【ナレーター】
フルアウトソーシングへ事業転換を決断した湯浅だったが、再び壁が立ちはだかる。
【湯浅】
始めてすぐは、全然ダメだったんですよね。ビジネスコンセプトも、つくって提供しようとしていた商品も「すごくいい」とお客様は言ってくれるんですけれども、いかんせん、信用がないわけですよ。
ここのハードルを越えなければいけないということで、そんな中で当時のインテリジェンス社(現パーソルキャリア)が「一緒にやろう」と声をかけてくれて、一番担ってくれたのが信用なんですよね。
そういったバックアップをしてくれて、お客様がついて成長はしていったんですが、なかなか黒字にはならないわけですよ。
10万人近くの従業員の給与計算処理ができて、初めて損益分岐点を超えますので、それまでにはシステムや人、いろいろな先行投資をしていたんです。
このときに日本マクドナルド社がお客様になってくれたというのが、もう本当に事業の未来が見えるようになった大きなタイミングで。
当時から損益分岐点もはるかに超えるような数の従業員がいましたので、これをアウトソーシングベンダーが引き受けられるということが、当時はとても珍かったんです。
「あそこができるんだったら、うちもやって大丈夫だよね」というような、こういう連鎖になってきたときが、ちょうどブレイクスルーポイントだったんだと思います。
【ナレーター】
逆境を乗り越え、事業転換を成功させた湯浅は、2000年に株式会社ペイロールへと商号を変更。
2021年6月には東証マザーズへと上場を果たし、給与計算アウトソーシングのトップランナーとしての地位を確立させた。
挑戦を結実するために意識したこととは。
【湯浅】
この給与計算のアウトソーシングというビジネスも、始めた時は「絶対日本じゃ無理だ」といろいろな方に言われたんですね。
日本の給与計算は大変複雑で、企業それぞれの独自性がありますので、そういう意味でそれを外部委託するというのは日本の文化にも馴染まないし、無理だというようなことを結構言われたんです。
ただ、いろいろな観点から見て「必ずどこかで、そういう時代が来る」と思っていましたので、頑張ってやり続けたらだんだんと時代が少しずつ近づいてきたと、そう感じています。
ですから“諦めない”というのが、今までやってきたことで一番大切だったと思っています。
【ナレーター】
今後は大手企業だけでなく、中堅・中小企業にも提供できるサービスを増やしていきたいと語る湯浅。現在、挑戦している新たな取り組みとは。
【湯浅】
もともと中堅・中小企業が給与計算等の人事業務の合理化を一番求めているはずでして。
従業員数1万人、2万人の会社と何も変わらないレベルでサービス提供できるというのが、私たちが2023年3月にローンチする予定のSMBマーケット、中堅・中小企業向けの給与BPaaSなんですね。これを当社は広げようとしています。
当社がもともと追求し続けている給与計算のサービスを、日本の全企業に使ってもらえるようなものにしようというところにチャレンジしていきたいと思っています。
中堅・中小企業の多くが、1人の人事の方が、採用も教育も給与計算も担っています。こういう方がもし産休などで長期休みを余儀なくされたときに「誰が業務オペレーションをやるんだ」って、みなさんお困りになる。
ですから、普段は当社のクラウドサービスをご利用いただき、担当社員がそうなったときは、急にでもいいからうちのオペレーション部隊を使ってくださいと。
「その長期休みから復帰するまでのあいだ、当社がオペレーションをやるので全然問題はありませんよ」と、こういう使い方をしてもらいたいというのがSMBマーケット向け給与BPaaSのもう一つの大きな特徴になっています。
【ナレーター】
求める人物像について、湯浅は次のように語る。
【湯浅】
お客様から見たとき、本当にプロフェッショナルだなと思っていただける仕事をする人ですね。
単に黙々と給与計算ができるのではなくて、たとえばA社の給与計算の対応したときに「あ、この会社で取り組んでよかったな」と思うことを、別のお客様であるB社に「こういう考え方もあります」と伝えていけるような、そういうアウトプット型の人材が一緒に働きたい仲間ということで今、求めているという感じですかね。
-大切にしている言葉-
【湯浅】
私、実はバスケットがとても好きで。なぜ好きになったかというと、『スラムダンク』とう漫画を読んだからなんですね。
そのスラムダンクのなかで、主人公が所属するバスケ部の監督の安西先生が、あるメンバーに言った「諦めたらそれで試合終了だよ」というあの言葉は、常にそう思っていますね。諦めてしまったら、もうそこで終わりなのは間違いないので。