※本ページ内の情報は2026年10月時点のものです。

大阪を拠点に、世界中のプロシェフや家庭から愛される包丁を手がけるマック株式会社。創業者の時代から「使い心地」に徹底的にこだわり、独自の製法で生み出される包丁は、スポンサーのつかない海外の厳格な品質テストでも1位を獲得するなど、絶大な支持を得ている。1986年に入社し、2010年に代表取締役社長に就任した小林克人氏に、機械化が進む現代においても決して譲らない品質へのこだわりと、今後の展望について話を聞いた。

創業者の原体験から生まれた「先が丸い包丁」

ーーまずは、これまでのご経歴を教えてください。

小林克人:
1986年に家業である弊社に入社しました。最初は経理や貿易の書類作成などを通して、会社の基礎を学ぶところからのスタートでした。私は子どもの頃から、創業者である父が自らキッチンに立ち、「ここの使い心地が他とは違う」と包丁について語るのを聞いて育ちました。父は自ら試作品をつくり、自分が納得するまで改良を重ねる人でした。常に「今よりもっと良いものを」と探求し続ける父の背中を見て育った経験が、現在の私のものづくりへの考え方に深く根付いています。

ーーご自身も貴社の包丁を使ってこられたのですね。

小林克人:
はい。ただ、子どもの頃は家にあるのがうちの包丁ばかりだったので比較ができませんでした。あるとき、友人の家で別の包丁を使った際に、その違いに驚いた記憶があります。

父はアメリカに留学していた際、アルバイト先で包丁の先が折れてしまい、グラインダーで丸く削って使っていました。「これでも十分使えるし、安全だ」と気づいた経験が、後に編み出した「先の丸い包丁」の原点です。自ら使い、試行錯誤を繰り返す文化は、今のマックにも深く根付いています。

手作業に宿る圧倒的な品質と世界が認める実力

ーー貴社の包丁は海外でも高く評価されていますが、どのような点が支持されていますか。

小林克人:
アメリカの有名雑誌などが独自に行っている、広告費に左右されない厳格な品質テストで高い評価をいただいています。メーカーがお金を出して評価を買うようなものではなく、編集部が自ら市場の包丁を買い集めるんです。そして、切れ味やバランス、サビへの強さなど何十項目にもわたるテストを行い、完全に忖度なしの実力だけで評価されます。弊社は、その中で1位を獲得したり、過去10年間の蓄積の中からベストな包丁として選ばれたりしています。私たちが評価されているのは、やはり圧倒的な切れ味の良さと、それが長持ちする点にあると思っています。

ーーその品質を維持するために、どのようなこだわりがあるのですか。

小林克人:
包丁は1本ずつそれぞれ重さや厚みが微妙に異なります。焼き入れをすると曲がってしまうため、まっすぐにする工程がありますが、そこから先の刃付けは人間の感覚に頼るしかありません。薄いところは力を抜き、厚いところは少し力を入れる。このミクロの調整は、機械やロボットには決してまねできません。他のメーカーが効率化を優先して工程を減らす中、私たちは手作業による刃付けを何よりも大切にしています。

ーー子ども用の包丁であっても、そのこだわりは変わらないのでしょうか。

小林克人:
子ども用であっても、本当に切れるものでなければ逆に危ないですし、妥協は許されません。社員に対しても、少しでも品質に納得がいかなければ弾くように徹底しています。テレビ番組で紹介された際にも大きな反響を呼びました。どんなに数が求められても、切れ味を落として出荷することは絶対に許されません。

職人を育成し感動の切れ味を次の世代へ

ーー需要が拡大する中で、品質と生産数のバランスをどのようにとっていくのですか。

小林克人:
今は海外からの需要も非常に高く、生産が追いついていない状態です。しかし、刃付けの仕上げなど、職人の感覚が必要な部分は必ず人の手で行います。それ以外の部分で機械化できるところを探りながら、生産性を向上させていく方針です。協力してくださる企業の工場にも、日頃から直接話を聞きに行っています。関係性を深めることで、品質を保ったまま生産できる体制を維持しているのです。

ーー今後の展望についてお聞かせください。

小林克人:
まずは自社工場を少し拡大し、さらに5年、10年先には、大阪や東京などに専門店や拠点を出したいと考えています。そこで一から職人を養成し、品質を保ったまま、日本国内はもちろん海外の方にも広く届けられる体制をつくっていくのが夢です。

包丁の切れ味が変われば、食材の繊維を潰さずに美味しく調理でき、日々の料理が楽しくなります。その感動を、一人でも多くの方に体感していただきたいですね。

編集後記

海外の厳格なテストで実力を証明し、世界中の料理人から愛されるマックの包丁。その裏には、創業者の時代から受け継がれる、使い心地への並々ならぬ執念があった。効率化の波に逆らい、職人の手作業によるミクロの調整を守り抜く小林社長の姿勢からは、ものづくりに対する確固たるプライドが感じられる。切れ味という本質を追求し続けるマック株式会社が、これから国内外でどのような感動を切り拓いていくのか、今後の展開が非常に楽しみだ。

小林克人/1964年生まれ。1986年マック株式会社に入社。常務取締役を経て2010年、代表取締役社長に就任。長年にわたり「切れ味」と「使いやすさ」に徹底的にこだわり、感動を生む包丁づくりを追求。お客様の驚きと喜びのために、職人が一丁一丁に心を込めて仕上げるものづくりへの情熱とこだわりを胸に、新たな挑戦を続けている。