nms ホールディングス株式会社 製造業界を変える。一代で800億企業を創り上げた経営者の成長物語 nms ホールディングス株式会社 代表取締役社長 小野 文明  (2023年3月取材)

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インタビュー内容

価値観(経営理念について)

【小野】

結局それは働いている社員達が現場からどんどん上がって来て、今色んな幹部になっている人が多いので、学歴も大学出てるとか、大学院出てっていう人間も殆どいなくて、高卒とか下手すれば、高校中退とかいう人間も多いんですけど、そういう人たちから見て上場会社っていうのは、とてつもない雲の上の存在なんですね。

そういうコンプライアンスを守って、ちゃんと社会の公器として認めていただけるような会社にしたいっていうのが原動力だったんですけれども。その為には経営理念を我々が行く道標を作らなきゃならないという事をずっと考えていて、会社に今相談役でいらっしゃる山田さんが、その方が中心になってKJ法っていう川喜多二郎っていう人の問題解決手法を使って、その当時の幹部と一部一般の社員も全部巻き込んで、皆でどんな会社にしたいんだとか、我々は何を目指しているんだって事を全部ピックアップして分析して、結果として今の経営理念を作り上げたんですね。

これは社長である私が、自分のモットーで作ったわけでもなければ、幹部だけでもない。要するに現場の社員からも意見を聞いて、この会社がどうしていきたんだって事を改めて再定義したものを作ったので。だからうちの起業の文化とか社風っていうのは、全てこの経営理念をベースにして出来上がっていると。

なので結果としてはうちは後から入った人に言われて気付いたんですけど、派閥がないんですね。後から入って来た人が苦痛無く入って来れるという組織風土を作ってあるのも意図的なものではなくて、やっぱり皆が、自分たちのアワーカンパニーという事を標榜しているので、そういう意味では垣根が無くて、自由な雰囲気は残っていると思いますね。

事業(会社の特徴)

【小野】

うちはneoEMSというビジネスモデルを標榜しておりまして、これは人材ビジネスとモノづくりが合体したものなんです。

ようするに製造を色んなメーカーから受託して、モノづくりを全部引き受けて納めるというのがEMSなんですけれども、ただそこには部品調達とか製造のモノづくりはありますけど、人が介在していないんですね。我々は人材ビジネスから発祥したので、その人材ビジネスとEMSが合体したneoEMSを標榜していると。だから一気通貫で川上から川下までやるようなメーカーが丸投げできるようなそういう仕事の形態をうちがやっているという事に関しては、まだ他の追随はそんなに許していないだろうというのが、特徴のひとつと。

もう1つは海外展開ですね。日本の製造の派遣請負分野の会社で、海外展開している会社は非常に少ないんですね。そういう意味では海外展開をきちんと地に足をつけてやっている会社というのは多分うちだけなので、そこも他社と決定的に違うところかなと。これは元々僕の考えでそのうち日本の中では、どんどんモノづくりが海外に出て行くだろうと、そうすると当然お客様のニーズとしては、海外でも同じようなサービスをしてほしいというのが、数年前から出ていましたので、それに合わせて我々も日本でやっているノウハウを海外に持っていって、海外のローカルの人材を使いながらそこも差別化していくと、さっき言っていたneoEMSの部分に戻ると、志摩電子とTKRという会社は完全なモノづくりの会社ですから、こんな会社をグループに持ってる企業もうちだけなんですね。

中国が今回、日経新聞に載りましたけど、政府系に近い期間をうちがM&A(子会社化)しましたので、これは全土から人を集められるライセンスとか、中国全土の同じような政府系機関とネットワークを持つ事が出来る起業なので、こういうものを持っている会社は中国の民間でもないんですね。そういううちが得た武器を使ってこれから、より優秀な人材とかやる気のある人材を中国の方から持って来て。今うちは無錫と深センという2ヶ所に機関がありますから、日本企業に向けて人を提供していくという事ですね。

キャリア(必要とする人材)

【小野】

ベトナムの方とか中国の方とか本社にもいますし、あとはさっき言ったように海外から技術者として採用して、うちのワーキングビザで来ている方は全部、設計部隊の中でも活躍をしてくれています。

それともっと大事な事は今海外の会社とか工場とか、M&Aも拡大していますのでそこで優秀なスタッフが、沢山育っていますので。彼らは例えば、中国で優秀なスタッフをタイにもって行こうかとか、ベトナムで頑張っている社員をラオスとかカンボジアの責任者にしようかとか、そういう人間を使って今度はインドに進出しようかとか、経営理念にも書いていますけれども、どこの人間だからどうじゃなくて、我々は人というものがグローバルに展開する時に、国籍とか人種を問わずに優秀な方を抜擢するという事を標榜してるわけですから、そういう方々が次の世代のリーダーとか、次の進出先のトップや幹部になるといった事を、全然それは問題ではないわけですね。

多分将来はそういうローカルで育った幹部達が、どんどん実績を上げて、そこの役員になったり、もしくは本社の役員として入って来たりしながら、今度日本で行われるヘッドオフィスの会議は、色んな人種が沢山いて、英語でやっているんだろうなと、そのイメージですね。

それが我々のやるべき仕事、世界のモノづくりを我々が日本のモノづくりをベースにしてこれから広げていくわけですから、そういう意味では多種多様な人材人種が存在している事が望ましいという事だと思います。

【小野】

色んな所から寄せ集まって来た人間たちで構成された会社なので、上場を目指したり、海外展開しながら、もっと皆が少しでも誇りに思えるような会社にしたいと。その中で社員達は、頑張ってやってきてくれたわけですけれども、私がいつも色んな社員に言っているのは、他社から引き抜かれるような社員になってくれと。一騎当千とまではいかないまでも、一騎当十ぐらいですね。10人前くらいの仕事をするような人間だっていう風に、同業他社から思われたら多分うちに報酬をもっと払うから来てくれないかとか、こういうポジションに応じるから来てくれないかとか、言われる事もあると思うんですね。そこで転職されたら困るんですけど、そのくらい、いいなあいつはと思ってくれる社員になってほしいと。そういう社員になってくれたら、うちの会社はもっと伸びていくだろうし、もっと自分達がやりたい事をきちんと出来る会社になるだろうと思うんですね。

最悪引き抜かれてもいいんだけれども、そのくらいの気持ちでやってほしいし、うちの会社になんとかしがみつくという発想もやめてほしいですね。うちを出て行っても、俺はちゃんと物になるとか、大丈夫だっていうぐらいの気概をもってやってくれないと、次の事業展開も進んでいかないし、新しい事も始められないので、枠にこだわらず、がんがんやれる社員になってほしいという事をですね。その上で自分達の生活を守って、自分達の幸せを築いていってほしいなと思います。

プライベート(尊敬する人達)

【小野】

山田さん(相談役)がうちに来てもう15年ぐらいになるんですけど、とても謙虚で思慮深くて、なおかつ好奇心旺盛な方なんですね。

兎に角我々は山田さんが入られてからずっと色んな指導を受けて、非常にきめ細かく熱心にやっていただいたので。最初はとても優しくやってくれて、だんだん厳しくなってくるという。なんとかよちよち歩きの我々を助けてあげようという気持ちの中で、本当にご自身が持っている知識とか経験を余すところ無く伝えていただいた方なんですね。

某ゲーム機メーカーさんの契約をする時に、うちは初めて参入したので、コンペがあって、その時は山田さんもいらっしゃって、小さな工場を借りてそこに本社のほうが見て回って、どの業者にするのか決める材料にしたわけですね。その時に我々は何も無くて、借りた工場も本当に小さい工場で、これじゃあ難しいと言っていたんですけど、山田さんが一言ですね、みんながいるじゃないですかと。設備が無くても、工場が小さくても、今日は一日皆で笑顔で迎えましょうと言ってくれたんですね。何もなくても自分たちが、必死になってやるという気持ちがちゃんと笑顔と行動で出ていれば、負けてもいいんですよと言ってくれたんです。

結局コンペには勝ったんですけれど、あの時の事はまだ忘れられないですね。そんな事沢山あるんですけど、その時は気付かなかった事もあったりですね。何年か経ってから、あの時山田さんが言ったことは、こういう事だったんだなって事を僕意外の幹部も感じることが多くて、思い返すと、あの時はこういう気持ちで、言ってくれたんだなっていう事が後から分かる事が多くてですね、本当に尊敬するし、ああいう人生を送りたいなと思うような方ですね。

尊敬しているのは、うちの親父と山田さんなんですけどね。今自分が父親になって、死んだ親父の事を思っていると、なんて大変な事を一生懸命やってくれたんだとうなっていう事と、言葉が上手ではなかった人なんですけれども、態度とか背中で、もしくは死ぬ間際の色んな行動も、息子である私に色んなことを伝えようとしたんだなという事を本当に感じて、親父のやってきた事に比べれば、ただ社長っていうだけで、たいしたこと無いと思うんですよ。

そういう人達が今日本には沢山いるのに、おかしいと思うんですよね。そういった意味で父親を本当に尊敬しているし、相談役の山田さんは彼がいなかったら、我々は今ここにいないくらいお世話になっているので、尊敬するとかいうよりも、無くてはならない存在の人達。他にも沢山いるんですけどね。

他にも沢山我々のために色んなアドバイスをしたり、叱りつけてくれたお客様も含めて、本当に皆さんがいなかったら、我々はこうやって今給料もらって、生活出来なかったと思います。ありがたいと思います。

【ナレーター】
モノづくりを設計・開発から、修理・カスタマーサービスまでトータルにサポートする「nmsホールディングス株式会社」。

国内32拠点、国外では10の国と地域において31拠点で事業を展開し、製造・生産現場に人材を派遣するHS事業、大手家電メーカー等向けに電子機器等の設計や製造の受託業務を行うEMS事業、社会インフラに不可欠な各種電源の開発・設計を行うPS事業の3つの柱を擁する。

近年では40代~60代の人材や海外人材を積極的に採用しており、さらなるグローバル企業へ進化すべく、挑戦を続けている。

製造業の人材派遣における課題解決のために立ち上がった経営者の軌跡と、彼が見据えている展望とは。

【ナレーター】
自社の強みについて、小野は次のように語る。

【小野】
当社は、EMS事業やPS事業と人に関するビジネス(HS事業)が共存しているのが大きな強みです。

人に関するビジネスが他の事業と共存している会社は何社かありますが、おそらく当社ほど自前で人材を調達してきたところはないと自負しています。

人材調達のネットワークを独自に築いて、ローカルの人材に頼ることなく、まず自分たちで人材を調達する仕組みを立ち上げようと考えたんです。政府との折衝や法的な解釈、それに順応するための制度設計なども全部自分たちでやってきたんですね。

そこから築き上げた人脈に関しては、信頼が積み上げられていると感じています。何か困ったことがあったら彼らに相談することもできますし、何かアクシデントがあっても乗り切れるような体力がついたんです。

それらをやってきたからこそ、当社より後に育っていったパナソニックやソニーから、事業を継承することができたと思います。金額の設定や契約の仕方などもすべて自前でできましたので、そういった部分が強みだと感じています。

あとは、モノづくりに特化した人材の育成も当社の強みのひとつですね。

人が会社に入ったり、辞めたりという流れは業界的に多いのですが、当社にはずっと現場で頑張ってくれている10年選手の社員もいます。長く働いてくれている彼らはやはり財産だと思いますね。

そういう方々が今、支店長になったり、現場の管理者になったり、トレーナーとして人を指導する役割を持っていたりと、各方面で活躍してくれています。

中には海外に赴任している社員もおり、海外を含めた事業の横展開やEMS事業の拡大にきちんとシフトできていると感じています。

【ナレーター】
小野のキャリアの転機は社長就任時にある。1996年にnmsホールディングスの前身企業に入社。取締役を経て、2002年に代表に就任した。当時の心境について次のように語る。

【小野】
最初に感じたのは、「今の社員をちゃんと守らなければいけない」とか「会社の業績を落としたくない」というプレッシャーでした。

もうひとつ強く感じたのは、「この業界を変えたい」という思いで同業から転職し、事業部が独立して社長になったため、「これからは社長として大なたを振るえるな」というのはありましたね。

【ナレーター】
小野は当時から製造派遣において、適材適所に人材が配置されていないことを問題視していた。どうすれば解決できるのか。熟考の末にたどり着いたのが、後の主力事業になったHS事業だった。

【小野】
社長就任時には、製造派遣が解禁されていませんでした。しかし、その後小泉政権で派遣法に製造派遣が含まれることになり、一気に加速しました。

しかし、製造業はただ人を派遣して賄えるものではなくて、モノをつくらなければならないため、モノづくりをできない人間を送ってもあまり意味がありません。

我々がちゃんとモノづくりをできる人材を教育して送り込み、ラインの中でお客様の社員と同等か同等以上の力を発揮するようにしないと、この業界自体が生き残ることもできないし、働く人たちも誇りを持てないと感じたんです。

そのため、政策が解禁した後も、当社はずっと製造派遣を標榜していました。同じことをしていた同業者は、私の知るところではいませんが、その中でも当社は自分たちの信念を大切にしてきました。

どうしてかというと、そのころはまだ年商が100億に満たないような会社でした。そのため、同業者に勝つためにはやはり他社と違うことを提案しなければならないし、少し違うアプローチをしなきゃならないと考えたのです。

人材教育も当社が担当すれば、お客様の手間がかからなくなります。実際のニーズもこちらのほうが高く、ニーズに合ったサービスを提供することで、当社は成長してきました。

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経営者プロフィール

氏名 小野 文明
役職 代表取締役社長
生年月日 1959年2月1日
出身地 長崎県
座右の銘 臥薪嘗胆
愛読書 青春の門/五木寛之 著
尊敬する人物 SBIホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長 北尾 吉孝氏
略歴
1994年、教育・研修事業を経て、モノづくりのベースとなる「人材」そのものに関わる仕事がしたいとの思いから、製造分野を中心とした派遣・請負に携わる。

1996年、移籍したテクノブレーン株式会社で新たにアウトソーシング事業を立ち上げ、1999年、製造分野を中心とした請負事業を行う会社(1985年設立、当社の前身会社)と合併。アウトソーシング事業の営業権を譲受し、事業責任者として事業拡大を推進。

2000年9月、社名を「日本マニュファクチャリングサービス株式会社」に変更、2002年4月同代表取締役社長に就任。

2017年4月からは持ち株会社体制に移行、nms ホールディングス株式会社へ社名変更し、現職。

会社概要

社名 nms ホールディングス株式会社
本社所在地 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー45階
設立 1985
業種分類 サービス業
代表者名 小野 文明
従業員数 13,885名(グループ連結/2023年3月31日現在)
WEBサイト https://www.n-ms.co.jp/
事業概要 ヒューマンソリューション(HS)事業・エレクトロニクスマニュファクチャリングサービス(EMS)事業・パワーサプライ(PS)事業におけるグループ事業統括および経営管理等
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