【ナレーター】
作業服・作業用品の小売市場において国内シェアトップを誇る株式会社ワークマン。
“高品質” “低価格”を追求する同社は、作業着の強みをアウトドアやスポーツ用品に応用した商品が大ヒット。
近年では『WORKMAN Plus』や『#ワークマン女子』などの新業態の店舗を次々に展開。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けている。
2つの新業態を成功に導き、2019年に社長へ就任した経営者が語る大躍進の裏側と、次に目指すステージとは。
【ナレーター】
2021年10月末時点で、国内926店舗を展開しているワークマン。順調に拡大できている要因のひとつが「データ経営」だ。導入の経緯について、小濱は次のように語る。
【小濱】
やはりブランドを立ち上げて一般のお客様に向けて商品を売っていく、開発をしていくときに今までの経験がまったく通用しない。ではどうすればいいかというと、データを活用するしかないのです。
「社長が言うからやろうよ」ではなかなか覚えようという気持ちにもなりません。社内でデータに強い人を講師にし、研修を行い、私自身も受講者として参加しました。
私が簡単な質問をすることで、他の受講者も「何でも聞いていい」と思ってもらえますし、講師の社員も「皆さん何でも質問してください」と言いやすくなります。「それってこう思います」という、率直な意見も言いやすくなります。
データを使うことによって、社員や店長の自信がついてくるんです。
当然、経験値というものも重要ですけれど、その経験値が間違っていたというデータもはっきり出ますので、そこで考え方を変えられますし、「変えてもいいのかな?」と進むのと「これは間違いで、データに現れているから、こうやって進もう」と進むのとでは、同じ方向でも進み方が異なり、結果も全然違ってきます。
【ナレーター】
ワークマンをけん引する小濱のキャリアスタートは1990年。
「人と接する仕事がしたい」と、出身地の群馬県で当時知名度を上げていたワークマンに新卒で入社。複数の部署を経験することになるのだが、意外にも満足だと感じた仕事はなかったという。
【小濱】
「やり切った、俺はやったんだ」という気持ちよりも「ここをもっとこうしたら、より良い結果が出たかもしれない」というのを常に考えています。
今でもその気持ちではあります。その部署その部署で求められていることをしっかりやる、ということが大事。ひとつひとつをしっかりやり切りながら次に進むというのが大事だと思い仕事していました。
【ナレーター】
その後、順調にキャリアを重ね、2011年に海外商品部の部長に就任。中国進出の責任者として奔走する日々を送る。当時のエピソードと得た学びとは。
【小濱】
「当社の商品をつくってもらえませんか」という形で工場を探し回っても、まずワークマンを知らない、信用を置けない、というところからスタートするため、そこから信頼を得て取引をしてもらうというのは当時はなかなか難しかったですね。
中国に大きな展示会がありますので、必ずそこに行ってすべてのブースを見て、当社と関係している商品を取り扱っているブースを片っ端から聞いていきました。
2年後に行ってまた片っ端から聞く、というのを継続して行ったところ、見積を出していただけるようになるなど、変化が表れ始めました。
粘り強くやって、変な方向にいってしまうことはないと思います。やはり、何回も聞いたり、常に目に付くようになったりすると、向こうの人も逆に興味を持ってくれるようになり始めます。一回、二回のやり取りで気持ちを伝えるのは難しいものです。
しっかり伝えたいのであれば、相手の気持ちも考えながら、粘り強く伝えるのが重要だと思いました。
【ナレーター】
そして2017年、取締役スーパーバイズ部長に就任。小濱はかねてから既存事業だけでは成長の頭打ちを感じており、顧客層を増やすことが課題だった。
しかし、ある商品の急速な普及を機に、事態は急変。これが後の「WORKMAN Plus」の誕生につながった。
【小濱】
防水防寒レインスーツという、寒くて氷雪が降ったり、雪が解けたりしても使用できる合羽の防寒の商品があります。雪が降る日は薄暗いため、もっと明るい色の方が良いのではという意見があり、少し派手な色を付けました。
そうすると、突然その商品が売れ始めた。なぜかというと、バイクに乗る人が「冬のツーリングに最高だ」とSNSで発信してくれたり、お店に来て店長に相談してくれたり。そのようなユーザーのSNSでの発信などをきっかけに「もっとこういう商品を」という、商品の塊ができていきました。
それを、一般のお客様にもっと知っていただくために、ブランドをつけてみよう、ということで、主要の3ブランドが生まれました。しかし、依然として、売上は今まで通りでした。そのとき、見方や発信の仕方を変えていかないと一般のお客様には届かないんじゃないか、と。
それで『WORKMAN Plus』という新しい業態を、一般のお客様に行けるような主要3ブランドを中心にそろえたお店をショッピングセンターに出したというのがスタートです。