【ナレーター】
ファミリーレストランを中心に洋食、中華、和食、イタリアン、カフェなど、多彩な業態を運営する「株式会社すかいらーくホールディングス」。
『ガスト』『バーミヤン』『しゃぶ葉』『ジョナサン』『夢庵』など、現在、国内外に約3000店舗、20以上のブランドを展開し、日本におけるファミリーレストランの先駆けとして、その地位を確立させた。
近年では、セルフレジやアプリでの会計といったDX、工場や店舗への太陽光発電の導入によるCO2排出量の削減、持続可能な調達など、ESG経営を積極的に推進しており、業界のリーディングカンパニーとして、その存在感を際立たせている。
時代の変化に対応し、日常の食の豊かさを追求する歩みを進める経営者の軌跡と、思い描く未来像とは。
【ナレーター】
自社の強みについて、金谷は食材調達から店舗調理までの一貫体制を挙げる。
【金谷】
購入した食材を工場で加工してから店舗に運び、調理してお客様に食べていただくという全ての工程を自社で行っていることが当社の強みです。
全国に10ヶ所ある工場の中には検査室と呼ばれる施設を設け、食材の定期的な抜き取り検査を行って品質をしっかりと担保しています。
これだけトレーサビリティが高い外食チェーン企業は、日本ではほぼ当社だけではないかと自負しています。
また、このような体制のもとだからこそ、商品を非常にリーズナブルな価格で提供できるという強みも生まれるのではないでしょうか。
我が社はさまざまなブランドを持っていますが、自社工場のラインや設計を自在に変えられる点は、多ブランド展開に向いているんです。
そして、いろいろなブランドがあるからこそ、お客様の多様なニーズに迅速に対応できるのだと思います。
【ナレーター】
金谷のキャリアスタートは大手証券会社だった。約27年、金融畑でキャリアを重ねた後、2008年に財務と管理部門の立て直しを図るため、MBOを実行した株式会社すかいらーくに出向、専務取締役に就任した。
入社時に「新鮮に感じた」あることとは。
【金谷】
金融機関の業務というものは、当然お客様と接してはいるものの、実態の経済とはなかなか密接に連携しておらず、ひとつの仕事のスパンも長いのです。
一方、すかいらーくでは、たとえば新しい商品をつくったり、テレビコマーシャルを放映したりすると、その結果がもう翌日から出ます。
また、たとえば雨が降れば「これだと売り上げが5%くらい下がるかな?」というように日々の成果がすぐにわかる、良いか悪いかの結果がすぐ出るということが非常に新鮮でした。
入社当初に感じた「消費者に直結している実業だな」という非常に強い印象は今も残っています。「このビジネスは面白いな」と思いましたね。
【ナレーター】
証券会社時代に培ったデータ分析力を駆使し、着実に財務改革を行った金谷は、2023年3月、すかいらーくの代表取締役社長に就任した。どのような会社を目指したのか。
【金谷】
社長を引き受けるからには「店舗の従業員の方々が元気で、生き生きと働けるような会社にしていきたい」という思いがありました。
というのも、私が店舗を訪ねた時に、お客様が楽しそうにしている店舗というものは、例外なく従業員の方が生き生きと働いているといるのです。
また、「このお店、雰囲気が明るくなったな。どうしたんだろう?」と思うと、マネージャーが活気のある方に変わっていたということもあります。
そのような店舗の雰囲気の明るさは、お客様が楽しんだり、喜んだりしていただけることにつながり、結果として売り上げにもつながってくるのだろうと思っています。
そのため、できるだけ早くそのような会社にしていきたいと考えているところです。
【ナレーター】
企業成長のためにさまざまな挑戦をしてきた金谷が、成功させるために意識していることとは。
【金谷】
何事もポジティブに捉えるようにしています。ネガティブに考えてしまうと、できることもできなくなってしまうと思っているんです。
たとえば、弱点だと思われるようなことでも「いや、これはむしろポテンシャルだ」「ここから改善していけばうまくいく」というようなポジティブな考え方で、いろいろなことにチャレンジしていくということですね。
とはいっても、そのような新しいチャレンジを、3000店ある全ての店で行う必要はありません。特定の店舗で実験をし、その結果を横展開していくということを絶えず行っています。
たとえば、「ガスト」では、いきなりメニューを改訂するのではなく、“先駆け店”という店舗でトライアルを行い、それが店舗の実際のオペレーションにしっかり乗るかどうか、どのぐらいの売り上げが見込めるかというようなトライアルをしているんです。
このような日々の積み重ねが大きな成果へとつながっていくのではないでしょうか。
【ナレーター】
外食産業において、人手不足が大きな課題となる一方で、すかいらーくホールディングスではいち早く対応を進めてきた。そのキーワードとして金谷が挙げたのがDXだ。
【金谷】
我が社は既にコロナ前から、DXには非常に積極的に取り組んできました。
たとえば、テーブルオーダー端末をいち早く導入したり、テーブル決済を実現したり、配膳ロボットを取り入れたりということを行ってきたわけです。
これは人手不足に対応するためだけでなく、お客様の利便性を上げるための取り組みでもあります。
配膳ロボットはお子様に人気が高く、集客効果もあります。さらに、そういったDXへの取り組みによって企業イメージが大きく向上し、当社の採用面での好調にもつながっているようです。
具体的には、昨年は150人を採用することができ、今年は200人を採用予定です。正社員の採用が計画どおりできている外食企業が少ない中で、DXの取り組みが求職者・応募者の皆さんに評価されていることが成功の理由だろうと考えています。