
福岡発のITベンチャーで、クラウドやAIなどを組み合わせた「技術結合力」を強みに、システム開発やコンサルティングを手掛ける株式会社Fusic。公的研究機関との取引や宇宙産業において独自の技術力を発揮し、「OSEKKAI×TECHNOLOGY(おせっかい×テクノロジー)」というブランドスローガンを軸に成長を続けている。創業から20年目となる2023年に見事上場を果たし、現在は東京にも拠点を構えるなど、さらなる事業拡大を続けている。福岡にとどまらず世の中に「爪跡」を残そうと挑戦し続ける代表取締役社長の納富貞嘉氏に、創業の背景から今後の展望までを詳しく聞いた。
福岡への愛着と「何もない」から始まった挑戦
ーーまずは、これまでのご経歴と創業のきっかけを教えてください。
納富貞嘉:
学生時代は福岡で過ごし、地元の高校から九州大学の大学院まで進学しました。いつか起業したいという思いがありつつも、「何を」「どこで」始めるのかということは全く決めていなかったのです。当時は、将来の選択肢を狭めたくないという理由で情報系の学科を選びました。その後、いざ就職活動で東京の外資系企業などを受けてみたものの、そこで働くイメージが全く湧かず、もともとあった起業への思いが強まりました。それならば、私自身が慣れ親しんだ福岡で起業しようと決意し、大学時代の同級生(現取締役副社長 浜崎)とともに会社を立ち上げたのです。
ーー創業当時、特にご苦労されたことはありましたか。
納富貞嘉:
実は、大変だと思ったことはあまりありません。ビジネスを学ぶために企業で社会人経験を積まれた方が独立するのであれば、サラリーマンと経営者とのギャップや苦労を感じるのかもしれません。しかし、私たちはそういった社会人経験がない状態でのスタートでしたので、「こういうものだろう」とひたすら一生懸命に取り組んでいただけでした。そのため、取り立てて深刻な危機を感じることもなく、目の前のことに無我夢中で向き合ってきたのです。
エンジニアが直に寄り添う「OSEKKAI」な技術集団

ーー貴社の事業内容と、お客様から評価されている強みについて教えてください。
納富貞嘉:
弊社はシステム開発にとどまらず、コンサルティングから一貫して課題解決を行っています。最大の特徴は、技術を深く理解したエンジニア自身がフロントに立ち、お客様と直接コミュニケーションをとる点です。お客様のご要望の背景まで理解したうえで、開発の知見を生かした最適な技術と解決策をスピーディーに提案できます。AIやIoTなど、多様な専門スキルを有するエンジニアが知識を総動員して最適なものを提供できる点が、高く評価されていると考えています。
ーー宇宙産業や公的研究機関との取引にも注力されているとうかがいました。
納富貞嘉:
宇宙事業では、公的研究機関や民間企業との取引を通じ、人工衛星データの管理や地上局のシステム開発などを行っています。宇宙分野は新しい産業として民間にも情報が開かれ、ビジネスとして非常に魅力的になってきました。弊社が掲げる「OSEKKAI×TECHNOLOGY」という理念のもと、高い技術力を武器にお客様の課題へ一歩踏み込む姿勢が、こうした最先端の分野でも生きていると感じます。
ーー「OSEKKAI」という理念は、社内でも浸透しているのでしょうか。
納富貞嘉:
たとえば社内のチャットツールで誰かが技術的な悩みを書き込むと、他のエンジニアたちが我先にと解決策を出し合う文化があります。少人数で担当しているプロジェクトに見えても、実は裏側で多くのエンジニアがおせっかいを焼いて支え合っているのです。この風土が心理的安全性を高め、自由な意見交換を促しているのかもしれません。結果的にエンジニアとしての価値をさらに高めることにつながっていると考えています。
福岡から全国へ 世の中に「爪跡」を残す組織づくり
ーー上場を目指された背景と、そこに込めた思いを教えてください。
納富貞嘉:
IT技術が社会のインフラとなる中、企業の信用力を高めることが事業の可能性を広げると考えたからです。また、日本の上場企業の大半が東京に一極集中しており、福岡をはじめとする九州には上場企業が非常に少ないという現実への違和感もありました。私たちが福岡で上場し存在感を示すことで、優秀な人材が集まると信じています。この地に新たな産業が集積していくための呼び水になれればという思いがあります。
ーー福岡にとどまらず、東京進出もされていますね。
納富貞嘉:
宇宙事業や研究機関の情報、そして専門性の高い人材はどうしても東京に集まりやすい傾向にあります。そこにしっかりとリーチするため、東京支社を開設しました。本社は福岡に置きつつも、首都圏でのビジネスも拡大しています。それに伴い東京でも積極的な採用を行っています。高度な技術や専門性を有するハイレイヤーな方々をはじめ、経営企画や財務など新しい事業を共につくり上げていく仲間を広く募集しています。
ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。
納富貞嘉:
会社として、世の中にしっかりと「爪跡」を残していきたいですね。会社の規模拡大や時価総額を伸ばすことで、多様な人材がワクワクしながら働ける環境をつくりたいと考えています。「九州に戻りたいけれど環境がない」と悩む方々の受け皿にもなれるように。そして何より「福岡にこの会社があってよかった」と地域の方々や社会全体に思っていただける企業へと成長を続けていきたいと思います。
編集後記
「OSEKKAI×TECHNOLOGY」。納富社長の口から語られたこの言葉に、株式会社Fusicの魅力が凝縮されていた。高度な技術を持ちながらも、それをひけらかすのではなく、顧客や仲間のために惜しみなく発揮する温かな人間性。そして、福岡への深い愛着を胸に抱きながら、東京進出や宇宙事業といったスケールの大きな挑戦を続ける同社の姿勢には、地方発ベンチャーの新しい可能性が満ち溢れている。社会に確かな爪跡を残そうとする同社のさらなる飛躍が楽しみだ。

納富貞嘉/1978年、福岡市生まれ。九州大学工学部、同大学院システム情報科学府を修了。大学院に在学中の2002年、友人である浜崎 陽一郎(現・取締役副社長)とともにシステム開発事業を立ち上げる。2003年、法人化に伴い株式会社Fusicを設立し、代表取締役社長に就任。現在に至る。