※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

バイオマス発電やSAF(持続可能な航空燃料)など、環境ビジネスへの注目が高まる現代。株式会社PEO技術士事務所は、特定のメーカーに紐付かない「完全独立系」の第三者機関として、大企業から厚い信頼を集めている。代表取締役を務める笹内謙一氏は、工業炉のエンジニアから未経験のバイオマス領域へ飛び込み、所属部署の解散という転機に直面しながらも自身の信念を貫いて起業を果たした。技術とデータに基づき、忖度なく真実を率直に提示する同社独自のコンサルティングスタイルと、次世代を見据えた組織づくりについて、笹内氏に話をうかがった。

未経験からの挑戦、そして独立への決断

ーーまずは、貴社の起業に至った経緯を教えてください。

笹内謙一:
私はもともと工業炉(産業用の熱処理炉)メーカーに在籍し、エンジニアとして海外出張の多い日々を送っていました。キャリアの転機となったのは2000年代前半のことです。当時、新しい部署のマネージャーを任され、そこで初めてバイオマス事業と出会いました。これまでとは全く異なる領域への挑戦であり、非常に新鮮な気持ちで取り組んでいたのですが、事業化を目指す中で所属していた部署が解散するという壁に直面したのです。

ーーそこから、どのように独立へと舵を切ったのですか。

笹内謙一:
当時の年齢や経歴を考えたとき、元の部署に戻るよりも、自ら独立する道を選択することにしました。とはいえ、会社員時代は副業が認められていなかったため、まずは共同経営者と2人でごく少額の資本金を出し合い、土日を活用して設立手続きを進めていきました。会社の看板が外れることで仕事の獲得に苦労する懸念はあったものの、前職で培ったパイプや学会活動を通じたネットワークが大きな支えとなってくれました。業界の仲間たちと意見交換を重ねるうちに次第に相談を持ちかけられるようになり、大手企業からの案件も舞い込んでくるようになったのです。そうして実績を積み重ね、2017年に共同経営者とともに弊社を設立し、前職を退いた2019年に私が代表に就任しました。おかげさまで、現在では第10期を迎えるに至っています。

忖度なき「完全中立」がもたらす圧倒的な信頼

ーー改めて、現在の主な事業内容についてお聞かせください。

笹内謙一:
バイオマス事業への参入を検討する企業に対し、技術コンサルティングを提供しています。具体的には、バイオマス発電やSAF、バイオマス由来の化学製品化などに加え、バイオ炭(炭素貯留・土壌改良分野)も主要な業務領域としており、技術選定や事業性の計算(収益シミュレーション)、リスク評価などの導入支援を行っています。また、バイオマス先進国である欧州企業とのネットワークを活かし、日本進出のサポートや代理店開拓、技術資料の日本語化といった海外事業も重要な役割の一つです。

ーー同業他社と比較した、貴社の強みはどのような点にありますか。

笹内謙一:
最大の強みとして、いかなるメーカーにも紐付かない「完全独立系の技術士事務所」である点が挙げられます。この業界では特定のメーカーと利害関係を持つコンサルタントも見受けられる中、私たちは完全中立な第三者機関として厳格な技術鑑定を行っているのです。

加えて、技術士は技術士法第45条により守秘義務を負っています。お客様の重要な技術情報を法的な裏付けのもとでお預かりできる点も、当事務所をお選びいただく理由の一つです。

時には「どうしても事業を通したいから、都合の良い報告書を書いてほしい」と打診される場面もありますが、そのようなご依頼は断固として受け付けておりません。技術と数字の観点から「儲からないものは儲からない」「この計画では稼働しない」と、耳の痛い真実であっても正直にお伝えするようにしています。

ーー厳しい現実を伝えることは、クライアントとの信頼関係にどう作用していますか。

笹内謙一:
真実をお伝えすることが結果的にクライアントを無謀な投資リスクから救うことになり、それがかえって厚い信頼へと結びついています。こうした実績と口コミ評価により、現在ではクライアントの約8割が上場企業などの大企業となりました。リピート率も非常に高く、顧問契約として長期的なパートナーシップを築いている企業が多数存在します。

次世代へのノウハウ継承と「利益還元型」の組織づくり

ーー今後の事業展開についてお聞かせいただけますか。

笹内謙一:
今後は新たな顧客開拓として、自治体へのアプローチを強化していく方針です。これまではエネルギー系の企業が中心でしたが、欧州のトレンドと同様に、より幅広い分野へ展開していきます。地域と一体になって二酸化炭素排出量を削減する取り組みなど、企業の環境価値を高めるサポートに注力したいと考えています。海外からの最新情報を取り入れながら、堅実かつ大胆に次の一手を打っていく戦略です。

ーー組織づくりについてはどのようにお考えですか。

笹内謙一:
私自身が事業承継を意識する年代に入り、次世代リーダーとなる技術士の育成と採用、そして技術やノウハウの確実な引き継ぎが現在の最重要課題です。そのための基盤として、社員ファーストの「利益還元型」の組織づくりを進めています。会社の業績をガラス張りにし、得られた利益の半分を従業員に還元する仕組みを整えました。役員報酬を抑え、人件費としてしっかりと分配することで、少数精鋭でありながら一人ひとりが高い生産性を発揮できる環境を構築しています。技術士としての矜持を持ちながら、次の時代を担う仲間たちとともに、これからも歩みを進めていきます。

編集後記

笹内氏の言葉の端々から感じられたのは、技術者としての揺るぎない矜持と、完全中立を貫くことへの強烈な責任感だ。目の前のクライアントのためを思い、あえて厳しい現実を突きつけるその姿勢に、本物の誠実さを見た。名だたる企業が同社を深く頼る理由が、取材を通して痛いほど伝わってきた。利益を惜しみなく社員に還元し、次世代へバトンを繋ごうとする熱量ある取り組みは、激変する環境ビジネスの未来を明るく照らすはずだ。同社が描く新たな飛躍の軌跡を、これからも心から応援したい。

笹内謙一/1982年、大阪大学工学部卒業。同年、中外炉工業株式会社入社。2011年、環境・バイオマスグループ長。2013年、同理事兼部長。2019年7月、中外炉工業を退職。2019年8月、株式会社PEO技術士事務所 代表取締役に就任。国内のバイオマスガス化発電システムの技術支援や技術鑑定を多数手がける。国内ガス化装置の視察調査を定期的に実施するとともに、毎年欧州ガス化メーカーを訪問し、欧州のバイオ技術調査も行っている。