株式会社コメ兵 国内最大級リユースショップ「コメ兵」挑戦を成長へつなげるヒント 株式会社コメ兵 代表取締役社長 石原 卓児  (2022年2月取材)

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インタビュー内容

-自社の強みと差別化のポイント-

【聞き手】

リーマン・ショックの後などは、経営的に珍しくずっと右肩で伸びていらっしゃったのが、落ち込むというのがあったと思うのですが、その状態の時はいかがでしたか?

【石原】

やはり2008年から10年ぐらいまでは厳しい時代でした。元々、新宿に出して1、2年で数字が伸びていった時というのは322億円あった売り上げが翌年には280億円になって、その次には230億円になって。すごいスピードで落ちているイメージの方が300億円ちょっとの売り上げが200億円ちょっとになってしまうと減りますから。とても苦しい時代もありましたし、それで我々がやったのはどちらかというと、大きく組織を変えて、もう一度攻めの態勢で切り込むのに、どういうチームで行くことがV字回復というか。その時はV字回復なんて思ってはいませんでした。

【聞き手】

とにかく落ちるのをなんとか止めないと、と思われた。

【石原】

止めて、なんとか、ちょっとずつ落ちてきたところから戻っていきたいなというのが本音でした。やはり、リーマンの後に起きたのは、どちらかというと総合リユースをやっていたコメ兵が、ブランドリユースに絞り込んでいったことによって単価が高くなり、お客様が絞りこまれてきたというイメージがあるので。やはりその価格帯のものをどんな時代であれ、買える人は買える、もしくは今は世の中が右肩下がりの雰囲気なので、買えるんだけど、今はやめておこうというお客様もいらっしゃった。そういう意味では苦しい中、こちらがしっかりとどういったお客様がコメ兵をご利用いただいているのかということを把握するためにも、メンバーズカードをつくるなど、プロモーションの部分、マーケティングの部分を変えていった経緯はありますね。その結果、2012年ぐらいから少しずつ伸びてきているなというイメージがありますね。

【聞き手】

それは先ほどおっしゃっていたみたいに、きちんとマーケティングをして商材を絞って、ターゲットをきちっと設定して、そこに対してアプローチをうまくかけていくことができたことが一番大きいのですか?

【石原】

そうですね。後は、当時のコメ兵は、名古屋のビジネスモデルをその他エリアでも展開しようと考えていた部分があって、あくまでも名古屋が本部になって、それが東京であろうが大阪であろうが、こちらからコントロールをする。ただツールとして、お客様のデータベースでもっているツールもなければ、東京や大阪のお客様が知らない名古屋にいる人達がコントロールしようと思っても、なかなかお客様のニーズに応えられないことがありました。

それがやはりこのままだと、お客様がいつ行ってもほしいものがないという会社になりそうだったので、そこは名古屋が本社だけれども、各店長たちが、それぞれ権限を持って、お客様に喜んでいただけることはこういうことだというのを、どんどん出してきてくれということで権限移譲というか、エンパワーメントをしっかりして、現場で考えていただいたことを上げてくる。もしくは東京の店長だった私がどうのこうのではなく、売り場としてはこういうことをやったほうが、お客様が喜んでいただけるのではないかということを企画する営業企画部というのをつくりました。

セールだからただ安いというよりも、値段も大事ですが、例えばシャネルフェアであれば、シャネルのこれがちょっと安いというよりも、シャネルがいっぱいあります、たくさん集めていますというほうが、お客様がそもそもコメ兵の値段がお値打ちだということをご理解いただいているのであれば、フックになるのではないかということも含めて、企画部門をつくってお客様に喜んでいただくことを検討していきました。それがまた他店舗のスタッフ、店長から「ちょっと違いました」だとか「これは当たっています」という意見も含めて、「これは大阪ではいいけど、東京じゃダメなんだ」、あるいはその逆もあり、色々現場の声、お客様の声を吸い上げていく形に会社が変わっていった部分があります。ですから、これらを始めて、企画の部分とお客様のデータベースと商品の売れ方と、やっとこれらがつながってきたというのが、2012年以降のところからですね。

【聞き手】

やはり東京で売れるものと名古屋で売れるもの、大阪で売れるものは違いますか?

【石原】

そうですね。明らかに違いまして、先ほどあった名古屋にある商品センターというところは、各買い取りセンターで買ったものを全部名古屋に送っていまして、そこで物の状態だとか、プライスだとか、真贋を見ていく部隊があります。これはたまたま心斎橋で買ったのだけれども、東京の方がよく売れるので、そっちに展示しようだとか、逆にこれは東京だとちょっと柄が派手でキツそうだなというものが、京都は外国人のお客様が多いので、そっちの方がよく売れるなということで物を動かしたりしています。

そこのセンターが商品だけじゃなくて、情報センターも兼ねてデータを見ながら、これはこの店舗に向いている、こういう女性のお客様がこの店舗にはたくさん来ているから、この店舗のほうがよく売れるのではないかということで、振り分けをしっかりするようになりました。前はその店で買ったものをその店で並べていただけですから、大体その商品が好きそうな人がこのエリアにはいるのですが、ちょっと離れたところから来ようと思っても、私たちがほしいものじゃないからということで、限られた店の近隣の中で商売をしていたのですが、今は多面的にお客さんを見ながら商売ができていると思います。組織を変えてそういう買い取りセンターが3年4年経って、活発に動き出したことでMDもしっかりしてきているのだと思います。

【聞き手】

本当に色々なライバルが増えてきていると思います。その中で、コメ兵が勝つために社長は今どういうことをお考えですか?

【石原】

それぞれ時間軸が違うと思うのですが、今我々がやらないといけないのは競合との差別化をつくらないといけない。もしくは競合と共同で、もっとリユースの市場を広げないといけないという2つのことがあると思っています。

やはりブックオフさんやトレジャーファクトリーさんを含めて、我々もお客様を裏切らないような接客や事業展開をしてリユースって賢いよね、いいよね、面白いよね、お値打ちだよねとお客様に感じていただいて、捨てる社会からリユースする文化を我々が創造していきたいというのは、それぞれの社長さんたちと話をする中でも、その気持ちは一緒です。

それぞれが元々本屋さんだったところ、元々が服屋さんだったところ、元々我々も家電製品をやっていたところが、ブランド品に入ってきたところがあるものですから。我々がブランドリユースというところでは、競合様と比べてもトップでいると自負している部分があるので、その差別化というのは、買い取りのバイヤーの目利き、適正な真贋を見分ける云々もありますが、適正な価格を提示できる。あとは買った後の商品を当然、次に販売するための目的で買っているわけなので、センターで、どこまでこれをきれいにして、ちゃんとコメ兵として商品を見て適正な価格だという判断をしています。

それがこの店舗にありますということちゃんと出していくことによって、お客様がコメ兵の中古ブランド品だったら安心して買えると言っていただけるような商品のクオリティーまでもっていかないといけないと思っています。商品センターに100人位の規模のスタッフは投入していて、確かにそこは大きな投資をしていますが、最終的にはお客様に喜んでいただくためです。

買った後にすぐ壊れてしまったとか、よそのほうがよっぽど綺麗で、コメ兵で買ったやつのほうが汚かったということのほうが、お客様を裏切ってしまうことになりますから。そういう意味で差別化としては、そこに注力をして、商品をたくさんいい状態に変えて、お店に売っていくというふうに変えていきたいなと思います。

他社様は、買ってそこで早く手入れして早くお店に並べるというところでキャッシュの流れを意識されている部分はあります。それがリユースの王道だと思うのですが、我々はより単価が高い物を扱っている特性があるので、満足感を高めていただくために、そこにはしっかり注力をしてやっていきたいですし、もっと業界の市場が広がってくれば、その中で「どうせブランド品を買うならコメ兵に行こうか」というような、お客様の身近な存在になっていきたいなと思いますけどね。

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経営者プロフィール

氏名 石原 卓児
役職 代表取締役社長
生年月日 1972年9月21日
出身地 愛知県
座右の銘 実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな、「One for all,All for One(一人は皆のために、皆は一人のために)」(をモットーに、「現場第一」「お客様視点」で、挑戦し続ける経営に力を注いでいる)
愛読書 「人を動かす」 デール・カーネギー(D・カーネギー)
略歴
英国暁星国際大学卒業後、MBAを取得。

1996年、大手家電量販店ヨドバシカメラにて約2年間従事したのち、1998年コメ兵に入社し、カメラ売場に配属。

その後、時計売場の責任者を経て、有楽町店店長、新宿店店長、営業企画部長、WEB事業室長などを歴任し、店舗開発、販売促進、などマーケティング業務に従事。2011年に常務取締役、2012年に代表取締役副社長、2013年に代表取締役社長(4代目)へ就任。

2020年10月1日から、ホールディングス体制への移行と同時に、コメ兵ホールディングス代表取締役社長を兼任。(2021年4月より、リユース業協会副会長も務める)

会社概要

社名 株式会社コメ兵
本社所在地 愛知県名古屋市中区大須3-25-31
設立 1947
業種分類 小売業
代表者名 石原 卓児
従業員数 連結 1087名(2023年3月)
WEBサイト https://www.komehyo.co.jp/
事業概要 中古品・新品の宝石・貴金属、時計、バッグ、衣料、きもの、カメラ、楽器などの仕入・販売
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