※本ページ内の情報は2026年8月時点のものです。

現在、都内を中心に約20店舗の生花店を展開する株式会社リベルテ。同社の代表を務めるのは、19歳で花の世界に飛び込み、大手企業での大規模な装花業務から一転、直接顧客と触れ合う「小売り」に魅せられ独立を果たした中嶋敏光氏だ。同氏は従来の常識を覆した花の教室の運営や、必ずグリーンを添える独自のナチュラルなスタイルを確立。その歩みは常に「自然」と「顧客」に寄り添ってきた。企業規模が拡大した今も自ら市場へ足を運ぶ中嶋氏に、花にかける思いと、業界の未来を見据えた展望を聞いた。

「街の花屋さん」への憧れ 直接お客様に届ける小売りの魅力

ーーまずは、花の世界に関わることになった経緯を教えていただけますか。

中嶋敏光:
高校卒業後、19歳のときに大手生花店でアルバイトを始めたのが業界に入ったきっかけです。そこでは主にブライダルや宴会場など、大規模な花の装飾を担当していました。当時の私は、仏壇に飾る花を買いに行く程度の関わりしかなく、この業界に強い思い入れがあったわけではありません。たまたま巡り合ったのが花の世界だったのです。

ーーその後、独立を志したきっかけは何だったのでしょうか。

中嶋敏光:
お客様に直接花を届ける、小売の世界に魅力を感じたからです。大きな転機になったのは、会社を辞めて「街の花屋さん」を始めた先輩の存在でした。その先輩のお店に遊びに行ったとき、お客様との対話を楽しむ姿を見て「私も小売をやってみたい」と強く惹かれたのです。それまで私は大きな装花ばかりで、一般のお客様に直接販売した経験がありませんでした。自分の手でお客様へ花を手渡ししたい。そんな思いが強くなり、29歳のときに同僚2人とともに、3坪ほどの小さな店からスタートしました。

常識を覆した教室事業と大切にし続ける「自然」の姿

ーー小さな店舗から始めて、事業のターニングポイントとなった出来事を教えてください。

中嶋敏光:
都内で自身の花の教室を立ち上げたことです。当時のフラワーレッスンは資格取得を目指すものが主流で、先生が用意した花を、生徒が定規で長さを測りながら同じ形に仕上げるスタイルが一般的でした。しかし、花屋である私には「それでは実際に店へ来ても自分で花を選べない」と疑問を感じたのです。

そこで、店にあるたくさんの花の中から生徒自身が好きなものを選んで自由に作品をつくれるシステムを導入しました。これが大きな反響を呼び、多くの生徒さんが集まってくれたことで、事業が大きく飛躍する一歩となりました。

ーー現在展開されている店舗の商品には、どのようなこだわりがありますか。

中嶋敏光:
「自然の雰囲気を大切にする」ことを徹底しています。たとえば、家の庭に生えている花を摘んできて、そのまま束ねたようなナチュラルなスタイルが私たちの基本です。そのため、アレンジメントや花束には、花だけでなく必ず2、3種類の葉物や枝物といったグリーンを入れるようにしています。花だけを束ねるのが定番だった時代から、このスタイルを貫いてきました。今では、この「自然観」を好んで選んでくださるお客様が非常に増えています。

誰かを思う気持ちを察する対面販売へのこだわりとトップの姿勢

ーー多角的に事業を展開しつつも「小売」を最も大切にされている理由は何ですか。

中嶋敏光:
直接お話しすることでしか、お客様の背景にある思いを汲み取れないからです。現在はインターネット通販の需要も増えており、実際に私たちも注力していますが、小売における対面販売には特別な意味があると考えています。花を買うお客様の後ろには、花を贈りたい相手が必ず存在します。「母親にプレゼントしたい」「お見舞いに持っていきたい」など、お客様が思い浮かべている相手を想像し、その背景や思いを察して接客することを私たちは何よりも大切にしています。

ーー企業規模が拡大した現在、ご自身の役割や現場との関わり方に変化はありましたか。

中嶋敏光:
店舗数が20店舗に増えた今も、基本的なスタンスは何も変わっていません。実は現在でも、私自身が週に3回は市場へ仕入れに足を運んでいるんです。良いものを自分の目で見て仕入れ、店に戻って販売や経営を行う。この「街の花屋の主人」としての基本こそがリベルテの根底にあります。企業規模が大きくなっても社長自身がするべき基本は変わらないという思いのもと、今も現場と仕入れに向き合っています。

目標と花への愛を持って業界全体を盛り上げる未来へ

ーーこれからの貴社を支える仲間として、どのような人材を求めますか。

中嶋敏光:
「花が好き」であること、そして「夢や目標を持っている」人材です。技術や知識は、入社してから実務を通して自然と身につけられます。しかし、花の世界は好きでなければ続けられない仕事です。だからこそ、花に対する夢や明確な目標を持っている人と一緒に働きたいと考えています。熱い思いや目標に向かって挑戦する姿勢があれば、たとえ未経験であっても新しい仕事をどんどん任せていきたいですね。

ーー最後に、業界の未来を見据えた今後の展望をお聞かせください。

中嶋敏光:
売上高の目標や店舗数といった数字の拡大よりも、重要なことがあります。それは、リベルテの「ファン」になってくれる方をいかに増やせるかです。現在、花卉業界全体が少し下火になっており、生産農家も減少するなど厳しい状況にあります。だからこそ、私たちのお店だけでなく、業界自体が活気づいていかないとお客様も増えません。

私たちの根底には、「花・自然を愛することを忘れず、それを通じて社会に貢献し全ての人達の幸福と繁栄をサポートする」という経営理念があります。常にお客様の声に耳を傾けて暮らしに潤いや楽しさを提供し、自然の恵みや美しさを最高の商品品質と技術で表現していきたいと考えています。

そして、お客様の喜び、つくり手の喜び、会社の利益という3つの「ハッピートライアングル」を実現することが私たちの目指す姿です。この理念を胸に事業を広げていくことが、結果として業界を盛り上げることにつながると信じて疑いません。そのためにも、85歳まで現役でこの仕事を続ける覚悟を持っています。

編集後記

19歳から花の世界に身を置き、街の花屋としての原点を決して見失わない中嶋社長。業界の常識に縛られない、生徒に花を選ばせるフラワー教室や自然の姿を活かしたグリーンのアレンジの提供。そんなふうにいつも「顧客にとって本当に良いもの」を追求してきた姿勢が印象的だ。経営理念に掲げられた「ハッピートライアングル」の通り、規模が拡大しても自ら市場へ足を運び、真摯に花と向き合い続けている。その変わらない情熱が、これからも多くの人々の日常に自然の潤いと豊かさを届けてくれることだろう。

中嶋敏光/1950年、東京都大田区生まれ。19歳で花の世界に入る。1979年、29歳の時に自分自身の可能性がどこまで開けるかチャレンジしたいと考え、独立して花屋を開業。「花」に関わる仕事の中で何ができるかを探りながら、新しい分野の開拓を目指して総合的なフラワービジネスを展開中。