【ナレーター】
「魅力的な会社をつくる」ことを使命に掲げている戸上。その実現に向け、取り組んでいることとは。
【戸上】
数年前になりますが、アメリカで起きた山火事は、送電線が原因でした。そのため、今は長い送電線を区間ごとに切り離すスイッチがたくさん付けられています。弊社は後発メーカーですが、そこに参入しています。
魅力的な会社を作るのが私の使命だと思っているので、駅伝を開催するなど、例えば、陸上競技部が駅伝に出場するのも社員に良い刺激や一体感をもたらしてくれますし、そういった活気につながるような面白いものはとりあえず何でも取り入れています。
たとえば、本社屋である「戸上電機製作所本館」が2024年に、有形文化財に指定されたのですが、指定されると分かった時点で、「ここでプロジェクションマッピングをしよう」と決めました。
最初にプロジェクターを買って、その分野に強い女性がいたので、あとは彼女の背中を押すだけでした。そうすると、きちんとしたものができました。最初の映像を公開したとき、彼女は少しドキドキしていましたが、今は自信満々ですから。自信がつけば、人はこんなにも変わるんだなと感じました。完全に一皮むけていますよね。これで、会社も一皮むけたわけです。
また、「技能オリンピック」にも毎年チャレンジしています。技能オリンピックではフライス盤加工(回転する刃物で螺旋状の溝を掘る加工)の種目に挑戦しています。一般的にはNC(数値制御)でプログラミングすればできるものなのですが、実際に計測しながら人の手でつくります。これは、ものづくりに大いに役に立っているなと感じています。
【ナレーター】
2025年3月に創業100周年を迎え、つくられたスローガンが「さぁ 挑もう つくろう かえていこう」だ。その作成経緯について、戸上は次のように語る。
【戸上】
実をいうと、このスローガンは若手社員がつくったんです。堅くないし、分かりやすいし、弊社っぽい。「背中を押すだけ」にぴったり当てはまる言葉だと思っています。
苦しいときって、何をやっていいか分からない。しかし、弊社は絶えずやることが目の前にある。これは素晴らしいことだと思います。最終的には次代の若手社員がいろいろ考えるはずです。そのための下地はつくっているつもりです。
「さぁ 挑もう つくろう かえていこう」。これを若者がつくったところに意義があるということを、ぜひお伝えしたいと思います。
【ナレーター】
今後は、アメリカへの製品供給を強化していく方針だと語る戸上。思い描く展望とは。
【戸上】
リクローザという、配電線の遮断機をアメリカへ拡販しているところです。これが売れたら楽しい。佐賀からアメリカへ出張するのは、オシャレですよね。
日本製は品質に関しても、何に関しても真面目ですから、そういう点でも評価されるんじゃないかと思っています。
今まではアジアに向けて、ずっとものを納めてきたのですが、難しい面もあるんです。その理由は、はじめのうちは、アジア諸国は海外製品を使うのですが、インフラに絡むものは、できれば自国生産をしたくなるからです。そういう流れがあるので、どちらかというと、アメリカの方が拡販しやすいのかもしれません。
【ナレーター】
求める人材像について、戸上は次のように語る。
【戸上】
私は、単純に会社を好きになってくれる社員が一番いいと思います。大体の人は好きになってくれますが、中にはどうしても斜に構える人もいますよね。でも、できれば好きになってほしい。
今いる社員は好きになってくれているんじゃないですかね。あまり辞めてないというのは、そういうことだと思います。
■大事にしている言葉
大事にしているのは、「背中は押すためにある」です。誰の言葉でもない、私が言っているだけの言葉です。「精神一到何事か成らざらん」という言葉も近い意味を持つかもしれません。とにかく「背中を押してりゃ何とかなる」。そうすれば、やる気を出した社員が、会社を引っ張っていってくれるはずです。