
法人のPC運用が複雑化する中、最適なスペックを柔軟に提供するレンタルサービスが、購入やリースに次ぐ「第三の選択肢」として注目を集めている。株式会社SSマーケットの「レンタルマーケット」は取引実績9,000社、レンタル稼働数18万台を誇る法人向けのパソコンレンタル事業だ。即日対応や事務手続きの簡略化、PCの初期設定代行などを提供し、IT専任者がいない企業でもコストを抑えて安心して導入できる体制を構築している。同社の代表取締役を務める星山常進氏は創業から顧客の要望に応えることを最優先してきた。事業拡大の背景と循環型エコノミー実現の展望をうかがった。
創業の原点と市場づくりへの思い
ーーまずは、貴社を創業された経緯についてお聞かせください。
星山常進:
私は昔から「いつかは自分で事業を始める」という思いを持っていました。そんな中、「一緒に何か面白いビジネスを立ち上げよう」と意気投合したのが、高校時代からの友人である金です。日常的に顔を合わせてはアイデアを出し合い、話し合いを重ねる中でたどり着いたのが、「パソコンレンタル」という選択肢。とはいえ、当初は潤沢な資金があったわけでも、特別な計画があったわけでもありません。ただ、やりたいという気持ちをそのまま行動に移し、八王子の小さなワンルームでSSマーケットの一歩を踏み出しました。当時はとにかく注文をいただきたい一心で、「お客様からご要望があれば、可能な限り何でも対応する」、そんな思いで、泥臭く事業に向き合っていました。SSマーケットの原点となる「断らない」というスタンスは、ここで生まれました。
「断らない」執念が切り拓いた道 一歩を踏み出す圧倒的な行動力

ーーこれまでの道のりの中で転機となった出来事をお聞かせください。
星山常進:
ターニングポイントは、熊本で学習塾を展開するお客様からいただいた大型案件です。創業当時は3〜4人の組織で、資金も在庫も十分ではない状態でしたが、その案件では3,000台のPCを希望されていました。私たちには、断る選択肢はありませんでした。お客様の要望に応えたいという強い思いがあったからです。だからこそ、どうすれば実現できるのかをひたすら考え抜きました。
さまざまなハードルをクリアし、3,000台のPCを確保する仕入れ業者を開拓し、人材や場所にも恵まれてプロジェクトを無事に成功させました。資金がないからと諦めず、まずやりたいという気持ちを行動に移し、必死に道を探った経験が現在の成長につながっています。
ーー困難な状況でも成し遂げる姿勢は、その後どのような場面で活かされましたか。
星山常進:
コロナ禍で需要が急増した際には、少人数ならではの強みを活かし、即決即断するスピード感を養えました。世の中のリモートワークの普及でレンタルパソコンの需要が急増し、これまでにないほど注文数が集中。社員の安全を守るための感染対策を徹底しながら、どうにか期待に応えることができ、SSマーケットとして大きな成長を成し遂げました。柔軟な対応力こそが、急激な変化を乗り越える原動力です。
また、事業拡大に伴う自社倉庫の移転も大きな決断でした。本来は500坪程度を探していたものの、偶然1,600坪の区画が空いており、周囲から驚かれつつも私と金は「やってみよう」と即決しました。「借りてしまえばなんとかなる」、そして「万が一スペースに余力が生じても、新しいお客様に貸し出すことで、新たなビジネスの学びが得られる」と考えた結果です。現在では、この橋本ロジスティクスなどの自社拠点をベースに約18万台の在庫を運用し、安定した品質と供給体制を構築しています。
PC運用の課題に寄り添い柔軟性とスピード感で応えるSSマーケットの強み
ーー現代の企業や、PC運用担当者が抱える課題はどこにあるのでしょうか。
星山常進:
弊社の自主調査においては、約半数の企業が「初期設定・キッティング」の対応が負担になっていると回答しました。また、調達担当者の約6割が他業務と「兼任」しており、そのうち約8割が「初期設定」や「ソフトウェア・ライセンス管理」などの負担によりメイン業務に支障が出ていると感じているデータもあります。さらに、約30%の企業が現在のPCをオーバースペックで持て余しているという実態もあります。
ーー競合他社も多い中、貴社が選ばれ続ける強みはどこにあるとお考えですか。
星山常進:
お客様に寄り添い、徹底して応える方法を考え抜く点だと考えています。基本的に1台からのレンタル対応は効率が悪いため、会社の規模が大きくなると敬遠する企業も少なくありません。しかし私たちは、効率を度外視してでもお客様のご要望を第一にしています。工夫を重ねて実現する方法を模索し続け、お客様が本当に求めているものを一生懸命に探っていく方針です。そこから新しい提案をしていく柔軟性とスピード感こそが、SSマーケットの文化に根付く最大の強みとなっています。
循環型社会を支えるインフラへ
ーー事業を成長させるためにどのような組織づくりを行っていますか。
星山常進:
枠にとらわれない発想を持ち、失敗を恐れない20代の社員などに大きな裁量権を与えています。先入観のない若手が力を発揮することで、組織の成長スピードは爆発的に上がると考えています。SSマーケットでは、自らやりたいと手を挙げる社員の意欲を尊重しています。経験の有無にかかわらず、実行力とチャレンジ精神があれば、若くして大きなチャンスを掴める社風です。
ーー今後の事業展開はどうなりますか。
星山常進:
今後の目標は、これまでの「モノを貸す」ビジネスから社会のインフラへと進化していくことです。循環型社会を支えるプラットフォームの実現を目指していきます。その核となるのが、長期利用可能なサブスクリプションサービス「Re:new PC(リニューピーシー)」の展開です。「もったいないを新たな価値」に変えるため、中古PCを独自の技術(リファービッシュ)で整備して再生を図っていきます。これにより、十分なスペックを備えた端末を適正価格でご提供し、そして企業の要件に合わせた柔軟な導入を支援することで、大幅なコスト削減と業務効率化を実現します。
専用ソフトによるデータの完全消去を徹底しているので、安全にご利用いただけます。再利用を前提とした品質管理は欠かせません。また、東京大学との共同研究を通じて、「中古PCレンタル事業が環境保護だけでなく経済的にも成り立つこと」を証明するシミュレーターを開発しました。このように、環境への配慮とビジネスを両立させる取り組みにも力を入れています。
ーー「社会のインフラ」へと進化していく上で、何が重要になるとお考えですか。
星山常進:
派手な施策を打つよりも、入り口から出口までの価値提供を一貫して行うことが不可欠です。具体的には、レンタルから回収やデータ消去までの工程を徹底的に磨き上げることです。このオペレーションの高度化により、「SSマーケットに任せればすべて安心」と言っていただける確固たるインフラを構築し、結果として循環型エコノミーの実現を牽引していきたいと考えています。
今後、ますますPCやデバイスの利用が複雑化する社会において、私たちのインフラはより重要な役割を担うはずです。これからも地域のパートナー企業と手を組みながら、日本のビジネス環境を力強く下支えしていきます。
編集後記
「お客様の要望に対して、やれる方法を考える」。星山社長の真っ直ぐで力強い言葉が胸に刻まれた。困難な状況にあっても「断らない」という執念と、リスクを恐れない決断力は、単なる幸運ではなく徹底した顧客起点があってこその必然である。効率化だけを追い求めるのではなく、目の前のお客様に真摯に向き合う姿勢こそが最大の魅力だ。「モノを貸す」企業から、社会インフラへ。先入観のない若手社員のエネルギーも駆動力に、循環型社会の実現に向けてかつてないスピードで進化を続ける同社の未来から目が離せない。

星山常進/1983年生まれ。高校卒業後、中国へ留学し延吉・大連・上海の3都市で約2年半を過ごす。帰国後、20代前半で飲食店を開業し2店舗を展開。その後、不動産営業や、中古車販売、輸入販売など複数の事業を経験し、ビジネスの土台を培う。2012年、高校の同級生である金氏(現専務取締役)とともに株式会社SSマーケットを設立。パソコンレンタルから事業を始め、顧客の要望に応じてサービスを拡充してきた経緯が、現在の経営につながっている。