※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

中国の名門ハルビン工業大学でエンジニアを目指し始め、その後日本での事業展開に夢を抱き、1999年に独立を果たした王志敏氏。同氏は当時誰も手を出さなかった商材の輸入から始まり、外部企業の「黒子」言わば下請け(OEM)として徹底した品質管理で実績を重ねた。現在は、野菜未使用分や流通余剰分や規格外野菜のアップサイクル、健康補助食品の自社ブランド展開、海外輸出に着手し、フィジカルAIを見据えた工場運営へと次なるステップを踏み出している。常に挑戦を続ける王志敏氏に、これまでの歩みと未来へのビジョンを聞いた。

エンジニア志望から起業家へ 道を切り拓いたハングリー精神

ーーまずは、起業までの経緯をお聞かせいただけますか。

王志敏:
日本で自ら商売をしたいという強い思いが、起業の原点です。もともと私は中国名門ハルビン工業大学で工学(金属材料と加工)を学び、技術官僚やエンジニアを目指していましたが、1987年に初めて来日した際、大きく経済成長を遂げる日本の姿に強い衝撃を受けました。これを機に日本でのビジネスを志し、1991年に留学生として来日して和歌山大学経済学部大学院に進学しました。

大学院では商売の基盤となる経営学を学び、そして卒業後には関西国際貿易株式会社の立ち上げに参画をし、取締役として中古建設機械の輸出・自転車の輸入などを手がけています。そこで貿易の実務知識を現場で身につけましたが、事業の方向性の違いなどから1999年に独立を決意しました。

ーー独立当初は、どのような事業からスタートされたのでしょうか。

王志敏:
当初は食品(キムチ・飲茶など)を輸入し、特に中華食材専用の卸業者として、東京と大阪に中国製キムチと中華食材といった、当時誰も手を出しにくかった商材の輸入を日本でいち早く開始しました。苦労って言えば、ほとんど未知な食材を扱ったので、税関での検査が非常に厳しく困難の連続でしたが、コンテナで届く大量の商材と一人で格闘しながら、すべての対応を乗り越えて市場を開拓していったのです。

生鮮野菜事業への参入と徹底した品質管理による飛躍

ーーその後、現在の会社を設立された経緯をお聞かせください。

王志敏:
輸入を続ける中で、生鮮野菜を扱う方からお声がけいただいたことが大きな転機となりました。2004年頃から日本で初めて中国産の青ネギの輸入を手がけるようになり、その後共同で会社を立ち上げる計画が進んでいました。しかし、人間関係のトラブルからその話は白紙になってしまったのです。その経験から、自らの手で責任を持って事業を展開しようと決意を固め、2006年に会社を設立しました。

ーー貴社の事業が大きく飛躍した契機は何でしたか。

王志敏:
大手コンビニエンスストアとの取引がスタートしたことです。品質管理において極めて厳しい基準をクリアし続けたことで、弊社の評価が業界内に広まり、さまざまな大手外食チェーンやメーカー・流通企業からの依頼が急増しました。私たちは表に出ない「黒子」として、徹底した品質管理で顧客企業の成長を支え、強固な信頼関係を築いてきたのです。

野菜未使用分・流通余剰分・規格外野菜のアップサイクルと「ファイトケミカル」への挑戦

ーー現在、注力している事業についてお聞かせください。

王志敏:
新たな柱として注力しているのが、「ベジバー事業」という野菜の端材(廃材)を活用した事業です。2017年に食品工場の設備を買い取った際、SDGsに関する社債を受けたことが開発の原動力となりました。農業の現場や加工プロセスでは、形が不揃いという理由だけで大量の野菜が日々廃棄されてしまうのが現状です。弊社はこうした規格外の野菜を素材化などにアップサイクルし、フードロス削減に貢献する取り組みを進めてきました。

また、2019年には研究機関と協力し、独自の工法を完成させています。現在はこの技術を応用したプロテインバーを開発しており、ドラッグストアチェーンなどに年間数十万本規模で納品する実績も生まれました。さらに、厳しい品質基準を持つ大手小売業や洋菓子メーカーとの協業により、マロンやグレープフルーツなど果物の素材化といった新たな展開も広がっています。

ーー素材化によって生み出される健康面での付加価値はどのようなものでしょうか。

王志敏:
最大の付加価値は、植物が自らを守るためにつくり出す成分であるファイトケミカル(例え、リコピンやβカロテンなどの機能性成分)の吸収効率を飛躍的に高められる点にあります。野菜の細胞壁は非常に硬いため、生で食べるだけではせっかくの栄養成分を十分に体内に吸収しきれません。

そこで弊社の特殊な加工技術を用い、ミクロン単位まで細かくすり潰して細胞壁を完全に破壊し、素材化加工しています。これにより、トマトのリコピンや人参のβカロテンといったファイトケミカルの力を最大限に引き出すことが可能になりました。現代人が抱える美貌願望や睡眠、便通の悩みなどの改善に役立つことが期待できます。こうした微細な素材加工技術を持つ企業は国内でも非常に限られており、弊社の大きな強みと言えます。

B2BからB2Cへ 自社ブランド展開と海外輸出

ーー今後は、どのような事業展開をお考えですか。

王志敏:
B2C向けに、自社ブランド(NB)を展開します。これまでは他社OEMが中心でしたが、今後は直接消費者に価値を届けます。具体的には、ダイエットや腸内環境の改善、睡眠の質の向上など、現代人が抱える悩みにフォーカスした商品を開発中です。ファイトケミカルを活用したプロテインバーやエナジーバー、黒豆(小豆)入りチョコクラスターなどをそろえ、年末にはギフトセットの展開も予定してブランド力の強化を図ります。

ーー海外市場への展開についてはいかがでしょうか。

王志敏:
国内の消費減少を見据え、東南アジアや中東地域をターゲットにした輸出事業への参入に向けた準備を加速させています。具体的には、香港と中国の商社に弊社が開発したプロテインバーとチョコクラスターを紹介し、海外展開への確かな手応えを獲得しました。今後は現在の主軸であるカット野菜事業に加えて、健康補助食品事業と海外輸出などの貿易事業を新たな柱として育てていく計画です。日本の厳しい品質基準で製造した高品質な健康補助食品を輸出し、広く世界へ届けていきたいと考えています。

ーー最後に、組織づくりと今後の展望についてお聞かせください。

王志敏:
「フィジカルAI」を見据えた工場運営と、次世代への事業承継が柱です。弊社では16年前のLED照明に始まり、顔認証システムやペーパーレス化なども業界に先駆けて導入するなど、働きやすい環境づくりに向けて常に新しい技術を活用してきました。これからの工場運営には自動化を推し進めるフィジカルAIの存在が不可欠となるため、その保守や管理を担える人材の採用と育成に強く注力していく考えです。入社時点でAIの専門知識が備わっていなくても、企業とともに成長し、働きながら学んでいく意欲のある方であれば大いに歓迎いたします。

また、あと5年を目処に専務・常務コンビへ事業を譲る計画を立てており、いかにして次の世代を育て上げていくかが目下の最重要課題だと言えます。従業員がやりがいとエネルギーを持って働けるサステナブルな会社基盤をより強固なものにし、VEH事業のさらなる推進や海外市場への挑戦を、次代を担うリーダーたちへとしっかりと引き継いでいきたいと考えています。

編集後記

誰も手を出さない領域に一人で飛び込む開拓精神と、裏方として品質を追求し続ける真摯な姿勢。王氏の言葉からは、幾多の壁を乗り越えてきた経営者ならではの熱気と力強い信念がひしひしと伝わってきた。フードロス削減や現代人の健康課題に向き合う同社の新たな挑戦が、日本から世界へどう羽ばたいていくのか。次世代へとバトンを繋ぎ、成長し続ける同社の未来に心から期待したい。

王志敏/1963年、中国河北省張家口市生まれ。翌1964年より中国黒竜江省ハルビンで育つ。1984年、ハルビン工業大学金属加工学部卒業。1994年、和歌山大学大学院経済学研究科修士課程修了。関西国際貿易株式会社の貿易担当を経て、2006年にGF株式会社を創業。

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