※本ページ内の情報は2026年10月時点のものです。

14歳からトップアイドルとして第一線を走り続けてきた板野社長。彼女は現在、アパレルやスキンケア、アイドルプロデュースなど複数の事業に挑み、経営者として新たな道を歩んでいる。諦めずに女性たちが生き方を選択できるように応援したいという強い信念のもと、アパレル、スキンケア、そしてアイドルプロデュースという多角的な事業を展開。華やかなイメージの裏にある、決して逃げ出さない不屈の覚悟と「諦めない力」に焦点をあて、彼女が描く未来図と等身大の葛藤に迫った。

コロナ禍での自己対話から生まれた「女性を応援したい」という思い

ーーまずは、起業を決意されたきっかけからお聞かせください。

板野友美:
2021年に結婚し、妊娠がわかったことが、私にとって人生の大きな転機でした。当時はちょうどコロナ禍の真っ只中。初めての妊娠と出産で生活が一変した上、長い間外出もままならない日々が続いたことから、自分自身と深く向き合う時間が持てたのです。14歳で芸能界に入ってからずっと、私にとっての「美」や「ファッション」は、誰かに見せるためのもので、ステージや仕事のために自分を着飾るという感覚でした。ですが、自宅から出られない日々の中で、ほんの少しメイクをしたり、好きな洋服を楽しんだりするだけで気分転換になり、前向きなエネルギーが内側から湧いてくることに気づきました。

一方で、同じ30代の女性たちを見渡すと、仕事と家庭の両立で悩み、環境に合わせて自分のやりたいことを諦めてしまう方が少なくありません。私自身もその大変さを身をもって経験しました。仕事と家庭の両立について悩みましたし、いろいろな女性の生き方に触れる中で、「どちらか一つを選ばなければいけない」と決めつけなくてもいいのではないかと思うようになりました。どちらかを諦めるのではなく、「欲張りに幸せを選んでいいんだよ」と、女性たちの背中を押す存在になりたいと考えて、ゼロからの起業に踏み出したのです。

ーーその思いは、具体的にどのような形で表現されているのですか。

板野友美:
現在は、アパレルとスキンケアの事業を通じて、その思いを形にしています。アパレルの「Rosy luce(ロージールーチェ)」では、女性を花にたとえ、「自分に愛を注ぎ、自分らしく咲きましょう」というコンセプトを掲げています。周りと比べるのではなく、自分自身に水や肥料を与え、自分のタイミングで咲いてほしいという願いを込めました。創業初期には、工場から届いた洋服の仕上がりに納得がいかず、ポップアップ直前に私たちで夜通し縫い直したこともありました。

スキンケアの「peau de bébé(ポー・デ・ベベ)」も同様に、私自身が年齢を重ねる中で本質的に「本当に肌に良いもの」を追求したいと考えたことが出発点です。成分表示だけでは配合量までわかりません。だからこそ、オピニオンリーダーとして私が自信を持って使える成分にとことんこだわりました。高い化粧品でその瞬間だけを取り繕うのではなく、成分や処方、肌を取り巻く環境について学びながら、自分自身が使いたいと思える品質や使用感を追求しています。

ゼロからの起業と愚直な努力 品質と理念への共感で広がる確かな反響

ーーゼロからの起業ということで、壁にぶつかることも多かったのではないでしょうか。

板野友美:
芸能人が起業すると、巨大な資本やスポンサーが後ろ盾なのではないかと思われがちですが、実際には友人と二人で完全にゼロからスタートしています。「芸能人のブランド」という色眼鏡で見られることも多く、最初は経営やものづくりについて知らないこともあり、経験不足から厳しい条件に直面することもありました。華やかに見える一方で、経営者としての重圧や予期せぬトラブルは絶えません。少しの失敗が大きく取り上げられてしまう怖さもあり、「自分には経営者としての才能がないのではないか」と悩んだこともあります。それでも、問題から逃げることだけはしたくありませんでした。

しかし、問題が起きても決して逃げ出すことはありません。事業上のトラブルが起きたときも、「自分たちの責任ではない」と考えて終わるのではなく、まずは自社の問題として受け止めて、お客様への対応や再発防止を考える。仕入れ先や生産体制についても、一つずつ自分たちで向き合ってきました。深く悩み、葛藤に苛まれながらも、最終的には次々と解決策を考え出し、再び立ち上がって前に進む。私の大きな武器であるこの「復活する強さ」と「諦めない力」は、14歳からのアイドル時代に培われた精神だと思っています。

ーー芸能活動で培った経験は、経営にも生きていますか。

板野友美:
14歳から芸能界に入り、「自分はどう見られているのか」「ファンの方は何を求めているのか」「その中で自分らしさをどう表現するのか」をずっと考えてきました。

当時はそれを経営やマーケティングだとは思っていませんでしたが、今振り返ると、人の気持ちを想像しながら、自分の個性や世界観をどう届けるかを考え続けてきた経験だったと思います。

今はその経験をブランドづくりに生かしています。「板野友美だから買ってもらえる」だけでは、ブランドは長く続かないと思っています。私を知らない方にも商品そのものを好きになっていただける会社にすることが、経営者としての今の目標です。

ーー多角的に事業を展開される中で、お客様からはどのような反響が届いていますか。

板野友美:
品質へのこだわりは、確かな手応えに繋がっています。たとえば伊勢丹新宿店で開催したポップアップでは、多くのお客様に足を運んでいただきました。スキンケア製品は、もともとの私のファンだけではなく、使用感を評価して継続してくださる方や、カップル、ご家族で使ってくださる方が増えています。カップルやご家族間で共有されるなど、ファン層の枠を超えた広がりを見せています。

アパレル事業においても、ただ服が可愛いからという理由だけでなく、私自身の発信する言葉や「自分らしく生きる」というブランドの思いに深く共感して購入してくださる顧客様が多くいらっしゃいます。また、アイドルプロデュースでは、従来のアイドルが「ファンから一方的に応援してもらう側」だった関係性を刷新し、“応援するアイドル”「RoLuANGEL」という独自のコンセプトを掲げています。「アイドルから直接応援されたい、日常の背中を押してほしい」という現代のファン心理を汲み取って、仕事や学業などの夢をアイドル側も全力で応援し返します。

何もないところから成長していく姿は人に勇気を与えますし、ファンの皆様とアイドルが互いに応援し合う双方向的な関係性を構築することで新たな絆が生まれます。現在メンバーとして迎えているのは、一度はアイドルの夢から離れ、それぞれ別の道を歩んでいたものの、どうしても諦めきれず、もう一度挑戦することを選んだ子達です。最初から完璧な姿を見せるのではなく、彼女たちが地道に成長して成功を掴む過程を見せることで、同じように悩む誰かの背中を押す存在になればと願っています。

課題は組織づくりとブランドの自立 共に戦う仲間と目指す世界展開

ーー経営者として、現在ご自身が特に時間を使っているのはどのような仕事ですか。

板野友美:
商品企画やクリエイティブの部分はもちろんですが、今は特に組織づくりや、会社としてどう成長していくかを考える時間が増えています。

以前は「自分で全てを確認し愚直に向き合うことが誠意」という気持ちが強く、細かいところまで自分で抱えてしまうことが多かったんです。でも、会社を大きくしていくためには、私一人が頑張る会社では続かない。

誰に何を任せるのか、どんな判断基準を会社の中で共有するのか。ブランドの世界観と事業としての成長をどう両立するのか。今はそうした経営の仕事に、より向き合っています。

ーー事業が拡大していく中で、今後の課題や目指す組織像についてお聞かせください。

板野友美:
現在直面している最大の課題は「組織づくり」です。私自身、「自分でやってしまいたい」「任せきれない」という弱みがあるのですが、会社をさらに成長させるためには、役割分担をしっかりとして、私がいなくても大きくなっていく会社づくりをしていく必要があります。これまで採用面では、ありがたいことに、私自身をきっかけに会社に興味を持ってくださる方もいます。一方で、採用では、ブランドの理念や事業そのものに本当に共感してくださっているかを大切にしています。知人の紹介という形でしか採用を進められない葛藤もありました。

私たちが今後、未来の仲間に求めているのは、まず第一にブランドの理念や世界観に深く共感し、一緒にブランドを育てていける方です。夢を語ると華やかな部分に惹かれて入社を希望される方も多いですが、実際の業務の90%は決してキラキラしたものではありません。そうした地道な業務や大変なことにも耐えうる「諦めない」姿勢を持ち、共に困難と戦い抜ける仲間を求めています。また将来的には、10時から17時などの限られた時間でも働きたいというお母さんたちが、子育てと仕事を両立できるような環境づくりも目指していきたいと思っています。

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

板野友美:
今後はプロダクト本来の魅力を磨き上げることで「板野友美のブランド」から自立・拡大させていく決意です。原材料費が高騰する厳しい環境下ですが、私が届けたい美学や品質には一切妥協したくありません。そして、すでに反響を呼んでいる中国市場を足がかりに、旅行にも持っていきたくなるRosy luceのポップな魅力や、本質的な美を追求するスキンケアを、アジア全体、将来的にはアメリカなどへグローバルに展開していくビジョンがあります。

経営者として、まだ学ぶべきことはたくさんあります。「誰もが完璧じゃないからこそ、失敗を繰り返しつつ成長する姿を見てほしい」と考えています。等身大の葛藤を乗り越えながら、社員やお客様と一緒に前を向いて歩んでいきたいですね。

編集後記

「欲張りに幸せを選んでいい」。板野氏が語るその言葉は、華やかな理想論ではない。仕事と家庭の間で自身も悩み、ゼロから始めた会社で予想外の問題に直面し、それでも一つずつ解決策を探してきた経験から生まれた言葉だ。取材で印象的だったのは、ポップアップ直前に納得できない洋服を自ら夜通し縫い直したというエピソード。そして、「仕事の90%はキラキラしていない」と語る姿だった。

14歳から芸能界の第一線で、人からどう見られるか、何を求められているか、そしてその中で自分らしさをどう表現するかを考え続けてきた。その経験は今、商品やブランドを通じて人の心を動かす力へと形を変えつつある。失敗しない経営者ではない。悩まない経営者でもない。それでも、問題から逃げず、何度でも立ち上がる。

板野友美氏が経営者として挑む姿そのものが、彼女の掲げる「諦めない」というメッセージを最も強く体現しているのかもしれない。

板野友美/2005年にAKB48の1期生として活動を開始。グループの中心メンバーとして注目を集める。2013年にAKB48を卒業。タレント、アーティストとして活躍する中、2021年1月に東京ヤクルトスワローズ投手の高橋奎二氏と結婚。2021年10月に第1子女児を出産したことを発表。そして、ライフスタイルブランド「Rosy luce」と、スキンケアブランド「peau de bébé」を扱う2社を立ち上げ、経営を担う。