※本ページ内の情報は2026年10月時点のものです。

学生時代に立ち上げた事業の経験から「経営の本質」を学ぶべく、あえて過酷なスタートアップ環境へと身を投じたクイック・ネットワーク株式会社の代表取締役社長、田畑翔利氏。そこで培った圧倒的な行動量と、起業準備中に訪れたケニアでの原体験が、のちの画期的な事業構想へとつながっていく。同社は、一般の方が愛車を出品し、事業者が購入するCtoBのインターネットオークション「勝ち抜き査定 セルカ(以下、セルカ)」や、事業者向けプラットフォーム「Quick×Quick(クイッククイック)」を展開。中間業者を省くデジタル化で中古車流通に変革をもたらす同氏に、起業への道のりから組織の課題、そしてグローバル展開を見据えた今後のビジョンについて詳しくうかがった。

経営の本質を求めた学生時代から過酷なスタートアップでの修業へ

ーーまずは、キャリアの原点をお聞かせいただけますか。

田畑翔利:
私はもともと親族の多くが自身でビジネスを展開しているという、事業を行うことが当たり前の環境で育ちました。そうした背景もあり、経営とはどのようなものかを知るために高校生の頃から「大学へ進学したら一度ビジネスを経験しておこう」と考えていたのです。実際に学生時代に自ら事業を立ち上げ、イベント運営や、実家が車業界だった縁から事業者向けオークションを利用した車のトレーディングなどを手がけていました。

ーーそこからスタートアップへ入社された経緯をお聞かせください。

田畑翔利:
事業を行う中で、小規模の取引経験だけでは経営の本質を学ぶことはできないと感じたからです。「大学卒業後はグローバルで戦える大きなビジネスをつくる」という目標を持っていましたので、その目標から逆算し、会社のつくり方や急成長の過程を体感するために、あえて過酷なスタートアップ企業に入社したのです。

当時は入社前から「3年の間に起業する」ことを心に決めており、実際に日本一働く覚悟で仕事に臨んでいました。「現在の2倍の仕事をください」と自ら手を挙げるなどして、最速で経験を積んでいきました。具体的には新規営業から始まって、1年目の終わり頃にはマネージャーを兼任するようになり、その後も事業部全体の副部長や新規事業の立ち上げなど、経営に近い業務を圧倒的な行動量でこなしていましたね。

アフリカで確信した日本の中古車直販モデル

ーー起業のアイデアとなる原体験は、どのようなものだったのですか。

田畑翔利:
起業準備の期間にアフリカのケニアへ渡ったことがきっかけです。ケニアを訪れた際、現地の車に日本語の音声案内や地図データがそのまま残っており、「Used in Japan」の車の価値が非常に高いことを肌で実感しました。

日本の中古車が世界市場において評価が高い理由は、大きく3つあります。1点目は、日本には世界一厳しい車検制度があること。2点目は日本の道路は整備が行き届いており、足回りが傷みにくいこと。3点目は日本人の体格が小柄で内装がきれいに保たれていることです。これらの理由から海外需要が非常に高いのです。

ーーその気付きから、現在の事業モデルへとどのようにつながっていったのですか。

田畑翔利:
日本の売り手と海外の買い手を直接つなげば、双方がハッピーになる画期的なモデルをひらめきました。従来の流通構造では、車が売り手から次の使用者に届くまでの間に複数の中間業者が介在し、その過程で中間マージンが発生します。それらの過程を省き、直接つなぐことができれば大きな価値を生み出せると考え、「セルカ」を立ち上げました。

ただ、いきなりグローバル展開を目指すことはしませんでした。当時はネットで車を売買する文化が国内外ともに根付いておらず、両方の市場を同時に開拓するには莫大なマーケティング投資が必要になるためです。そこで、まずは第一フェーズとして、国内のCtoBから着手することにしました。日本国内で車を売る際に必ず使われるサービスになれば、後から海外の買い手を入れることは難しくありません。私たちには「Used in Japan」という強烈な武器があるため、この仕組みは「理論上絶対に成立する」という強い確信がありました。だからこそ、2017年にCtoB事業の「セルカ」で起業した初期の、赤字が続き追い詰められるような時期も乗り越えることができたのです。その後、2021年にはBtoB事業の「Quick×Quick」を展開するクイック・ネットワーク株式会社と事業統合を行い、現在の体制へと至っています。順調に売上を伸ばしてきた現在も、当時の確信が私たちの根底にあります。

透明性の高い「セルカ」と事業者間をつなぐ「Quick×Quick」の相乗効果

ーー改めて、現在展開されている事業について特徴や強みを教えてください。

田畑翔利:
現在は、一般の方が出品して事業者が購入するCtoBインターネットオークションの「セルカ」と、事業者間BtoBマーケットプレイスの「Quick×Quick」という2つの事業を展開しています。いずれも、車を売る側・買う側の双方にメリットを生み出す仕組みです。

「セルカ」の最大の特徴は、一般のお客様が多数の事業者を相手に、愛車をオークション形式で売却できることです。多くの事業者が競り合うことで、売り手には愛車の高値売却を目指せるというメリットがあります。一方、買い手にとっては、中間業者を省くことで中間マージンが抑えられ、車両を比較的安く仕入れられる点が大きなメリットです。また、業者から仕入れる車両に比べ、補修などによって状態が分かりにくくなる前の一般ユーザーの車両を仕入れられるため、車両の素性や本来の状態を見極めやすいという利点もあります。

「Quick×Quick」は中古車販売店が保有する在庫車両を事業者間で共有し、売買できるBtoBのマーケットプレイスです。買い手は自社で在庫を抱えることなく、他社が保有する車両をお客様に提案できるため、販売機会を広げられます。売り手にとっても小売りで売れ残った車を他の事業者へ販売することで、在庫の長期化を防ぎ、回転率を高められます。

ーーこれら2つの事業間で、どのような相乗効果が生まれていますか。

田畑翔利:
両事業の顧客層である事業者が重なっているため、相互送客や仕入れの相乗効果が生まれています。セルカで買い取った車をQuick×Quickに出品することや、Quick×Quickの会員がセルカで仕入れを始めることもあり、非常にシナジーを生みやすい環境になっています。

流通総額1000億円を見据え、グローバルなプラットフォームへ

ーー今後の事業目標と、長期的な展望についてお聞かせください。

田畑翔利:
中期目標として、2028年度に流通取引総額(GMV)1,000億円、年間取扱台数4.5〜5万台を目指しています。そのためにも集客力を強化し、より多くのお客様にサービスを認知していただくことが重要です。

さらに長期的な展望としては、中古車業界でのトップクラスとなる年間取扱20万台の達成を目指しています。そこまで到達すれば、車を売るならセルカという認知が当たり前になるはずです。そして、海外からの買い手を本格的に呼び込み、世界をつなぐプラットフォームへとグローバル展開を進める考えです。

ーー最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

田畑翔利:
新規事業も含め、弊社は現在全職種で人材を募集しています。車への興味はなくても構いません。新しいビジネスモデルやビジネスそのものを面白がれる優秀な人材に集まってほしいですね。ぜひ私たちと一緒にグローバルなビジネスをつくっていきましょう。

編集後記

「理論上絶対に成立する」という確信を胸に、厳しい赤字期をも乗り越えた田畑社長の言葉には、熱く揺るぎない信念を感じた。自らの足で訪れたケニアでの原体験と、現状の枠にとらわれず最速で突き進む圧倒的な行動力に深く心を動かされる時間となった。売り手と買い手を直接つなぎ、世界中を巻き込むグローバルなプラットフォームの実現へ向け、さらなる飛躍を遂げる未来に大きな期待を寄せたい。

田畑翔利/大学在学中から事業の立ち上げを経験。大学卒業後、2014年にwebマーケティング領域のスタートアップ企業に入社。入社1年目でマネージャーに就任、3年目に事業部長として数十億円規模の事業を統括。2017年3月に同社を退社後、アフリカへ渡りグローバルプラットフォーム構想をひらめき、同年10月にSellCa株式会社を設立。2021年に「Quick×Quick(クイッククイック)」を展開するクイック・ネットワーク株式会社と事業統合を行い、現体制へ。