ミス・パリ・グループ 株式会社ミス・パリ エステティック業界を変えた「ミス・パリ」創業者の軌跡と次の一手 ミス・パリ・グループ 株式会社ミス・パリ 代表 下村 朱美  (2019年10月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】

1982年、後(のち)のエステティック業界に変革をもたらした企業が誕生した。

その企業の名は「ミス・パリ・グループ」。

「心も体も美しく健やかな人づくり」を標榜し、女性専用エステティックサロン『エステティック ミス・パリ』や男性専用エステティックサロン『ダンディハウス』、日本を五感で体感できる唯一のジャパニーズSPA『WASPA』など、2019年11月時点で、国内外に約120店舗を展開。

美容師やエステティシャンなどを育成する専門学校も自社で有し、サロン従業員の有資格者の割合は9割以上。

東京大学大学院との共同研究による科学的な検証に基づいた新しい技術や商品の開発も手がけるなど、「美と健康」の総合商社として業界を牽引している。

【下村】

私は、人から「難しい」とか「無理だ」とか言われるとスイッチが入る人間なんです。

多くのお客様に、日本人の「おもてなし」や「気配り」や「本当に教育されたマッサージ」、「清潔さ」などを感じてほしいと思っています。

【ナレーター】

信念を貫き続け、業界に変革をもたらした創業社長の生い立ちと、その生き方に迫る。

【ナレーター】

鹿児島県、種子島で生まれ育った下村は自身の幼少期について、「一言で言えばやんちゃだった」と、当時のエピソードを交えながらこう振り返る。

【下村】

小学校の頃は、よく男の子たちと取っ組み合いの喧嘩をしていました。泣いている女の子から「誰々にいじめられた」と聞くと、「よし」と私が相手のところへ向かうのです。

結局、洋服もビリビリに破けて泣きながら家に帰ることになるのですが、それでも「行かなきゃ」と思うほど、正義感が非常に強い子どもでした。

【ナレーター】

高校卒業後、京都に本部を置く池坊短期大学へ進学。なぜ鹿児島から遠く離れた京都を進路先に選んだのか。

【下村】

小さい頃から祖父に京都や奈良に行った話を聞いて育った影響で、とにかく京都に行きたいと思っていました。

しかし一次希望の大学は不合格で「私はもうキャリアウーマンにはなれない」と、お茶やお花をたしなむ良い奥さんになろうと池坊短期大学へ進学しました。

後から知ったのですが、種子島と池坊は非常に深いつながりがあるのです。昔、平家の落人が種子島に移り住んだというつながりから、池坊は昔から種子島でハサミを作らせていました。

受験の面接で「種子島はもう梅が咲いていますか」と聞かれ、受験の前にちょうど家の門のところに梅の花が咲いていたのを見てきていたので、「はい、咲いております」と答えられたのです。

当時、池坊と種子島のつながりは全く知らなかったのですが、合格の一因だったかもしれませんね。

【ナレーター】

短大卒業後、英語を本格的に学ぶためにカリフォルニア大学へと短期留学し、帰国後は美容室向けの化粧品販売に従事。

勉強の一環でエステティックサロンへ通った際に、エステティシャンが施術や商品について理解して説明できていない現状を目の当たりにし、エステティシャンと顧客、双方が理論的に効果を理解できるエステティックサロンをつくることを決心。

1号店オープン前当時のエピソードに迫った。

【下村】

大阪にはエステが2-3件ほどしかない時代だったので、「エステティックサロンとは何か」を知ってもらうところからの始まりでした。

物件は見つかりましたが、どこで美容機材が購入できるかがわかりませんでした。そこで、美容商材を扱うお店にエステ機器やサウナを購入できる場所を相談したら、向かいの健康用品店にあるかもしれないと一緒に行ってくれました。

そうしたら、そのお店の人が「よくわからないので作ってしまおう」と機械を作ってくださったのです。

その後も、お金がなく支払いを手形にしてほしいと言っていたのですが、「せっかくサロンができたのに商品ケースがないのも可哀想だからプレゼントしましょう」と商品ケースをいただいたり、友人たちがお金を出しあって店のシャンデリアを買ってくれたりしてくれました。

さらには、カウンセリング室で使うテーブルを「会社で事務机が余っているから持ってくる」と言ってくれて、その灰色の事務机を見た大工さんが「これではかわいそうだ」と言って白く塗ってくれたのです。

冷蔵庫も洗濯機も棚もリサイクル店で、それぞれ1万円程で買いました。休憩室の椅子やテーブルも必要だと思い、家具店を見ていると、お店の方が「持っていっていいよ」と言ってくれました。

その方達とは今でもお付き合いがありまして、私が大阪にいる間は、新店をオープンするたびに備品はそこで購入しています。

何かを起こすというのは本当に感動的なもので、見ず知らずの方たちが全て協力してくれたんですね。そういった協力がなければ物事は成し得ませんでした。

今振り返ると、私にとってもそういう「時」だったんだろうなと思います。

【ナレーター】

その後、店舗数は順調に増え、『エステティック ミス・パリ』や『ダンディハウス』など、2019年11月時点で国内外に約120店舗を展開するミス・パリ・グループ。

その中でも、2015年に1号店をオープンした『WASPA』の立ち上げは、創業以来、最も困難な挑戦だったと下村は語る。

【下村】

あるホテルが新しく建て替えられた時に、その社長が「世界中のスパを回り、世界一と思えるスパを自分のホテルに採用した」というお話をされました。それはフランスのスパでした。

日本人というのは本当に真面目ですから、一生懸命に教育体制をつくり、今は世界でもトップレベルの教育がなされています。サロンの技術にしてもマナーにしても素晴らしいものを持っているんですね。

それにもかかわらず、外国のスパを採用されたことは非常に悔しかったですね。それから、メイドインジャパンのスパを創りたいと思い始めました。

日本のおもてなし、日本人の長寿、心の安定、それらが全て入ったスパをやっと創り上げたのが2015年くらいです。本当に大変でしたね。

そのことをハワイや香港などで講演でお話すると、『WASPA』を利用したいとわざわざ日本に来られる方達もいらっしゃいますので、これからも大切に育てていきたいと思います。

可能であれば『WASPA』を日本中のホテルのサロンなどで採り上げて、多くのお客様たちが日本人の「おもてなし」や「気配り」、「本当に教育されたマッサージ」、「清潔さ」などを『WASPA』を通じて感じていただければと思います。それが一番時間をかけたことですね。

【ナレーター】

素晴らしい日本のホスピタリティを世界に広めるべく、挑戦を結実させた下村。そして現在、さらに大きな挑戦をしている最中(さなか)だという。

【下村】

専門職大学を創る予定です。

これからは高齢化の影響も含めて時間がある方たちや、お金がある方たちが、より美しく健康に若々しく、そして豊かに生きたいと思うようになりますから、そういった人たちに十分応えられるだけの知識と技術を持ったプロフェッショナルな人材を世の中に送り出したいと考えています。

心も体も預かるわけですから、例えば介護の勉強までも身につけてもらい、仮に90歳の方がいらしてもサービスをお受けできるような人材を育てようと思っています。

私たちの業界が繁栄・発展するためにも、例えば技術もそのままにするのではなく、それを行うことによってどのような効果が出てくるのか検証をしたり、技術や商品の開発をしたり、エステティックの全てを理解した上で、それら全てができる人を育成したいのです。

そうすることで、まずは日本中が健康で美しい人達であふれ、豊かに幸せになれるのではないでしょうか。そのお手伝いができるようなビューティー&ウェルネスの学士を取得できる大学を創りたいと思っています。

【ナレーター】

女性の働く環境が整備されつつある日本社会について、下村は自身の経験を交え、次のように語る。

【下村】

日本はまだ男社会です。私も様々な省庁の会議などに出席することがありますが、女性はほぼ私一人ですね。

日本は先進国からすると遅れていますが、やっと女性たちを表舞台に出そうという風潮になってきています。海外では、女性が仕事をしているだけで非難されるような国もまだまだ多くありますから、とても恵まれていると思いますよ。

男性は男性で素晴らしいのですが、男性は闘争心のある生き物ですからやはり「戦う本能」があります。女性は「守って育てる」という本能があるのです。だから両方必要だと思います。

女性は「守り育てる」ことに長けているため、管理職には向いていると思いますね。

【ナレーター】

求める人材像について、「人間好きな人」を挙げた下村。その真意とは。

【下村】

この仕事は年数をかけて一人前になっていく仕事ですが、一度身につけたものは一生自分から離れていきません。

誰でも出来る仕事ではなく、技術を身につけた上でお客様を若々しく美しく、健康にするようなスペシャルな仕事です。そのような仕事に興味があり、世話好きな人が向いていると思います。

人生は1回限りです。今の日本は食べていこうと思えば食べていける社会なのですから、為さりたいことを為さること、したくないことはしないこと。私はそのようにしてきました。

【ナレーター】

美と健康を通じて、日本のエステティックの技術とおもてなしの心を世界へ発信し続けるべく、下村の挑戦は続く。

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経営者プロフィール

氏名 下村 朱美
役職 代表
生年月日 1957年3月20日
出身地 鹿児島県
座右の銘 美しく生きる
愛読書 社長業 牟田学著
尊敬する人物 経営合理化協会 牟田学会長
著書 ダンディハウス&ミスパリの秘密、究極のダイエットトリプルバーン痩身法
略歴
82年「やせる専門店 シェイプアップハウス(現ミス・パリ)」オープン。
86年 男性専用の「ダンディハウス」をオープン。
90年「ミスパリエステティックスクール」オープン。
05年「世界優秀女性起業家賞」受賞。
14年 一般社団法人東京ニュービジネス協議会 経済団体初の女性会長就任。

会社概要

社名 ミス・パリ・グループ 株式会社ミス・パリ
本社所在地 東京都中央区銀座5-10-2
設立 1986
業種分類 サービス業
代表者名 下村 朱美
従業員数 682名(2022年10月時点 グループ全体の数値)
WEBサイト https://www.miss-paris-group.co.jp/
事業概要 美容総合商社、 広告代理業、エステティックサロンの経営指導、 人材派遣業務、エステティックサロンの運営
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