※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

警備業界にAIや機械化の波が押し寄せる中、「人間第一」の理念を掲げ、社員の教育と人間力の向上に徹底して力を注ぐ新北斗警備保障株式会社。鉄道に関わる特殊な警備という領域を強みとしている。新卒採用への手厚い支援やベテランの表彰制度、さらに最新のAI研修など組織づくりを推進する同社。その代表取締役である鳥山恵司氏に、独自の取り組みに加え、採用で求める人物像や今後のビジョンについてうかがった。

異業種からの挑戦 受け継がれる「社員第一」の理念

ーーまずは、貴社に入社された経緯を教えていただけますか。

鳥山恵司:
もともと家業を継ぐつもりはなく、大学院で経営を学んだ後は、家業とは異なる業界で営業などの仕事に携わっていました。しかし、当時社長だった父が体調を崩したことをきっかけに、弊社へ入社することになったのです。入社後はまず営業として現場を回って経験を重ね、その後社長に就任しました。

ーー社長就任後、会社をどのように変えようと思われましたか。

鳥山恵司:
社員を第一に考える組織へと、少しずつ変えていこうと考えました。当時は業務が多忙を極め、会社のビジョンが曖昧になっている部分があったため、まずは会社の指針を整理したのです。父の代からの取り組みを継続しつつ、何より重要である「人間第一」の姿勢を明確に打ち出しました。ただ、先代が築いた基盤や長年会社を支えてくれた先輩社員を尊重し、時間をかけて組織を整えていく道を選びました。

ーー「社員を第一に考える」方針として、具体的にどのような制度を導入されたのですか。

鳥山恵司:
早くから賞与や社会保険などの福利厚生は整備していましたが、スタッフの提案で4年前から「奨学金サポート制度」をスタートしました。新卒社員の多くが奨学金を借りている現状を鑑み、導入を決めました。入社後も学び続け、自己研鑽に励んでもらいたいとの思いから、奨学金の返済を支援する形で、社員を大切にする姿勢を形にしました。

最大の強みは現場が築く「信頼」と「鉄道保安」

ーー貴社がお客様から選ばれる最大の理由はどこにあるとお考えですか。

鳥山恵司:
私たちが何より大切にしているのは、お客様からの「信頼」です。弊社は警備業界の中でも複数の専門分野に強みを持っており、鉄道保安警備はその一つです。充実した教育体制のもとで高い警備品質を提供し続けてきたことが、その信頼につながっていると考えています。お客様から「一緒にやっていきましょう」と継続してお声をかけていただけることは、長年積み重ねてきた信頼の証であり、私たちにとって大きな励みになっています。

ーー現場の安全に貢献する教育体制について教えてください。

鳥山恵司:
お客様と連携し、現場に即した実践的な教育を行っています。たとえば、鉄道保安という特殊性から法的な教育や資格取得のサポートに加え、鉄道保線の訓練施設をお借りして、実車を使った実技訓練も実施しています。鉄道に特化した大きな研修は半年に1回程度、内容によっては2〜3ヶ月に1回の頻度で、継続的にプログラムを実施し、教育体制を整えています。

ーー教育プログラムを通じて、社員にはどのようなメッセージを伝えていますか。

鳥山恵司:
「信頼」と「継続」の重要性です。私たちが営業活動を行う以上に、現場で尽力する社員一人ひとりが一番の営業マンだと考えています。現場での確実な業務が信頼を生み、それが結果として次の仕事につながるのです。こうした思いは、私自身が日々社員に向けて語っています。同時に、私自らが現場に足を運ぶ現場主義も大切にしています。

全員でAIを学ぶ 機械化が進むからこそ問われる「人間力」

ーー新たな教育の取り組みとして始めたことを教えてください。

鳥山恵司:
社内研修の一環として、新たにAI講座を導入しました。現在の技術革新において、新しいツールを使いこなす適応力は不可欠です。時代の変化に取り残されないよう、若手だけでなく、私を含めた役員から事務職まで、スタッフ全員が受講しました。

ーーAI技術が発展する中で、現場の業務はどう変わるとお考えですか。

鳥山恵司:
私としては、今後はむしろ、より一層「人間力」が重要視されると考えています。どれほど機械化が進み、将来的に鉄道の自動運転などが進んだとしても、「段差にお気をつけください」といったお声がけや、状況に応じた臨機応変な行動はAIには代替できません。いざというときの対応を行う人間の役割は、これからも変わらないのです。

若手とベテランが共存する環境から500名体制の未来へ

ーーAI時代に求められる人間力を育む上で、採用ではどのような人材を求めていますか。

鳥山恵司:
まず新卒採用では、責任感を持ち、粘り強く行動できる人材を求めています。実際に入社1年目、20代前半の社員が「君が来てくれれば今日は安心だね」と言われるほど現場で信頼を得た例もあります。そうした行動力と周囲を巻き込む力を持つ方は飛躍的に伸びますね。一方、中途採用に関しては、充実した教育体制が整っているため経験の有無は問いません。

ーー社内では、どのような年齢層の社員が活躍されているのでしょうか。

鳥山恵司:
ベテラン社員が活躍する一方、当社では毎年、新卒採用を継続しており、現在では社員の約3分の1を20代が占めています。社員の平均年齢は49.8歳ですが、都内の同規模の警備会社と比較しても、多くの若手社員が現場の第一線で活躍していることが当社の特徴です。ある若手社員は「先輩に追いついてみせます」と宣言し、その言葉どおり資格を取得。そして新入社員の前で「1年前に誓ったことを実現しました」と報告してくれました。目標に向かって努力する若手社員の姿が同僚や後輩を引っ張り、社内全体の士気を大きく高めています。

一方で、私は日頃から社員に「ベテランを大事にしよう」と伝えています。毎月発行する社内報では、長年活躍しているベテラン社員などにインタビューし、仕事の経験や姿勢を紹介しています。また、勤続10年から25年に及ぶ永年勤続表彰式では、私から直接賞状を授与し、感謝を伝えます。「社長がいたから、ここまで続けられた」と語る姿は、私自身も胸が熱くなります。ベテラン社員の存在と、その背中を追いながら成長する若手社員。世代を超えて支え合っていることが、当社の大きな強みだと考えています。

ーー最後に、会社としての今後のビジョンを教えてください。

鳥山恵司:
専門性を強化し、人間力の高い警備を突き詰めていくことが第一の目標です。その上で、長期的なビジョンとして会社の規模を段階的に500名体制へと拡大したいと考えています。急激な人員増加ではなく、丁寧に人材を育成し、社会から信頼される会社として着実に成長していきたいと思います。

編集後記

鳥山氏との対話を通して見えてきたのは、最新技術を取り入れる柔軟な姿勢と、その根底にある揺るぎない「人間」への深い愛情である。ベテラン社員への感謝を忘れない温かな社風や、社員一人ひとりの成長を願って自ら現場に足を運ぶ実直さが、業界内でも珍しい若さあふれる活気と定着率の高さを生み出しているのだろう。人にしかできない心のこもった警備を追求し、確かな成長を目指す同社の今後に、さらなる期待が高まる。

鳥山恵司/1956年、東京都生まれ。多摩大学大学院経営情報研究科で学ぶ。新北斗警備保障株式会社代表取締役として、「人間第一」を経営理念に掲げ、鉄道保安業務を中心とした警備事業を展開。警備員の教育・人材育成を重視し、地域社会の安全・安心の実現に取り組んでいる。幼少期から剣道に親しみ、礼節や日本文化を大切にする姿勢を経営にも生かしている。