※本ページ内の情報は2026年10月時点のものです。

和歌山県を拠点に、土木・建築から災害時の復旧まで幅広い事業を手掛ける株式会社丸山組。創立70年の節目に家業である老舗企業のバトンを受け取ったのが、同社の代表取締役社長の田渕大祐氏だ。就職活動当時、家業が厳しい環境にあったことから、自身の力でキャリアを築くべく大手銀行へ入社。リテール営業や管理職として10年間の勤務を経て、金融業界の再編を機に帰郷を果たした。現在、時代に合わせた社内制度の抜本的な改革や採用強化に奔走する田渕氏に、建設業の未来像と変革への決意を聞いた。

金融業界での10年が教えてくれた経営者へのリスペクト

ーー大学卒業後の進路についてお聞かせください。

田渕大祐:
まずは大手銀行に入社しました。就職活動をしていた時期は、家業である弊社の業績が厳しい環境にあり、父からも「自分で一生働けるように就職活動をしなさい」と言われていた背景があります。私自身も家業を継ぐというよりは、自立して仕事をしていく覚悟を持っておりました。その中で、最も幅広くさまざまな業界を知ることができると考え、金融業界を選びました。

ーー大手銀行で得た学びはどのようなものでしたか。

田渕大祐:
10年間の勤務のうち、前半の5年間はリテール部門に所属し、中小企業のオーナー様に向けて営業を行っていました。そこで経営者の皆様から直接お話をうかがう中で、企業を率いる社長のすごさを肌で感じました。同じように経営者として奮闘してきた祖父や先代の社長に対する尊敬の念が生まれ、恩返しをしたいという気持ちが芽生えました。後半の5年間は山口県の店舗に異動し、窓口業務を担当する方々の管理職を務めました。そこで学んだ女性スタッフのサポートや人間関係のつくり方は、現在の組織運営にも活きています。

ーーその後、家業に入る決意をされたきっかけは何だったのでしょうか。

田渕大祐:
2018年頃からは、銀行業界の中で店舗統合や支店数の削減に加え、ネットバンキング化といった再編の動きが進んでいきます。銀行としてのあり方が変わりゆく中で、将来どのようになっていくのかと考えていた時期でもあります。ちょうどそのタイミングで、父から帰ってこないかと声をかけられました。私自身30代になり、転職などを考えるのであれば今が良い時期だと判断して帰郷を決意しました。

古き良き伝統を守りながら挑む社内制度と採用のアップデート

ーーご入社後は、どのような業務からスタートされたのでしょうか。

田渕大祐:
まずは営業部に入り、工事の受注から発注までの流れを学びました。それと並行して、当時はまだ体制が整っていなかった採用部門や広報も担うこととなりました。建設業界全体で20代を中心とした人材が不足する中、採用サイトへの掲載にとどまらず、ホームページの刷新や就職活動フェアへの出展などを行いました。手探りながらも弊社の魅力を伝えるための発信を強化していきました。

ーー採用活動の他に、社内で新たに取り組まれたことはありますか。

田渕大祐:
社内制度の改革に力を入れています。創立70周年のタイミングで社長に就任し、改めて過去の会社の実績を振り返ってすごいなと思うと同時に、今後も生き残っていくためには会社をより良くしていかなければいけないと痛感しました。そこで、今の時代に合っていなかった社内制度のアップデートを継続して行っています。具体的には、年間休日の増加や、給与、評価制度、従業員規則の見直しなどです。働きやすさを向上させ、社員が長く安心して働ける環境を整えることが、結果として採用の強化にもつながると考えて取り組んでいます。

ーー現在の事業内容についてお聞かせください。

田渕大祐:
事業としては、土木と建築が半々、そして公共工事と民間工事も半々の割合で手掛けています。耐震工事や道路舗装、災害時の復旧工事など、規模の大小にかかわらず幅広く対応できるのが強みです。また、こうした現場を動かす上で、協力会社との連携は欠かせません。昔からお付き合いのある協力会社の皆様とは「丸山組安全協力会」という組織で連携をとっており、長年の信頼関係を大切にしながら事業を進めています。

建設業は命を守る仕事 胸を張って見せられる背中を

ーー現場で働く社員の方々に向けて、日常どのようなメッセージを伝えていますか。

田渕大祐:
折りに触れて、「今の自分の行動を子どもに胸を張って見せられるか」という話をしています。大人になると忘れがちですが、「ありがとう」「ごめんなさい」といった基本の挨拶を徹底することが何より大切です。社員一人ひとりが現場で地域の皆様に見られているという意識と、丸山組が70年築き上げてきたブランドの看板を背負っているという自覚を持ってほしいと伝えています。

ーー最後に、今後の会社の展望や建設業界に対する思いをお聞かせください。

田渕大祐:
外の世界を見たからこそ、建設業は社会になくてはならない仕事だと強く感じています。たとえば災害が起きた直後、緊急車両が通れるように瓦礫を撤去し、道を切り拓くのは地元の建設業です。間接的ではありますが、人々の命を守っている素晴らしい職業だと思っています。今後、技術の進化とともに現場職の価値がさらに見直されていくでしょう。その中で、次世代に「建設業はかっこいい」と思ってもらえるような発信を続け、より良い会社づくりに邁進していきます。

編集後記

「建設業は一番人の命を守っている仕事」。外の世界を知る田渕氏だからこそ語れるこの言葉には、業界に対する深い敬意と熱烈な誇りが込められていた。客観的な視点で自社の課題と真摯に向き合い、歴史ある企業の看板を守りながらも、時代に合わせた柔軟なアップデートを推し進める同氏。当たり前のことを大切にし、子どもに胸を張れる仕事を追求する株式会社丸山組の挑戦は、これからも地域社会を力強く支え続けていく。

田渕大祐/1986年、和歌山県生まれ。関西大学卒業。三井住友銀行・リテール部門で約10年間勤務。2019年に株式会社丸山組へ入社。2025年の丸山組創立70周年を機に同社代表取締役社長に就任。採用や広報活動にも注力している。