千房株式会社 お好み焼き一筋50年超！成長を続ける「千房」の人材育成術 千房株式会社 代表取締役会長 中井 政嗣　 (2016年8月取材)

―千房 誕生秘話―

【聞き手】

（千房誕生秘話）
お店をやっておられて、どんどん人も来るようになって、経営としては順風満帆の状態に？

【中井】

ええ、ぼちぼちなんとか軌道に乗っていい感じやなあという。必死になってやっていましたが。ちょうど6年目でした。家主さんから、「中井さん、お話があります」ドキッとするのです。家主さんがお店をその当時で、何か別の仕事をやりたい。そのお店の場所が要るということで、中井さん、出て行って、明け渡して。親父に助けてほしいと思ったのですが、帰ってみたら、預金が80万。どこにも相談しに行くところがない。小さな取引のあった信用組合に行くのです。「そうか。じゃあ、お店を探しなさい。手伝ってあげる」と言われたのです。

【聞き手】

でも、80万しか手元に資金がないわけですよね。

【中井】

ええ。その信用組合の理事長です。お店を手伝ってあげると言ってくれました。500万ぐらいだったら貸してくれそうな気がする。500万のお店を探すんですね。ちょうどミナミに出てきて、この1階に来たのです。そうしたら、不動産屋さんがあったのです。そこへ入ったのです。「物件を探しています。」紹介をしていただいた物件があったので、「分かりました。見せていただきます。ありがとうございました」と出ようかなと思ったときに、突然、障子がスッと開いたのです。ずっと今まで社長さんとお話をしておったんですね。

【聞き手】

不動産屋さんの。

【中井】

はい。その社長の奥さんが突然障子を開けられて、お父ちゃん、この人にうちの2階、貸してあげたらどうやの？この2階がまさにこの場所です。

【聞き手】

こちら？

【中井】

この場所です。細い階段をトントンと上がって、30坪のフロアが空いていたのです。「どれくらいするんですか」「保証、敷金、内装設備、相当貸本が3,500万です」信用組合に飛んでいったのです。「理事長、物件が見つかりました」「なんぼや」「3,500万円です」その理事長が「分かった。500万まけてもろうて来い」

【聞き手】

3,500を3,000に？

【中井】

はい。3,000は、内装設備も入れてですから、保証敷金が1,500万やったんです。それを1,000万円にまけてもろうて来い、と。内装設備は2,000万要りますから。1,000万にまけてもろうて来い。まけてもろうて来たら、融資すると言われたのです。とてもではありませんが、1,500万というのは、その1,500万そのものが私を見込んでまけてくれているのです。

【聞き手】

そもそももう安く言われている？

【中井】

もうまけてくれている。本当は2,000万以上やったんです。そのここへ来るんですね。それで、「1,500万の保証金を1,000万にしてください。500万、まけてください」そうしたら、その社長が、「いや、中井さん、分かっている。あんた、真面目に頑張ってきたから、最初からもう安くしたんね。そんな500万もまけられへん」「社長、私をどうか男にしてください」と言ったんよね。その社長が、「分かった。まけよう。その代わりに、男になってもらわんかったらあかんで」と。「もちろんです」

【聞き手】

男にならんかったら、どうなるかわかっとるんやろうな、と逆に？

【中井】

そうです。と言われて、それで信用組合へ飛んでまた戻ったのです。建築、内装設備、それも信用組合の取引先の人に全部作ってもらいましたね。その取引先に支払いするやつを、その信用組合から2,000万。3,000万でオープンするのですが、
（”千房”の由来）
その間にお店の名前はどうするの？ということで、ある人の紹介で京都に易者さんがいらっしゃる。これは私、一世一代の大博打ですから、「自分で勝手に名前を付けたらあかんで。見てもらい」と言われて、見てもらいに行くのです。そうしたら、それまでに連絡を入れていましたから、私の生年月日やいろいろ今までのことなどをお話しながら、行ったら、半紙に「千の房」と書かれたのです。実は、これには、謂われがあります。大阪城を建てられたのは豊臣秀吉さん。豊臣秀吉さんの馬印になっているのが千成りびょうたん。その千成りびょうたんが千の房になるように。それから、4年後に第1号の支店ができるのです。そのときに、もう1回訪ねていくのです。

【聞き手】

その易者さんに。

【中井】

はい。それまでに、千の房、千房。豊臣秀吉。こうやっていくうちに、ドキッとしたのです。なんと付けてもらったところが、高台寺なのです。高台寺というのは、豊臣秀吉さんの奥様、ねねさんを祀っているところです。繋がっていたんやと分かった。これが素晴らしい。