※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

強固な外国人材事業を土台とし、現地の政府や外部企業と渡り合いながら社会のインフラとなるエコシステムを構築する、TRIBAWL株式会社。同社はAIカメラやロボティクスを活用したテクノロジー事業を展開し、グループのさらなる躍進を牽引。「まずはやってみる」という精神で日本と東南アジアをつなぎ、新たな事業を生み出している。事業を形にする実行力と、社員の生活を重んじる組織づくりの裏側、そしてグループ全体で描くダイナミックな未来図について、代表取締役の山本雄一郎氏に迫る。

国内累計1万1000人規模の人材事業から生まれた「AIカメラ技術」

ーー創業から現在に至るまでの、グループ全体の事業の成り立ちについて教えてください。

山本雄一郎:
新卒で入社した商社を辞め、東南アジアの労働力を日本へ派遣する「外国人材事業」を立ち上げたのが原点です。当時、私は商社で東南アジアの石油や石炭といったエネルギー資源を担当していました。その中で、取引先である現地の国営企業や財閥と関わる中で、彼らが「資源を売るだけでなく、豊富な労働人口を海外に派遣して外貨を得たい」という強い要望を持っていることに気づいたのです。しかし、当時の商社がそうした人材事業を手掛けてはいませんでした。それならば「自分が会社を辞めてスタートしよう」と考え、独立を決意しました。

そこから20年以上が経ち、この事業は現在、全国の建設業や製造業などに約1万1000人規模の労働力を提供するまでに成長しました。グループの新たなテクノロジー領域への挑戦を支える、強固で安定した収益基盤となっています。

ーーそこから、なぜテクノロジー領域へ事業を拡大されたのでしょうか。

山本雄一郎:
派遣した実習生の現場で、人為的なミスを減らす必要があったことがきっかけでした。食品工場で毎日同じ作業を繰り返すと、どうしても間違いが起きます。しかし、実習生を簡単に入れ替えて対応するわけにはいきません。そこで、作業工程を画像や骨格の動きで解析するAIカメラを導入し、間違いがあれば即座にアラートを鳴らす仕組みを作りました。

当初は自社の人材事業を支援する技術でしたが、この仕組みを応用すれば、あらゆる業種の業務効率化や省人化につながると考えたのです。現在では防犯・セキュリティ領域にも技術を展開し、AIが状況を分析・判断して、ハトの餌やりや万引きなどの禁止行為を検知した際に自動で注意喚起を行うカメラとして、国内の鉄道会社や商業施設などに導入されています。

「人・物・金」をつなぎ東南アジアに次世代インフラをつくる

ーー国内だけでなく、東南アジアでの事業展開にも注力する理由をお聞かせください。

山本雄一郎:
東南アジア市場はこれから、インフラ整備の本格的な成長期を迎えると考えているからです。私たちは人材事業を通じて20年以上、現地の政府や大手企業と強固な信頼関係を築いてきました。この最大の武器であるネットワークを活かして、現在、国内で培ったAIカメラ技術を、現地の警察やインフラ施設へ横展開しています。さらに、現地の公安系企業と合弁会社をつくり、国家レベルのサイバーセキュリティ事業も受注しています。

ーー多岐にわたる事業を迅速かつ確実に立ち上げられる秘訣は何でしょうか。

山本雄一郎:
「人・物・金」を瞬時に結びつける実行力です。すべてを自社でゼロから開発するわけではありません。すでに技術を持つ他社や優秀な人材を集め、即座に現場へ投入します。人材事業という確固たる収益基盤があるからこそ、リスクを恐れず実証実験を繰り返すことができるのです。

今後はTRIBAWLの事業として、このテクノロジー領域に一層注力していきます。具体的には、テレビ局の技術などとも連携し、スポーツやアイドルの動画をAIで自動編集・配信するエンターテインメント分野や、デジタルゲーム施設の海外展開などを強力に推進しています。また国内でも、人材不足が深刻な一次産業の現場に農業用ロボットを導入して自動化を図るなど、他社が参入をためらうニッチな領域への投資を加速させ、TRIBAWLとしての独自性を確立していきます。

ーーテクノロジー領域において、現在特に注力されているテーマについて教えてください。

山本雄一郎:
直近で一番力を入れているのが、「フィジカルAI」と「AIエージェント」の活用です。現在、国内の深刻な人手不足に加えて、東南アジアとの給与格差が縮小傾向にあります。そうした中で、これまで人が担っていた作業をAIに模倣学習させることで、ロボットによる物理的な作業や重機の自動運転、電話の取次ぎ、予約処理の対応といった業務を自動化させる仕組みの構築を進めています。

これらの仕組みは現在、人材事業で取引のある既存のお客様や、新規の大手企業様へ導入を開始しており、危険を伴う現場作業や、職人による高度な作業などをAIやロボットで代替し、企業の課題解決を強力に推進しています。

社員を重んじる組織と日本と世界を循環させる未来図

ーー新しい挑戦を続ける上で、どのような組織づくりを重視していますか。

山本雄一郎:
経営層が高い目標を掲げても、思いだけでは人はついてきません。社員にはそれぞれの人生があり、守るべき家族やプライベートの時間があります。だからこそ、給与などの待遇面や、仕事とプライベートのバランスを整えることが極めて重要です。「この会社に入ってよかった」と実感してもらえる環境をつくること。こうした現実的な土台があってこそ優秀な人材が集まり、安心して新しい事業に挑戦できると考えています。

ーー最後に、グループ全体で描く今後の展望をお聞かせください。

山本雄一郎:
日本と東南アジアを循環させるエコシステムの構築を目指しています。これまでは国内向けの人材事業がメインでしたが、今後5年から10年の間で「テクノロジー」と「海外事業」の比率を大きく引き上げる予定です。日本の優れた技術を東南アジアの市場へつなぎ、現地の成長を再び日本へ還元します。私たちが提供するシステムやロボットが、社会で当たり前のインフラとして機能する未来を実現するために、これからも挑戦を続けていきます。

編集後記

多角的な事業展開の裏側にある、緻密な計算と大胆な決断力に圧倒される取材だった。独自のネットワークを駆使して海外の政府機関と渡り合うスケールの大きさは、一朝一夕で模倣できるものではない。一方で、華やかな技術革新を語る経営トップが、誰よりも「働く現場の人間」の現実的な生活と待遇を冷静に見つめている点に、同グループが成長を続ける真の理由を見た気がする。圧倒的なスピード感で進化を続けるTRIBAWL株式会社から、今後も目が離せない。

山本雄一郎/1976年京都府生まれ、早稲田大学法学部卒。2002年より技能実習生受入事業(当時は研修生制度)に従事。東南アジア諸国から日本へ人材を送りながら、逆に日本のテクノロジーやサービス等世界で通用するものを現地展開している。2021年にTRIBAWL株式会社代表取締役に就任。