【ナレーター】
日本にまだ「冷房」がなかった頃から100年以上にわたり、空調設備事業を軸に成長を続けてきた東証プライム上場企業、高砂熱学工業株式会社。
東京駅、六本木ヒルズ、日本武道館など、数多くの施設の空調設備の設計・施工・保守管理を手掛けてきた、業界のトップランナー企業である。
近年では、カーボンニュートラル事業の推進や宇宙ビジネスへの参画など、その領域を拡大させており、「空気調和」のパイオニアとして培ってきた知見や技術力を基に、同社がビジョンに掲げる環境クリエイター®としての歩みを着実に進めている。
【ナレーター】
経営者の軌跡と、飽くなきチャレンジ精神の原点に迫る。自社の強みについて、小島は、創立から100年以上にわたって顧客の声に応え続けてきたことにあると言い切る。
【小島】
「お客様と共につくってきた」とよく言います。お客様の「こんなことをしたい」という要望に対して、私たちのエンジニアは、それに応えるためにいろいろなことにチャレンジしてきました。
当社には研究所も40年以上前からあります。でも、研究に対して経営はノータッチ。何でも「いいよ」ということで、以前はきのこ栽培、海苔養殖などをしていたこともありました。
それから、高砂熱学工業という社名にもなっていますが「熱」がベースにあります。熱を一番貯められるのは水素なので、その製造にも着手しています。水電解装置も開発中です。加えて、世界で初めて「月で水素をつくろう」という下町プロジェクトも行っています。
社会のニーズに対してお客様と共に考えて技術をつくり、提供していくこと。それをこれまでの100年で積み重ねてきました。お客様に期待以上の価値を提供することは、私たちの強みだと思っています。
【ナレーター】
小島の原点は幼少期にある。美しい自然に囲まれた場で生まれ育ち、環境へ関心を持つようになったという。
大学卒業後もその思いは変わらず、1984年に高砂熱学工業の門を叩いた。キャリアを積み重ねる中で小島は、顧客からのある言葉を聞き、衝撃を受けた。
【小島】
ある大学で、建物全体を予定時間に運転し最適な空調もできる「中央監視板」をプレゼンする機会がありました。
私は、この中央監視板を入れることが、大学のエネルギー削減につながると思い、経営者と話をしました。すると、経営者は「中央監視板を入れると学生は増えるんですか」と。
それが、すごく印象に残りました。なぜかというと、当社はプロダクトアウトの考えで、自分たちがいい技術をつくって提供すること。それだけに一生懸命で、マーケットインの発想ではなかったからです。
それ以降も、発電機で電気を起こして、その排熱で空調する「コージェネレーションシステム」が注目されたとき、その大学で、エネルギー業界の有名なトップ企業と当社の2社がプレゼンをする機会がありました。
トップ企業のプレゼンは、聞いていてもすごいという印象。「これは(当社は)ダメだな」と思っていたら、経営者が一言、言いました。
「大学も少子高齢化を迎える。今後、私たちが求めるのはハイヤーじゃなく、タクシーだ」と。技術さえよければ社会に貢献できるというのではなく、マーケットを知らないと意味がない。
その考え方こそ経営者として必要なことだと知る、いい経験をさせていただきました。
【ナレーター】
その後、横浜支店長、大阪支店長、経営戦略本部長などを経て、2020年に代表取締役社長に就任した小島は、行動指針「Takasago Way」の作成に着手。その中で生まれた3つのキーワードと、その真意に迫った。
【小島】
「Takasago Way」を作成するために、200人近い社員にインタビューを実施しました。その過程で、いろいろな言葉やセンテンスが出てきます。その中で当社らしいものを集めました。
まず、Beyond(ビヨンド)「期待以上の価値を提供する」ということ。次はPride(プライド)「正々堂々でやり抜く」こと。最後はTrust(トラスト)。これが面白くて「人との縁が財産」ということです。
仕様書通りにするだけなら、それは高砂熱学工業とは言えません。仕様書を越えた、次の技術をお客様と共につくっていこうという解釈です。
もう1点。地球環境に貢献するのがベンチャー企業である当社の役割だと思います。そこで、2020年に「環境クリエイター®」という造語で登録商標をとりました。
社長になったときに「高砂熱学工業のDNAはこれから先、同じ方向性で良いのだろうか」「建物空調だけではなく、地球環境に資する技術を提供できる会社になれるだろうか」と考えて、社内の各研究者と面談したのです。
「何をやっているの」と聞くと、みんな、とても高度なことをやっています。その意味で、社員全員が環境クリエイター®と言えるのではないかと思っています。