【ナレーター】
なぜ国内ではなく、アメリカNASDAQ市場を上場先として選んだのか。その理由はスピードにあると江口は言い切る。
【江口】
日本企業が日本で投資を目指す場合、少なくとも2年間は、監査法人の監査証明を得てから上場しなければいけないので、時間短縮はほぼあり得ないんですよ。
ところが、アメリカは非常に合理的な国ですから、「遡及監査」と言って2年分の監査をまとめてしてくれるんですよね。
申請を2020年10月に行い、11月に申請受託がありましたから、これはもう日本では絶対に考えられないスピード感なんですけど、自由主義陣営ってそういうことなんですよ。
非常に短時間での上場が可能で、資金調達もできるということなんですよね。これを21年ぶりに示すことができたので、今「NASDAQに上場したい」という日本企業も結構増えまして。
それから、これまで入社してこなかったような非常にハイレベルな人材にも入社いただけるようになりましたし、ステージアップしたなと思いますね。
【ナレーター】
苦難を乗り越えた江口が、挑戦を成功させるために意識していることがある。
【江口】
「社会課題の解決」に物事の基準を置いています。その中で選んでいくのは「これをやることによって、どういう人たちを救うことができるのか」や「社会課題の何が解決するのか」。
そのようなことを念頭に置いてチャレンジをするようにしています。「社会問題を解決するぞ」となったほうがモチベーションも上がりますしね。
【ナレーター】
業界のさらなる発展に向けた社会貢献活動も行っていると語る江口。その中でも、大きな影響を与えたという2つのこととは。
【江口】
「一般社団法人リラクゼーション業協会」を、店舗数で2400店舗弱、セラピスト合計約3万人が所属する業界団体を力を合わせてつくりまして。
そこで陳情をしていったり、業界規定をつくったり、安全安心の事故ゼロ活動という啓蒙活動をやり続けまして。総務省からもリラクゼーション業、またはリラクゼーションセラピストという職業分類や産業分類が新設されたんですよね。
これによって、働く皆さんが自分の職業欄に堂々と「リラクゼーションセラピスト」「リラクゼーション業」と書けるようになりました。
もうひとつは、映画の力を使ってセラピストの魅力を伝えました。
海上保安庁は不人気の職種だったんですけど、『海猿(うみざる)』が大ヒットしてからすごく人が集まったんですね。「エンターテインメントと仕事の関係性はあるな」と思いまして。『癒しのこころみ〜自分を好きになる方法〜』という映画を、皆でお金を出し合って配給しました。
「この映画を観て感動して、この職業を選びました」という学生が現れ始めまして。狙い通りです。
【ナレーター】
現在、バイタルトラッカーのデバイス開発などITの領域にも進出しているメディロム。江口が思い描く成長戦略とは。
【江口】
コロナをきっかけに、自分の体調を可視化しようというニーズが非常に高まったんですね。非常に大きなマーケットに広がってきています。
しかし、この市場の中では日本製の製品がないんですよね。中国製か米国製にこのマーケットを握られてしまっていて。そこに3カ国目としてMade in Japanで割って入ろうと思っています。
しかも当社の製品は永久に充電不要という、これまでのトラッカーで成し得なかった新しい特徴を持っていますので、これで市場に参入し、世界で戦っていきたい。これが次の成長戦略になっていくかと思います。
【ナレーター】
明るく元気で素直な人材を求めていると語る江口。その真意について次のように語る。
【江口】
明るく、元気で、素直なメンバーであれば伸び代がとてもあるんですよね。
セラピストしかいなかった会社がある日、突然、無充電のトラッカーをつくることができていますので、「社会問題を解決するために、こういうものをつくるぞ」と想いをもって決めれば、知識などは全て補完されるんですよね。
実は人間の素養で大事なことは、やはり素直で、明るくて元気であること。非常にシンプルな個性を持っている方々が、新しい世界をつくっていくのではないかと思っています。
-大事にしている言葉-
【江口】
「知行合一(ちこうごういつ)」ですかね。「知る」と「行う」が合わさってひとつであるという、陽明学の言葉です。
世の中には、知っているだけで行動を起こさない。想いと行動がずれてしまって、全然、前に進まないという方々がたくさんいます。
知っていることや想いというのは、行動をぶつけてこそ、合わさってひとつですから、知ってるだけだと半分だということなんですよね。半人前です。
ですから、自分は一人前になるために、想いに行動をぶつけに行く、ということを常に心がけてます。「実行あるのみ」ということですね。
「やったことないから、やらない」のではなくて、やったことがないからこそ、チャレンジする価値があるのではないかなと思います。