※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

2020年、コロナ禍の停滞期に新たな挑戦を始めた若者がいる。株式会社やるかやらんかの代表取締役社長、西奈槻氏だ。同氏は、友人の得意料理とラーメンを掛け合わせた「麻婆豆腐ラーメン」を武器に飲食事業を立ち上げ、積極的な広報活動を経て母校の近畿大学内への出店を果たした。しかし歩みはそこにとどまらず、アルバイト学生との対話から現代の就職活動の課題に直面し、「日本の若者に“選択肢”を示す。」というビジョンを掲げてキャリア支援や長期インターン事業へと領域を広げた。飲食と教育、そして企業の採用支援を独自の指標である「バイブス(主体性)」でつなぐ西氏に、これまでの軌跡と展望を聞いた。

コロナ禍での起業とテレビ局への飛び込み営業

ーーまずは、ラーメン店という形で事業を始めたきっかけを教えてください。

西奈槻:
コロナ禍によって時間ができ、大学の友人に「何かやろうよ」と声をかけたのが始まりです。当初から経営者を志していたわけではなく、純粋に何か行動を起こしたいとの思いから始まりました。その中でラーメン店を選んだのは、当時通っていた近畿大学がある奈良県の富雄エリアがラーメン激戦区であり、私自身も日常的に食べていたからです。さらに、友人の得意料理が麻婆豆腐だったことから、「じゃあ麻婆豆腐とラーメンを組み合わせよう」と意気投合し、麻婆豆腐ラーメンの専門店として勝負に出ました。

ーーオープン当初の集客には、どのように取り組んだのでしょうか。

西奈槻:
コロナ禍でのオープンだったこともあり、当初は全くお客様が来ない状況でした。そこで、ビラ配りやポスティング、InstagramやTikTokといったSNSでの発信など、考え得るすべてのアクションを実行しました。さらに露出を増やすために、プレスリリースを作成して奈良市役所や奈良県庁、そしてテレビ局へも何度も飛び込みで営業をかけました。その結果、最初のうちは相手をしてもらえませんでしたが、通い詰めるうちにテレビ局の方に取り合っていただけるようになり、番組出演を果たすことができたのです。

ーーメディアに出演したことで、周囲からの反響はいかがでしたか。

西奈槻:
当初はYouTubeを見るなどして独学で始めたような状況だったため、「大学生が安易にラーメン店をやるべきではない」と厳しい言葉をもらうこともありました。ラーメン業界は修行を経てこそ一人前との見方がある中で、そうした考えを大切にする方々からは特に厳しい声が届いたのです。しかし、修行を否定するわけではないものの、現代において修行だけが唯一の正解ではないと信じていました。失敗と改善を最速で繰り返すことで必ず結果を出そうと、そのスピード感だけは誰にも負けないという思いで突き進みました。結果を出していくうちに批判は少なくなり、自分たちのやり方を貫いてよかったと感じています。

母校への出店と就活への違和感から生まれた新事業

ーーその後、母校である近畿大学へ出店することになった経緯をお聞かせください。

西奈槻:
出演した番組を、近畿大学の方が偶然見てくれていたことがきっかけです。私たちの取り組みを知った大学側から「空いている所があるから、そこでラーメン屋をしてほしい」と声をかけてもらい、キャンパス内に店舗をオープンする機会を得ました。

ーーそこから、現在のキャリア支援事業の展開に至った背景はどのようなものでしたか。

西奈槻:
自店舗で働くアルバイトの大学生から、就活のエントリーシートについて相談を受ける機会が増えたことがきっかけです。彼らのエントリーシートを見ると、誰もが「アルバイト先での売上高を改善しました」などと同じような内容を書いていました。そんな、企業に選ばれるために個性を押し殺している現状に危機感を覚え、もっと納得感を持って未来を選べる人を増やしたいと考えるようになりました。それが、現在の「日本の若者に“選択肢”を示す。」というビジョンにつながっています。

主体性を高める「バイブス」とSNSコンサルティング

ーー事業を広げていく中で、大切にしていることは何ですか。

西奈槻:
若者の「バイブス」、すなわち主体性を引き出すことです。具体的には「自分で決める力」と「自分で選択肢を知ろうとする力」の2つだと位置づけています。これらが備わっていないと、納得感のある人生を歩むことはできません。私たちはこの主体性を高めるため、学生の意識の高さ(バイブスレベル)を数値化し、それぞれに合わせたアプローチを行っています。

その入り口として実施しているのが、大学の学食内に設けた店舗で企業にスポンサーとしてラーメンを購入してもらい、学生へ「無料」で振る舞う取り組みです。日常の導線の中で日本中の若者と接点を持ち、企業と自然に出会える場をつくることで、まずは多くの学生の興味を喚起します。そこから段階的に意識を高めてもらい、最終的には意欲の高い学生を企業の長期インターンへとつなぐことで、若者の主体性を引き出す就職支援を行っているのです。

ーー現在展開されているSNSコンサルティング事業は、どのように広げていったのですか。

西奈槻:
自社の集客で培ったSNS運用の知見を活かし、近畿大学のTikTok運用を任せていただいたのが始まりです。そこで数ある大学の中でも日本一となるフォロワー数と再生回数を獲得できた実績をもとに、他大学や高校、塾などの教育機関、さらには採用目的で病院や一般企業様へと支援の輪が広がりました。現在は15社ほどの企業様に対し、Z世代に向けたマーケティングや採用広報のコンサルティングを提供しています。

全国の大学へ新たな選択肢を届ける

ーー今後の事業展開や、実現したい社会像について教えてください。

西奈槻:
全国の大学キャンパス内にラーメン店舗を設けることを目指しています。学食の中に店舗を出し、無料でラーメンを食べながら企業と学生が出会える場をつくりたいのです。面接のような改まった場ではなく、日常の中で自然に就活が始まる仕組みを日本中でつくり、若者がさまざまな選択肢を知った上で納得のいくキャリアを築ける社会を実現したいと考えています。

ーー最後に、これから一歩を踏み出そうとしている読者へメッセージをお願いします。

西奈槻:
社名にもなっていることですが、人生はまさに「やるか、やらんか。」です。「できる・できない」で考えるのではなく、まずはやってみるというところからすべてが始まります。動き出せるようになれば、人生は必ず前に進んでいきます。ぜひ、「やることを癖づける」ことを意識して、とにかく挑戦してみてほしいですね。

編集後記

暇を持て余したコロナ禍に、思いつきで始めた麻婆豆腐ラーメン。それが今や、全国の若者のキャリアに一石を投じる一大プロジェクトへと成長している。最も心を打たれたのは、西氏から発せられる圧倒的な「バイブス」と、常識にとらわれず行動し続けるエネルギーだった。横並びの正解が求められがちな現代において、株式会社やるかやらんかは純粋な熱量と行動力で道を切り拓いている。社名にも込められた「やるかやらんか」の精神は、迷いの中にある多くの人々の背中を力強く押してくれるはずだ。

西奈槻/2000年奈良県生まれ。近畿大学在学中の2020年に麻婆豆腐ラーメン専門店「すするか、すすらんか。」を創業。2022年に株式会社やるかやらんかを創業し、代表取締役社長に就任。現在は近畿大学大学院 起業イノベーション学位プログラムに在籍しながら、若者視点を起点に、キャリア支援や人材紹介、イベント企画、SNS・広報支援など幅広い事業を展開している。