フードサービスに革新をもたらす、最新テクノロジーと食を融合させた「フードテック」。アメリカの投資会社によれば、2017年のフードテック市場への投資額は100億ドル(約1兆1 ,000億円)を超え、今後の市場規模は世界で700兆円に上ると言われています。

一方で、2050年までに予測される食糧危機や食品ロスは、地球規模の社会課題となっており、これらを解決すると言われているフードテックには世界中から大きな期待が寄せられています。

今回、フードテックの5つの事業領域について、国内外問わず、それぞれの領域における企業の動向や取り組みについて紹介していきます。

※本ページ内の情報は2019年12月時点のものです。

【目次】
1.食品領域
2.流通領域
3.外食・中食領域
4.調理技術領域
5.農業生産領域
まとめ

1.食品領域

「食品領域」とは、食品そのものにIT技術を用いて健康と安全に配慮した良質な食材を生み出す分野です。

人間が1日に必要な栄養素が1日3食で摂取できる“完全栄養食”や、大豆やエンドウ豆など植物を加工した“人工肉”いった代替ミートの開発・提供などが代表的です。

完全栄養食の火付け役となったのが、“パスタ”です。

日本では、フードテックベンチャーの株式会社ベースフードが開発した『BASE PASTA』(※2019年7月1日「BASE NOODLE」に改名)が、2017年、Amazonの食品カテゴリー人気度ランキングの首位を獲得して食品業界に衝撃を与えました。

また、日本を代表する食品メーカーである日清食品も2019年3月に完全栄養食品市場に参入。完全栄養食の新ブランド「All_in PASTA」を発売し、多くのメディアから注目を集めております。

『社長名鑑』でもこの食品領域における完全栄養食に着目し、2018年に株式会社ベースフードの橋本舜社長にインタビューを実施。『BASE PASTA』誕生の裏側や、当時描いていた展望などについて迫る内容となっております。詳細は下記をご覧ください。

ベースフード株式会社 社長インタビュー記事

“完全栄養パスタ”でAmazon食品ランキング首位を獲得。世界に挑むフードテックベンチャーの正体とは

ベースフード株式会社 代表取締役社長 橋本 舜

人工肉においては、近年、動物の細胞を培養して肉を生産する“培養肉”の研究開発が進められています。

細胞培養のスタートアップであるインテグリカルチャー株式会社は、2019年8月に世界初となる「食べられる培養フォアグラ」の生産に成功。

同年、食品会社大手の日本ハム株式会社と動物細胞の大量培養を共同で行うことを発表し、実店舗への提供に向けて開発基盤を固めています。

2.流通領域

「流通領域」とは、主に小売販売店や飲食店などへの食品流通に関わる分野です。最新テクノロジーを駆使し、食品鮮度を保ちながら、生産性を向上させるサービスを提供しています。

特殊冷凍技術を有するフードテックのスタートアップであるデイブレイク株式会社は、規格外となった国産ブランドの果物を無添加・特殊冷凍しオフィスに届けるサービス『HenoHeno(ヘノヘノ)』を展開しています。

2019年12月時点で100社以上に導入されており、一部地域では一般販売も開始。年間100万トンと言われている果物のロス(破棄)を解決する一躍を担うサービスとして注目を集めています。

特殊冷凍の技術が今後さらに発展すれば、果物以外の食品ロスの問題にも私たち消費者が「食べること」で貢献できるようになるかもしれませんね。

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