千房株式会社 お好み焼き一筋50年超!成長を続ける「千房」の人材育成術 千房株式会社 代表取締役会長 中井 政嗣  (2016年8月取材)

Vol.1 実兄から得た 独立に生きた教訓

インタビュー内容

―実兄から得た 独立に生きた教訓―

【聞き手】

それでは、本日は1代で日本を代表するお好み焼きチェーン「千房」を築き上げられました、千房株式会社代表取締役、中井政嗣社長にお話を伺っていきたいと思います。それでは、社長、よろしくお願いいたします。

【中井】

よろしくお願いします。

【聞き手】

お生まれは奈良でいらっしゃると?

【中井】

そうです。奈良県の農家の7人兄弟の。

【聞き手】

7人兄弟の5番目と伺っていますが。

【中井】

そうです。

【聞き手】

お父様の影響も非常に受けられたというふうに伺っていますが。

【中井】

そうですね。正義感の強い厳しい親父でしたね。だから、怖かったですね。

【聞き手】

どういう教育方針だったのですか。

【中井】

いろいろありますが、特に、中学を卒業して、社会人として奈良から大阪に出てきましたが、そのときに就職ですね。親父に大阪に連れてこられた。そのときに、1年間は何があっても、どんなことがあっても、家に泣いて帰ってくるなよと言われました。だから、親父は親父に励ましたつもりで言ったのでしょうけれども、私にとっては、俺にはもう帰る所があらへんのかと突き放されたという、いよいよ自立という。

【聞き手】

最初は、職の仕事というか、コックさんになりたかったのが、それは?

【中井】

ええ、そうなんですよ。中学を卒業して就職していくものですから、せめて手に職を付けておきたい。技術を身に付けたい。たまたま私の姉の婿が大きなレストランのチーフをしておったものですから、中学校の夏休みには姉から呼ばれて、そのレストランに何回か行って、海老フライやオムライスなどおいしい洋食を食べたんですね。学歴も何もないなら、せめて手に職だけでもと思って、お父さんに「コックになりたい」と言うのです。そうしたら、親父が「水商売はあかん」と言うのです。

【聞き手】

コックさんは水商売なのですか。

【中井】

ええ。「あんなの水商売、違うで」などと言うのですが、「玄関に水をまく、あんなの皆、水商売や」と言われて、そうかと。本当は違うのですが。もう1つ、私のおじさんですが中央卸売市場で大きな乾物問屋さんを経営されていたのです。その姿を親父はずっと見ておったのでしょうか。7人も子どもがおりますから、誰か1人でもあんなになってくれたらいいのになと思ったのでしょうか。その取引先である小売店に私を丁稚奉公に出させたのです。

【聞き手】

でも、まだ15歳ですから、家を離れて1人で仕事をするというのは?

【中井】

それの大きな私の出発になったのが、
(父の急逝と独立の決意)
おやじがその年の10月にがんで亡くなるんですね。胃がんでした。「チチキトク、スグカエレ」その当時は電報でした。飛んで帰るのですが、既に10分前におやじが亡くなっていた。ところが、泣けないんですね。亡くなっているのです。わずか半年実家を離れているだけだったにも関わらず、懐かしさいっぱいで、帰ってきたという、何遍も何遍も帰りたいと思ったけど、帰られなかったけど、今帰ってきたのだ。よく言われる、厳しさや苦しさがありますが、厳しさや苦しさは耐えることができます。でも、寂しさだけは耐えられなかったですね。まだ15〜16の子どもですし、仕事が終わって一人で寝るのですが、布団をかぶった途端にふるさとの田園風景が出てくるのです。おふくろが浮かんでくるのです。とたんに、家に帰りたいなと涙が出てくるのです。毎晩泣いて寝ていました。だから、そこで一層、自分で何とかしなければ。誰にも頼れない。そのときに小さな何屋さんなどは関係なくして、自分で独立せなあかん。独立するためには、お金を貯めなあかんのですね。

(兄からの教訓)
兄が偉かったのですが、私の3つ上の兄が私に、「さあ、これから自立するためにはお金をためなあかんわな。お金、ためるこつは簡単やで。収入の高いこと違う。お金は使わんかったらたまる」と言う。

【聞き手】

なるほど。

【中井】

私、思わず大笑いしました。そんなの誰でも分かってるやんかと。

【聞き手】

その通りですよね。

【中井】

ええ。

【聞き手】

でも、なかなかそれができないので、お金がたまらないという。

【中井】

そのときに、こんな話をしたんですね。ちりめんじゃこをご存じですね。ちりめんじゃこを口に入れたら、すぐ溶けるやろ。食べたらあかんねん。ちりめんじゃこをえさにして、サバを釣れ。サバを釣ったら、1日食える。食べたらあかん。サバをえさにして、マグロを釣れ。マグロを釣ったら、1か月食える。もう1回辛坊せえ。マグロをえさにして、クジラを釣れ。クジラを釣ったら、一生食える。これは比喩ですけれども、大きな私の教訓になりました。

【聞き手】

名言ですね。

【中井】

ええ。お金は使わんかったらたまる。もう1個言われました。金銭出納帳をつけろ。金銭出納帳をつけていたら、一人前の商売人になれんのだったらつけよ。5年間そこでお世話になるのですが、その5年間の金銭出納帳。実は、その金銭出納帳がこの千房千日前本店を誕生させるのに大きな手助けをしてくれるのです。


経営者プロフィール

氏名 中井 政嗣
役職 代表取締役会長
生年月日 1945年9月15日

会社概要

社名 千房株式会社
本社所在地 大阪府大阪市浪速区湊町2丁目2番45号 オンテックス難波ビル7階
設立 1973
業種分類 小売業
代表者名 中井 政嗣
従業員数 175名
WEBサイト http://www.chibo.com/
事業概要 お好み焼専門店『千房』『ぷれじでんと千房』『千房Elegance』を運営。
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