コストパフォーマンス」にあると自負しています。実際にお客様からの評価の声でも、性能と価格のバランスを決め手に挙げる方は少なくありません。性能の高さだけでなく、弊社には長い歴史の中で培ってきた「購買力」が備わっており、基礎や電気、水道など全工程において、常に複数の外部企業と連携して比較検討を行ってきました。原価を厳密にコントロールすることで、同業他社に負けないコストを抑えた家づくりを実現しているわけです。「良質な住宅を手の届く価格で提供する」という理念の通り、高い性能を買いやすい価格でご提供できる点に自信を持っています。
ーーこれからの展望や目指すべきビジョンについてお聞かせください。
友藤忠昭:
「誰しもに喜んでもらえるビジネスを展開する」というのが根本の思いです。事業としては、新築戸建てだけでなく、リフォーム事業や、保育園・店舗といった非住宅の木造建築分野にも注力していく予定です。
しかし最も大切なのは、お客様に満足していただき「建ててよかった」と思ってもらえる家づくりをすることと、同時に、従業員が「この会社で働いてよかった」と思えて、その家族も安心できる会社環境を構築すること。これらを満たしながらまずは目の前のお客様の満足度を高めて事業を広げていくことが、私にとって最大の目標です。
編集後記
「デザインの好みは分かれても、快適な性能は誰しもが必要とする」。その揺るぎない信念のもと、圧倒的なコストパフォーマンスを武器に躍進を続ける株式会社吉村一建設。友藤氏が推進する社内ルールの整備や福利厚生の充実は、社員のモチベーション向上だけでなく、確かな実績へと結実している。お客様にも従業員にも「よかった」と思われる会社を目指し、挑戦を続ける同社が、今後どのような新しい街並みをつくっていくのか非常に楽しみだ。

友藤忠昭/1985年大阪府生まれ。関西外国語大学中退。2007年10月、吉村一建設に入社。住宅・不動産事業に携わり、2022年4月にゆめすみか代表取締役に就任。2025年には吉村一建設代表取締役に就任。二代目経営者として、建築・不動産・注文住宅を中心としたグループ経営を担い、事業拡大と組織づくりに取り組んでいる。